第9話◇パーク内ネットワークだと?
鍛冶屋を出た俺たちはまっすぐギルドへ向かった。
ギルドのドアを開けると、ウサ耳受付嬢が走り寄ってきて、
「カイ様、お待ちしておりました。
鍛錬場でプロジェクトマネージャーがお待ちしております。」
プロジェクトマネージャー?
ああ、社長のことか。
早速、鍛錬場へ向かう。
既にVRエリアでは社長が見ている中、テスト戦闘が行われていた。
剣士が「斬撃!」と叫んで剣を振ると、魔物の身体がスパッと切れ、色のついていない飛沫や何かが砕けたような欠片みたいなものが切り口から飛び散った。
「おー!ああいう演出にしたんだ。
いいじゃないか。
今のがスキルかい?」
と社長に問いかけると、
「はい。今のは斬撃レベル1のスキルです。
通常攻撃では、本来の剣筋通りに超電磁流が発生して敵を攻撃しますので当たり外れがありますが、斬撃と叫ぶとスキルが発動し、本来の剣筋が雑であっても超電磁流は敵に必ず当たります。
レベル1の場合、通常攻撃で当たった場合はダメージ1を与えますが、スキルレベル1攻撃ではその倍のダメージ2を与えます。
ただし、スキルレベル1を使用するとHPが1減少します。」
「なるほど。乱発はできない仕組みか。」
「おっしゃる通りでございます。」
「今、超電磁流と言ったけど、それは剣に仕込んであるマイクロコイルから発生するのかい?」
「さすが伊勢様!もう見抜かれておいででしたか!」
「いや、鍛冶屋に聞いたんだよ。
で、そのマイクロコイルって、ギルドカードとリンクできる?」
「可能ですが、それはまた何故に?」
「刃引きしてあるとはいえ、金属の物体で生身の人間を物理的に攻撃したら、大怪我すると思わないか?」
「それは確かに。」
「そんな危険なものを持った冒険者が街の中を歩いているんだ。
もし、何かいざこざが起きたら大変だろ?
いざこざではなくても何かの拍子にぶつけてしまうことだってあるかもしれない。
それはテーマパークとしては何としても防ぎたい。
もし事故が起こって、パーク側が何の対策も取っていなかったとしたら、営業停止はもちろん、重大な責任問題となるだろう。」
「営業停止?
それでは我々が力を発揮できなくなります。
それは困りますなぁ。」
「心配するのはそこかよ!
だからギルドカードを持ってる人間に対して物理的に攻撃しても、超電磁流とやらで、シールドを張って弾き返せるようにできないかと思ってさ。」
「なるほど。お考えは分かりました。
まず、武器とギルドカードのリンクは可能です。
実はこのギルドの地下深くに巨大なストレージを持ったサーバーとコントロールセンターがございまして、パーク内ネットワークを構築しております。
ですので、全てのギルドカードは把握することができますし、同様にマイクロコイルもこちらで把握しておりますので、リンクすることはアップデートにより可能です。」
「いつの間にそんなものを構築したんだか。
ともかくリンクが可能なことは分かった。
なら、シールドを張ることはできるのか?」
「問題はそこでございます。
刀身がコイルから発生する超電磁流の媒体となっておりますが、なにぶん鉄ですので伝導効率が悪く、シールドを張れたとしても、弾き返せるほどの強度を出せるかが難しいですな。」
「ああ、それなら」
と、鍛冶屋に銅線入りの剣を作らせていることを話した。
「な、な、なんと!そこまで見通して既に手を打たれていたとは!」
いや、たまたまなんだが。
「その剣でしたら、弾き返せるようなシールドを張ることも可能でしょう!
それだけでなく、攻撃、特に魔法の再現にも大きな力になりましょう!
なんと素晴らしい発想。
これぞ賢者の叡智というものでしょうか!」
「おい。勝手に称号増やすな。
嫌な予感しかしない。」
「ご心配なさらず。
加護もございますし。」
「加護?」
すると社長は得意げに、
「ステータスをご覧ください。」
と言うので、ステータス画面を開くと、下のほうに「称号」とあり、「創造主」「統括者」「勇者」「賢者」と並んでいた。
「おい!この称号ってなんだよ!」
すると社長はさらに得意げに、
「見た目は単なる称号ですが、経験値やVR戦闘時の各種威力といった隠し設定にちょっとしたバフがかかっております。」
「チートじゃん!」
「いえ、そんな大げさなものではございませんよ。」
「いつの間にこんなことしたんだよ!」
「ははは。暇人の手慰みでございますよ。
どうかお気になさらず。」
「ははは。じゃねーよ!気にするよ!
大体、お前のどこが暇人なんだよ!
とにかくステータス画面にこんなのあったら人に見せられないだろ。
消してくれよ。」
社長は不満顔で、
「仕方ありませんなぁ。では隠蔽しますか。」
「隠蔽?」
「ステータス画面の称号の部分を隠蔽と言って指でなぞってみてください。」
言われた通り、「隠蔽」と言って指でなぞると称号が消えていった。
「これで完了でございます。
表面上は消えましたが、いつでも再表示は可能です。」
「いやいやいや、これ悪用されたら大変だぞ。
隠蔽は公開するなよ。」
「もちろんでございます。
ところで、ご要望はシールドだけでよろしいのですかな?」
何だかうまくごまかされたような気もするが、
「そうそう、武器はすべて登録制にしてくれ。
そうすれば、盗難や悪用があってもすぐに特定できるだろ?」
「素晴らしい!まさに神のごとき」
「いや、もうそれ以上言うな。
それよりコントロールセンターを見てみたいな。」
「もちろんでございます。こちらへどうぞ。」
と、あるドアを開けると、そこはエレベーターになっており、それに乗ってしばらくしてドアが開いた。
そこはかなりの広さがあり、PC関連機器と思しきものが所狭しと並んでおり、中央には大きなスクリーンが設置されていた。
スクリーンはこのパーク全体の地図となっており、その中でいくつかの点が表示されて動いていた。
「あの動いている点がギルドカードを持った人間です。
もちろん、ギルドカードの詳細情報も確認できます。
後ほど武器とのリンクを行うことにします。」
スクリーン前に操作コンソールがあり、そこに1人の男が座っていた。
「あの人は?」
「あの男がシステムマネージャーです。
このシステム全般の管理を任せています。
昔からの仲間なのですが、なにぶん技術バカでして、挨拶もろくにできずご容赦いただければと。」
お前が言うな。
「1人でやってる訳じゃないんだろ?」
「ええ、彼はほとんどここに住んでいるようなものですが、他にも数人のエンジニアが交代制で24時間管理しております。」
「あ、そろそろ帰らなきゃ。」
「残念ですな。
また来週来ていただけるのでしょう?」
「そのつもりだ。
あ、言うの忘れるところだった。
別に急がないんだけど、時間がある時でいいから、平民街にいくつか銭湯を作ることを計画してくれないかな。
宿屋に泊まってみて現代人には不可欠だと思ったんだ。
ここはテーマパークなんだし。
ただ、異世界の雰囲気は壊さないようにしてくれよ。」
念を押さないと壁に富士山の絵とか描きかねないからな。
「銭湯ですか。それは面白そうですな。」
「あと、俺、今回泊まった宿屋が気に入ったから、あそこ常宿にしたいんで押さえといてくれる?」
「ほう。伊勢様専用ということですね。」
「違うって!俺がここに来た時にあの部屋に泊まりたいだけ。
あんまり変なことするなよ。」
「了解しました。」
「じゃ、また来週来るから。」
「お待ちしております。」
伊勢が帰ると、どこにいたのか、わらわらと技術者集団が集まってきた。
「聞いたな。」
「ああ、聞いた。」
「最後の伊勢様の発言には2つのポイントがあった。
まず銭湯だ。
別に急がないとわざわざ言われたのは、じっくり探せということだ。
わかるな!」
「おう!」
「よし、1班、チームを組んで源泉探査にあたれ!」
「了解!」
「次に宿屋だ。
あんまり変なことをするなということは、現状維持は望んでおられないと私はみた!」
「その通り!」
「2班!至急宿屋へ視察へ向かえ!」
「了解!」




