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第3話◇ワープだと?

次の土曜日になり、俺が行くと、社長が前回とは別の場所に連れていった。


「さ、こちらからお入りください。」


「ここは?」


「入場口設備はまだこれからですが、異世界の街までの通路を作りました。」


ああ、そんな話をしたっけな。


と、考えながら入口に入る。


「では、出発致します。」


次の瞬間、足元が動き始めたのを感じた。


「お、動き出した。」


「はい。ワープ技術をこの世界で実現しようとすると、着地点がどこになるか不明な場合がありますので、とりあえず単純な自動歩道にしました。」


いや、実現してくれなくて良かったよ。


「その代わり映像効果でワープを体感できるようにしました。」


次の瞬間、周りの景色が、猛スピードで後ろに流れていく。


「うわ、ちょっと。」


しかも、真っ直ぐではなく、渦を巻いているように回転し始めた。


挿絵(By みてみん)


「気持ち悪い、気持ち悪い。

ストップ!

スト——ップ!」


「どうかされましたか?」


「どうかされましたかじゃねーよ。

これじゃあ気持ち悪くなるよ!」


「そうですかねぇ。

我々は以前、経験したことがあるので、できるだけ再現してみたのですが。」


「そのまま再現してどうするんだよ!普通のお客さんが乗るんだぞ!」


「なるほど!」


「普通気付くだろ。」


「では、少しスピードを落として回転はやめますね。」


これで何とか気持ちよく景色が後ろに流れていくようになった。


そして光が強くなり、外へ。


目の前には前回もみた街の門がある。


「いかがでしたか?」


「うん。今のはいい感じだったよ」


「お褒めの言葉、頂きました!」


と、周りのスタッフとハイタッチを交わしている。


いちいち大袈裟なんだよな。


「お、出来てる、出来てる。」


かなり奥まで街が出来上がっており、売店では熊っぽい耳をした獣人の女性が客の応対を普通にしている。


「これ、みんなNPC?」


「そうでございます。人並みの動きと会話は可能です。」


あっさり言っちゃうし。


「お、馬車も走ってる。」


「はい。

ただ馬はNPCですが、NPCの馬が運べるのはここで割と簡単に手に入る素材だと、せいぜい2人が限界ですので、馬車部分は電気自動車の仕組みを利用しています。」


「なるほど。」


「では、この馬車にお乗りください。お屋敷までお連れ致します。」


「お屋敷?」


馬車は電気仕掛けなだけあって、馬の蹄と車輪が出す音しか聞こえず、サスペンションも付いてるようで、揺れもほとんどなく快適であった。


馬車の揺れは実際にはかなり酷いらしいが、そこまで再現する必要もないだろう。


テーマパークなんだし。


なんてことを考えてるうちに到着。


「着きました。お降りください。」


促されるまま降り立つと、目の前にまさに邸宅と言っていいお屋敷が。

門から玄関までも綺麗に整備された庭園になっている。


「おい!何だこれ。」


「伊勢様のお屋敷でございますが?」


「俺はちょっと休める場所って言ったよな。」


「ええ、ですからちょっと休めるお屋敷をご用意しました。」


「ちょっと休めるお屋敷って何だよ、意味分かんないよ。」


「まあ、まずはお入りになってみては?」


そう言われ、ドアを開けると、執事とメイド数人が並んでおり


「お帰りなさいませ、ご主人様!」


と声を揃える。


「ご主人様って誰だよ。」


「もちろん伊勢様でございます。」


「メイド喫茶かよ!」


「執事のセバスでございます。

ご用があれば私かこちらにいるメイドに声をおかけください。」


「よろしくお願いします!」


とメイド達が声を揃えて頭を下げる。


「分かったよ。何かあったら声をかけるから仕事に戻ってくれ。」


「あ、休憩がてら、ちょっと社長と話がしたいから誰か部屋に案内してくれないか。」


「それでは私が。」


とメイド長らしき女性が答え、


「こちらにどうぞ」


と連れていかれた。


部屋に入ると、窓際にフェンが寝そべっている。


「フェン、ここにいたのか!」


「おお、主か。主の家がここだと聞いてな。」


「主?俺のこと?」


「他に誰がおると言うのだ。お主、我に名付けしたであろう?」


「ああ。」


「あれで主従契約が成立したのだ。」


「なるほど。でも主従ってのは嫌だな。俺たち友達だろ?俺のことも主じゃなく界って呼んでくれよ。」


「カイか。了解した。」


「さ、社長、そこに座ってくれ。」


「分かりました。」


「この屋敷、そして使用人達、俺は一体何様だよ!」


「伊勢様では?」


「そうじゃなくて!これじゃあ貴族じゃないか。」


「あ!大変失礼致しました!貴族ごときに感じさせてしまうとは何たる不覚!申し訳ございません!」


「いや、お前何言ってんの?」


「王城がまだ完成しておりませんので、仮屋敷としてこちらをご用意させて頂きましたが、このようなものでご満足頂けると思ったのが間違いでございました!」


「俺と王城の完成が何か関係あるの?」


「この世界の王たる伊勢様が王城に入るのは当然でございます。」


「ちょっと待て!…まあ、この話はまた改めてすることにしよう。」


「では、この後のご指示を頂ければ。」


「そうだな。まずは平民街をある程度完成してしまおう。

宿屋はランク付けして、三ツ星宿、二ツ星宿、一ツ星宿、の3つぐらいあればとりあえずいいだろう。

言うまでもなく星が多いほど高級ってことだが、あくまで「平民としては」だからな。

三ツ星だからといって豪華にする必要はないんだからな。」


「承知致しました。」


「あとさ、ここのメイドを見て思ったんだけど、みんな綺麗な子だろ?

しかも人間と区別がつかない。

それは想定内だが、客の中には不埒な行動に出る輩もいるかもしれない。

その対策が必要だな。」


「その点は心配ございません。

彼女達にはいざという時、相手に電気ショックを与える機能がございます。

これはかなり強烈でございまして、電気ショックを受けたものは、死ぬことはございませんが、しばらくは身動きできなくなるでしょう。」


「それじゃあダメなんだよ。

相手は腐ってもお客さんなんだよ?

お客さんに対してロボットが攻撃して動けなくしたと知った世間はどう思う?

ここの存続に関わる問題になるぞ。」


「こ、これは私が浅はかでございました。

なるほど。言われてみればそうでございますね。」


「言われてみればって…普通に考えればわかるだろ。」


「ではどうすれば?」


「ロボット、社長の元いた世界ではヒューマノイドだっけ?

それらから客への攻撃はどんな場合でも厳禁だ。

同じヒューマノイドに対しても同様。

人間そっくりなのだから、客から見たら人間に対して攻撃したように見えるだろ?」


「なるほど、ごもっともでございます。伊勢様の深謀遠慮、お見それ致しました!」


「いや、だから当たり前のことなんだって。」


「その謙虚さ!やはり上に立つお方は違いますな。」


「誰が上に立ってるんだよ!

まあ、いいや。

ただ、そういったトラブルに対するセキュリティはしっかり考えておく必要がある。

そうだな。

平民街の近くに騎士団を置こう。

騎士団は24時間3交代制だ。

このテーマパークは他と違って24時間営業だからな。

騎士団には小隊をとりあえず4つ置こう。

1小隊は5人で、内1人は人間だ。

他はヒューマノイドでいい。

その内、1小隊は街中を巡回、1小隊は緊急事態に備えて待機とする。

で、それらをまとめる騎士団長なんだが、誰か適任者はいないか?」


「それでしたら、こちらの者はいかがでしょう。」


と後ろに立つ人物に目を向ける。


見ると陰のように立っているので、あまり気が付かなかったが、よく見るとかなりの美人だが、目つきが鋭い。


「この人はヒューマノイド?」


「いえ、人間でございます。

ただ、剣術、体術に優れておりますので、護衛兼秘書として使っております。」


「そうか。ではこの人を騎士団長としよう。」


すると、その女性が素早い身のこなしで俺の前に跪き、


「身に余る光栄にこのジャスティス。粉骨砕身努力致します。」


「ジャスティスっていうのか。」


「はい。ジャスとお呼びください。」


「じゃあ、ジャス、ここでは戦争がある訳ではないから、騎士団といっても基本的には、この街の警護が中心だ。

ただ、トラブルがあった場合は、荒っぽくせず、まずはおとなしくさせて、騎士団に連れていくようにしてくれ。」


「はっ!」


「騎士団の構成、組み合わせはジャスに任せる。そして騎士団の中に団員が宿泊、食事、入浴ができて、その中で一定期間は過ごせる設備を整えてくれ。

ヒューマノイドには睡眠とか必要ないのかもしれないが、メンテナンスにあてるといい。

これが騎士団長の最初の仕事だ。」


「かしこまりました。全力で取り組み、伊勢様のご期待に必ずやお応えしてみせます!」


「いや、大げさだって。」


「社長、街中に監視カメラを目立たないように設置できるかい?」


「その程度はお安い御用です。」


「ならば、できるだけ死角がないように監視カメラを配置してくれ。

そのカメラは騎士団でチェックできるように。騎士団は監視カメラで異常を発見したら即出動だ。」


「はっ!」


と二人で声を合わせて答える。


なんか芝居がかってるんだよな。


「そうだ、社長。

ヒューマノイドを遠隔操作で機能停止させることは可能?」


「もちろん可能ですが、何のためにでございましょう。」


「最初は、万が一、ヒューマノイドが暴走したり、逆に暴動に巻き込まれたりした時のために機能停止スイッチをつけることを考えたんだけど、それだと、うっかりスイッチに触れてしまうかもしれないだろ?

だったら遠隔で機能停止させた方がうまく処理できると思ってさ。

後はそれを騎士団が拾っていけばいい。」


「なるほど。伊勢様は先の先を読んでいらっしゃるのでございますね。」


「ただのリスク管理だよ。そういえば、社長はここにかかりきりだけど、本業の方は大丈夫なの?」


「こちらの世界でも優秀な人材はおりますので、本業はほぼそちらに任せております。

ですから、私は伊勢様が望まれることの実現に邁進させていただきます。」


「なんか重い…」


「あとは、このパークでは、ここだけの通貨を使用することにしたい。

少額しか持ち込めないようにして、基本はここで稼がないと高価なものは買えないことにするんだ。

現実の金持ちが金にあかせて好き放題できないようにね。

そうだな。

金貨、銀貨、銅貨、鉄貨の4種類にするが、金貨は王族、高級貴族程度しか使えないようにして、流通は銀貨から下が基本だ。

銀貨は1枚で宿屋に1泊できるぐらい。

銅貨は1枚で食事できるぐらい。

鉄貨は数枚で屋台で何かを買えるぐらいかな。細かい基準はまた別に考えるとして、まずは一定数揃えておいてくれ。

貨幣工場はいずれ王城内に作るが、それまでは入場口から街の入口までの空き地にでも工場を建てればいい。」


「承知致しました。」


「あとはギルドだな。

ここはこの街の重要拠点になる。

まあ、外観、内部の造形はほとんどの異世界もので同じだから、それを参考にすればいい。

それと違うのは、地下鍛錬場を設けて、そこでVR戦闘が可能にして欲しい。

そこで試してみて、街の外のVR戦闘の参考にしよう。

あと、ギルドマスターは人間を予定しているので、人選を頼む。

他のギルド員はNPCで構わない。」


「承知しました。しかし、伊勢様は次から次へと的確な計画が出てきますな。やはりこれが王の器というものでしょうか…」


「いや、お前、何言ってんの?」


「とりあえず、今回はこんなものかな。

結構いろいろお願いしたから、1週間ではとても無理だと思う。

俺も来週は進捗状況や問題点を確認しに来るよ。

決して無理はするなよ。」


「ご配慮ありがとうございます。

では、また来週お待ちしております。」


伊勢が去った後、社長が皆を集め、


「もう皆気付いてるとは思うが、伊勢様は既に我々ができることを見抜いておられる。

決して無理はするなよと念を押したのは、お前らならできるはずだとの信頼の言葉である。皆、寝てる暇はないぞ!

伊勢様のご期待に応えるのだ!」


「おうっ!」


と伊勢の知らないところで盛り上がっているのであった。

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― 新着の感想 ―
王様扱いでお屋敷に案内される主人公のやり取りが面白かったです! 経営者として次々と的確な指示を出していく伊勢の姿がすごく頼もしくてカッコよかったです。 今後のお話も気になります!
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