第6話◇使い魔だと?
ギルドを出ようとした時、ウサ耳の受付嬢が呼び止める。
「カイ様、外にいる魔獣はカイ様の使い魔ですか?」
外にいる魔獣?
ああ、多分、フェンだな。
「多分そうだと思うよ。」
「やはりそうでしたか。
魔獣が街に入れるのは使い魔登録をした魔獣のみとなりますので、使い魔登録をお願いします。」
「使い魔登録?」
「はい。
魔獣の中には稀に人間に従うものがおり、魔獣が使い魔になることを認めた場合、ギルドで使い魔登録をすれば、使い魔とわかる装身具を着けますので、街の人たちも安心するのです。」
「なるほどね。まずは見てくるよ。」
と言ってギルドから出ると、入口の横でフェンが座っていた。
「おー!フェン、来てくれたのか!」
「暇だったのでな。
散歩のついでに寄ってみただけだ。」
と言いながら、尻尾がビュンビュン振られている。
「お前、俺に会えて嬉しいのか?」
「そ、そんなはずあるまい!
ついでだ、ついで。」
はいはい。相変わらずだな、こいつは。
「それでさ、魔獣が街の中に入るには使い魔登録をしなくちゃダメらしいんだ。
ギルドで使い魔登録をしてくれないか?」
「我はそこらの魔獣とは違うのだがな。
だが、それがここのルールなら仕方あるまい。」
そしてフェンを連れて再度ギルド内へ。
それまでザワザワしていたギルド内が一瞬静まり返り、みなこちらを驚いた顔で見ている。
こちらというか、フェンに対してだが。
「お、おい、あれフェンリルじゃねーか?」
「フェンリルって、あの神獣の?」
「フェンリルが何であんなジジィと一緒なんだよ。」
「まさかジジィの使い魔なのか?」
「そんな訳ねーだろ?
むしろジジィがフェンリルの使い魔なんじゃねーのか?」
「ぎゃはは!ちげーねぇ。」
ドッと周りが笑う。
「ジジィ、ジジィうるさいな。」
と俺がつぶやくと、
「フン、小物の言うことなど放っておけ。それとも我が少し威嚇してやろうか?」
「いやいやいや、やめてくれ。」
こんなとこでフェンが威嚇なんかしたら洒落にならん。
そうこうしているうちに窓口へ。
「すいません。
こいつを使い魔登録したいのですが。」
「ええっ!フェンリル?フェンリルを使い魔にするのですか?」
「できないんでしょうか。」
「いえ、できないというか、できる人がいるとは思わなかったというか、そもそもフェンリルを実際に見るのも初めてですので。」
「じゃあ、手続きお願いします。」
「わかりました。
ではギルドカードをお借りします。」
ギルドカードを渡すと、また裏に行き、しばらくすると戻ってきて、
「ギルドカードとこの首輪を連携しておきました。
この首輪をつけることによって、街の人たちも使い魔ということが分かりますし、ギルドカードのサーチ機能を使えば、使い魔の位置が分かります。
また、使い魔のほうでもカイ様のギルドカードの位置を常に把握することができます。」
「へぇ、それは便利だ。
で、サーチってどうやって使うの?」
「サーチと言ってみてください。」
「サーチ!」
すると目の前にボワンと周辺の地図が出現した。
自分の現在地だけが表示されている。
「おお、すごい。」
「サーチ対象を言ってください。」
「フェンはどこ?」
すると、地図内の自分の現在地と重なるように点が表示された。
「なるほど。」
「ある程度、具体的な対象を指定しないと表示されません。
また、街の外の討伐エリア、採集エリアでは、攻撃魔法ほどではありませんが、使用時間とともにMPが消費されますので、お気をつけください。」
「そこ以外では消費されないんだね。」
「はい。その通りです。」
早速、フェンに首輪を着けようとして、真ん中の例のエンブレムがついていることに気付いたが、「無視、無視」と思いながら着け終わった。
「フェン、苦しくない?嫌じゃない?」
と聞くと、
「余計なものを着けられるのは邪魔だが、この程度であればやむを得まい。」
と尻尾をブンブン振りながら答える。
「それから、先ほど講習を受けられましたので、初期装備をお渡しします。」
と、小剣、簡単な胸当てと、小さな袋を渡された。
「これは?」
と袋を見せながら聞くと、
「持ち込み上限額の銀貨10枚が入っています。今はテスト期間中とのことで上限額がギルドから支給されるそうです。」
お、現地通貨もできたのか、どれどれ、と袋から銀貨1枚を取り出す。
片面には例のエンブレムが...
「やっぱりか...」
そして、もう片面にはどこかで見たような横顔が。
受付嬢に
「これ誰?」
と聞くと、
「ご存知ないのですか?このお方は、この国の創造主であり、かつ統括者でもある、勇者伊勢様でございます!」
膝がガクッと落ちた。
創造主?統括者?勇者?
何だよ、その称号のオンパレード!
あのバカ社長!
と声に出しそうになったが、よく考えれば、俺はここではあくまでも、ただのFランク冒険者のカイだ。
デザインも若々しく美化してくれたおかげで、こんなジジィと結びつけるやつはいないだろう、と思い直した。
すると受付嬢が
「そんなに畏まられて...」
とウルウルした目で感激している。
あ、いけね。片膝ついたままだった。
慌てて立ち上がり、
「ありがとう。今夜泊まる宿を紹介してくれる?普通のとこでいいんだけど。」
「それでしたら、銀の鈴亭がよろしいかと。」
早速、サーチで調べてみると、ここからそれほど遠くない。
「フェン、行こうか!」
「うむ。」
と宿に向かうことにした。




