第18話。絶叫!遊園地のジェットコースターで世界を止めるな
第18話。絶叫! 遊園地のジェットコースターで世界を止めるな
「おい時さん! 嫌なら乗るなよ!」
「無理無理無理! 現代の乗り物は狂ってるよ! なんで鉄の塊が垂直に落ちるんだい!?」
秋晴れの週末。
拓海、時次郎、サクラの3人は、話題の絶叫マシンがある遊園地へとやってきていた。
時次郎は乗る前からガタガタ震えていたが、サクラの「時さんと一緒に乗りたいな」の一言で見栄を張り、最高時速130キロを誇るメガコースターに乗り込んでしまったのだ。
カチャカチャカチャ……
と、コースターがゆっくりと地上80メートルの頂上へと登っていく。
「マスター、おじさんの心拍数が危険域に達しています。恐怖によるカロリー消費効率が通常の500%を記録」
と、スマートウォッチからアイリスの無慈悲なナビ。
「ひえぇぇぇ! 拓海、サクラちゃん、僕、死んだら時計に戻るからね!」
「大袈裟なんだよ! ほら、頂上だぞ、景色綺麗……」
ガコン。コースターが頂上で静止し、真っ逆さまに落下する——その瞬間。
時次郎の脳細胞が恐怖の限界を迎えた。
「ママーーーーッッ!!!」
ギュルルルルルッ!!――ピシィィィン。
最悪の場所で世界が止まった。
コースターは、ファーストドロップの傾斜45度、まさに「これから落ちる」という超不自然な角度のまま空中でロックされた。
髪が逆立ったままフリーズするサクラと同乗者たち。
「おい時さん! 地上80メートルの斜めで止めるな! 腹筋が死ぬ!」
拓海は安全バーに押し付けられながら叫ぶ。
「む、無理だよ拓海……。怖すぎて……お腹が……ペコペコ……」
時次郎の顔がみるみるセピア色になり、安全バーを握りしめたままカチコチに凝固していく。
「マスター、おじさんのエネルギーが完全ゼロになりました。このまま3分経過すると、静止空間の重力バランスが崩壊し、コースターが真っ逆さまに墜落します」
「おいアイリス! 脅すな! でも、こんな地上80メートルの斜めで食べ物なんか——あ!」
拓海は、サクラの隣の席のポケットに入っていた、お土産用の『飲む高級飲むゼリー(マスカット味)』を発見した。
時間が止まっているため、ポケットから取り出すのも一苦労だ。
「時さん! バーを片手で離せ! 口を開けろ!」
「う、動か……ない……」
「くそっ、こうなったら!」
拓海は安全バーの隙間から命懸けで体を乗り出し、左手一本でコースターの縁を掴んだ。
そのまま、右手に持った飲むゼリーのキャップを歯で噛みちぎり、重力に逆らうようにして時次郎の口へ向かってゼリーを力いっぱいスクイズ(発射)した!
ピュッーーー!
時間が止まっているため、ゼリーの塊は空中に緑色の弾丸となって静止する。
「時さん、首を前に出せ! 食いつけ!!」
時次郎が最後の力を振り絞って首を5センチ前に出し、宙に浮くゼリーの塊をバクリと丸呑みにした。
ごくん。
ピキィィン!
「マスカットの果汁、チャージ完了!!」
時次郎の目がネオンのように輝き、豪快に指を鳴らした。
カチ、カチ、カチ!
世界が動き出した瞬間、コースターは猛スピードで大爆走を開始した。
「キャーーーッハハハ! 楽しい!」
と大はしゃぎのサクラ。
「うわあああああん(本物の恐怖)」
と号泣する時次郎。
そして、命懸けの空中アクロバットで全身の筋肉がツタツタになった拓海。
「もう二度と……お前と絶叫マシンには乗らん……」
地上に降りた拓海は、生まれたての小鹿のように足をガクガク震わせながら、固く心に誓うのだった。




