第10話◇伝導剣だと?
次の土曜日、俺は早めにパークへ向かった。
パークの門のところには既にフェンが来ていた。
「あれ?フェン、迎えに来てくれたの?」
「バカを言うな。そんな訳あるまい。
お主がここに近づいてきてるのは分かっておったし、社長とやらの伝言もあったのでな。
やむなく足を運んだのだ。」
それを「迎えに来た」って言うんだよ。
しかも尻尾ブンブン振ってるし。
「そっか。じゃあ行こうか。」
と一緒にギルドへ向かった。
ギルドに着くとウサ耳受付嬢に、
「鍛錬場でお待ちですよ。」
と声を掛けられ、そのまま鍛錬場へ。
鍛錬場では社長が満面の笑みで待ち構えていた。
そして俺の前でおもむろに片膝をつき、両手で剣を差し出した。
「伊勢様ご提案の剣をここに献上致します。」
いや、普通に渡せんのか、こいつは。
「おー!できたのか!」
社長の行動を軽くスルーして剣を手に取る。
「シールド機能を試してみませんか?」
「ああ、やってみたいな。」
「では、その剣で私をお切りください。」
お切りくださいって言われても、一般人の俺にとって人を切るなんて、抵抗があり躊躇していたが、
「さあ、さあ、どうされました?」
とニヤニヤしながら俺を見上げてくる社長を見た時、俺の中で何かが切れ、無意識で思いきり社長の頭に剣を振り下ろしていた。
社長に当たると思った瞬間、「バチーン!」と何かの壁にぶつかったように弾き返された。
キックバックがかなり強烈で手が痺れるほどだ。やわな剣なら折れてしまうかもしれない。
「今のがシールドでございます。
いかがでしたか?」
「すごいものだな。それに反発力もかなり強烈だったよ。」
「お褒めにあずかり恐縮です。
伊勢様も今のひと振りで、人の殻を破り捨て、また一段高みに登られたのではないですかな?」
やめろ、俺は人のままでいたいんだ。
「ただ、やっぱり重いな。小剣でこれだろ?
俺も普通の長さの剣を持ちたいけど、まともに振れる自信はないな。
ダンベルを振り回してるようなものだからな。客の中には大剣や、槍、ハンマー、大盾なんかを使いたいものがいるだろうが、この重さのままでは一般人には到底扱えないだろう。」
「確かに言ってみれば鉄の塊ですからなぁ。
ただ、銅ですと強度が弱い上に鉄より重いですし、伝導効率が比較的高いアルミニウムなら軽いですが、強度面で弱すぎます。」
「ならアルミニウムを芯材として、周りを薄い鉄で囲うのはどうだ。」
「鉄とアルミニウムの間の隙間をなくすのが難しいですなぁ。
かといって密着させるために溶けた鉄を塗布するような方法ですと、アルミニウムの融点がかなり低いため、アルミニウムまで溶けてしまいます。」
「薄い鉄で刀身の殻を鋳造、もしくはダイカストで作ってから、溶けたアルミニウムを入れればいいんじゃないか?」
すると社長は手をポンと叩き、
「なるほど。ダイカストでの製造にはかなりの技術力が必要ですが、我々の知識、技術と、あの鍛冶屋の手腕があれば可能かもしれません。
溶かしたアルミニウムも高圧で注入すれば密着度も高まります。
いや、何と素晴らしい発想でしょう!ヘファイストスが降臨したとしか思えません!」
「あ、バカ、余計なこと言うな!」
慌ててステータス画面を開くと、「ヘファイストスの加護」の文字が。
「ほらー、やっぱり!隠蔽!」
と指で消しておく。
「そもそも何でお前が言うだけで称号だの加護だのが増えるんだよ。」
「それは私がこのシステムへのすべてのアクセス権限を持っているからでしょうな。」
「お前がすべてのアクセス権限を持っているのは当然としても、単に言うだけじゃなく、そのつもりで言わなきゃ書き加えることはできないんだろ?」
「当然でございます。ただ言うだけで書き加えられるようなら問題ですからね。」
「じゃあ、俺に言ってるのはそのつもりで言ってるってこと?」
「もちろんでございます。」
「それが問題なんだよ!
第一、いちいち隠蔽するのも面倒だ。」
「では、最初から隠蔽して付与しましょうか?」
「いや、それ危ないから、絶対やめろ。」
「分かりました。最初から隠蔽は致しません。」
「よかった…いや、いや、そもそも付与するなよ!」
「ま、そんな些末なことはともかく、新武器は鍛冶屋に発注しておきます。
あ、これらの剣にお名前をいただけますか?」
また、はぐらかしやがった。
「伝導剣でいいんじゃない?」
「素晴らしい!では旧伝導剣で魔法を試してみませんか?」
「そういや、魔法の再現にも力になるって言ってたな。」
「はい。これまでの剣では、土魔法の再現がうまくできなかったのです。
火、水、風といった流動性があるものと違い、土魔法では質感のある固体を作り出す必要があったものですから。」
「なるほどな。で、それができたと。」
「伊勢様がお作りになられた伝導剣のパワーにより、火、水、風、土の4大属性の再現に成功しました!」
「それは良かった。やっぱり魔法といえば4大属性魔法だからな。」
「これも全ては伊勢様のお作りになられた伝導剣のおかげかと。」
「だから俺が作った訳じゃないんだって。
とにかく試してみようか。」
「では土魔法を試してみましょう。
ゴブリンを出しますので、剣を向けて「ロックバレット!」と叫んでみてください。」
「叫ばなきゃダメなのか?ちょっと恥ずかしいんだが。」
「どこの世界に叫ばないで発動する魔法がありましょうか。ここが見せ所ですぞ!さあ!」
いや、その世界ってアニメや小説だろうが。
ま、仕方ないか。ゴブリンに剣を向けて、
「ロックバレット!」と叫ぶ。
すると空中に石礫が出現し、そのままゴブリン目がけて飛んでいった。
「ガッ、ガッ、ガッ」と次々にゴブリンに当たり、当たったところから削れたように飛沫が飛び、当たる度にゴブリンは「ギャーッ」と声を出す。
ゴブリンのHPが2減少し、俺のMPは1減少した。社長から、
「なぎ払いと叫んで剣を横に振ってください!」
また叫ぶのかよ。
「なぎ払い!」
すると横一線に剣筋が走り、ゴブリンの横腹がズバッと切れ、ゴブリンのHPが更に2減少し、俺のHPも1減少した。
ゴブリンも危機感を感じたのか、こん棒を振り下ろそうと俺に突進してきた。
社長から、
「剣を敵に向けて「ロックウォール」と叫んでください!」
もう恥ずかしがってる場合じゃない。
「ロックウォール!」
するとゴブリンの目の前に下から土の壁がせり上って、ゴブリンがぶつかった。
ゴブリンHP1減少。
「横に回ってファイアボールです!」
ウォールの横に回って、「ファイアボール!」
目の前に火の玉ができあがりゴブリン目がけて飛んでいき当たった。
「ギャーッ!」ゴブリンHP2減少。
「そのまま、斬撃、なぎ払いです!」
「斬撃!なぎ払い!」
すると縦にズバッ!横にズバッとゴブリンを切り、「ギャギャーッ!」と叫んでゴブリンは消滅した。
「お見事!」
やった。何だか戦った実感がある。
だけどかなり疲れた。
「はあ、はあ、はあ。何とか倒せた。」
「いやあ、素晴らしい戦いでした。
これから更にテスト戦闘を重ねて、HPやMPの使用量や減少度合いを調整していきます。」
「そうだな。そうしてくれ。」
あれぐらいの戦闘で、もう腕が上がらない。
やっぱり重すぎる。
「社長、俺疲れたから、宿屋で休むわ。」
「お疲れ様でございました。」
マジで疲れた。
鍛錬場から出ると、フェンが待っていた。
「お主、ヨレヨレではないか。」
「ああ、宿屋で休もう。」
フェンと宿屋へ向かうことにした。




