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「生徒会の活動はどうか、って?」


屋上で、弁当を食べながら陽向は言った。


ちなみに、今日は週に2回ある陽向に弁当を作ってくる日なので、今陽向が食べているのは私が作ってきた弁当だ。


「そうだなー。忙しい時もあるけど、結構充実してるかな」

「そうなんだ。他の生徒会メンバーたちとは仲良くやってるの?」

「まあ、俺はそれなりに仲良くやれてるとは思うけど、」


そこで一旦言葉を止め、陽向は少し困ったような顔をすると続きを話し始めた。


「会長……雨宮ってさ、『王子』って言われてるだけあってモテるだろ?どうも書記の子が雨宮のこと狙ってるっぽくてさ」

「……へぇ、それは確かに大変だね」

「事あるごとに雨宮にアピールしてるんだよねー。それでたまに業務に支障が出そうな時があるから、見ててヒヤヒヤするんだよな」

「うわぁ……」


容易に想像がつく。

書記の子がどんな性格かは知らないが、以前チラッと見たときはなかなか可愛らしい容姿をしていたような気がする。

書記という立場を利用して、雨宮くんにより近づくよう画策してそうだ。


「雨宮くんは、その書記の子に何か注意とかはしてないの?」

「そりゃもちろん。『ごめんね、集中できなくなるから。』ってよくあしらってる。でも、そこまできつい言い方じゃないからか、書記の子もめげずに何度もアタックしてる」

「そっかぁ……」


やはり、雨宮くんは注意を促すときも穏やかというか、やんわりいなしている感じのようだ。

それをきいて少し安心した。


「でも、不思議だよな。あんだけモテるならとっくに彼女いてもおかしくないのに」

「……そう言われてみれば、確かに」


陽向の言う通り、雨宮くんはかなりモテてはいるが彼自身の浮ついた話は聞いたことがない。

特定の女子と2人で仲睦まじく登下校していた、なんて目撃情報は一切ないのだ。


「何組の誰々ちゃんが告白したけどダメだったらしいよ」とか、「美人で有名なあの先輩ですら振られた」といった話はよく耳にするのだが。

一体どれだけの女子が玉砕しているのだろうか……考えただけでも恐ろしい。


まあ、私には関係のない話だ。

別の話題に切り替えよう。


「他に、生徒会で気になることはある?」

「他か、うーん……あっ、そうだ。また雨宮のことなんだが」

「何?」

「さっき書記の子の話はしただろ?書記の子には優しめに注意してるって言ったけど、その子がその場にいなくなった途端、少し目つきが変わったような気がしたんだよな……まあそれも一瞬で、すぐにいつも通りに戻ったけどよ」


サッと血の気が引いたのを感じた。

陽向にバレないように、なんとか平静を装う。


「そ、そうなんだ。……気のせいじゃないの?」

「俺も最初はそう思ったよ。でも、何度か同じような光景を見たんだ。……雨宮に一度、『どうした?』って聞いてみたんだが、『なんでもない』の一点張りで」

「……」


……私だけでなく、陽向まで()()ということは、ほぼ確定だろう。


雨宮くんは、何かを隠してる。


「……そういえば、雨宮ってあんまり自分の話しないよな」

「え?」


私の仮説を立証するかのように、陽向が呟く。


「雨宮は人の話を聞くのがうまいからさ。話してるとついついこっちはいろんなこと言っちゃうんだけど、雨宮に話を振るとうまい具合にはぐらかされるというか」

「……」


私は人と会話をするのがあまり得意ではない方だ。

目のこともあって、なるべく人を避けてきたのもある。


なので、雨宮くんともペアワーク以外は基本的に必要最低限の会話に留めている。これといった心当たりはない。……はずなのだが。


ーー……うん、そうだけど。それがどうかした?


今朝の雨宮くんの様子を思い出す。


今思えば、あれは『拒絶』だったのかもしれない。

あるいは、これ以上自分に踏み込むなという『警告』か。


どちらにせよ、雨宮くんはただの優しい『王子』ではない。ということが明白になってしまった。


「……夏芽?」


陽向に呼ばれてハッとする。


「雨宮の話題になってから様子おかしいぞ。……大丈夫か?」

「……大丈夫。いろいろ話聞かせてくれてありがとう」

「……そっか。なんか悩んでるようなら、いつでも話聞くからな」

「うん、ありがとう。……助かる」


とは言ったものの、これ以上陽向に迷惑をかけるわけにはいかない。

このことは、心の中に留めておくことにしよう。


「……じゃあ、弁当食べ終わったし、私先行くね」


ボロが出ないうちにさっさと屋上を離れようと私は立ち上がり、早歩きでその場を後にする。


「夏芽!」


と、急に後ろから大声で陽向に呼ばれた。

振り向くと、


「今日も弁当美味かった!またよろしくな!」


そう言って笑う陽向は、まるで明るく照らす太陽のようだった。

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