12話 試合開始
ここがビック武道館か
間に合わなかったらどうしようという不安感から速歩きで来た結果、開始時刻よりも1時間ほど早く到着してしまった。
「これは愛の磁石が急がせたんだ」そう思うことにした。
驚いたのが、この時間にも既に並んでいる人が一人や二人ではなく、100人以上いたことだ。
前に行けば行くほど折りたたみチェアや膝掛けを持参している人で行列を作っている。
あるひとはカイロを大量に貼っていたり、ある人はクーラーボックスを持ってきている。
ファングッズで武装しているヤバめの人もいる。(こんな冬場に半袖か...)
「こんなガチ勢に勝てるのか?」
考えてみればゲーム機やスマホの列に並んでいた猛者たちもいるわけだ。
仮に早めに入った方が優先されるルールだったとき、僕はそれに関しては積んでしまうことになる。
そう思うと、早めに会場入りしたり、早めに動くのは最善策なんだなと思う。
ネットの民(同士)たちも予選の内容を知っている人はいなかったし、公式からも発表されていなかった。
この2週間は春ちゃんの配信も見逃さずに追っていたが、内容等は公開してはいけないという風になっているらしかった。
僕は長蛇の最後尾に並んで、開始の時刻を待つことにした
ソシャゲで暇つぶしをしているとあっという間に僕の位置は相対的に見てかなり前側になった。
時間が経つと、人が増えていくのは普通なのだが、増えれば増えるほど不安になってくる。
ざわざわとした雰囲気は僕にとってみれば、人に何か悪いように思われているのではと考えてしまうからすごく苦手だ。
仮に社会人になって飲み会に誘われたら一発ギャグをやることになって、過剰な期待に耐えられなくて滑って、同僚に定年までいじられるんだろうなぁ。
妄想の世界に入っていると、ガサガサと服のすれる音が聞こえた。
時計を見ると10時半となっており、開始予定の時刻となっていた。
一斉に動き出した波に飲み込まれないように慌てて移動する。
あまりの声の雑音の多さに、イヤホンを持ってくれば良かったと思ったが、今更どうしようもないのでくらくらしながらも、10分ほどかけて受付に到着した。
簡易的に作られた受付のテントは真上からの日差しを少し通して陰っている。
必要な番号札を見せると、スムーズに受付を抜けれた。
その時、VR付きヘッドギアを貰った。
なんでも予選の最中はこのギアを付けないといけないらしい。
これが最新のVRゴーグル
VR自体かなり発展していて社会の色々な場面で見る機会があるけど、頭と耳まで装着するとタイプは珍しいな
仮想空間でクイズ大会でもするのかな
推しのクイズは大得意なので僕にとっては好都合なのだ。
世間の人からみたら配信のおもしろエピソードをほとんど知っているなんて「追っかけ過ぎだろ」と言われるかもしれないが、好きなこの喋った内容は脳内で何回も再生可能なのでずっとおぼえていられる。
これが学校の授業で使えたら良いのに
では、健闘を祈ります
受付の人にそう言われ、ドームの中に入る。
そこには、僕と同じくヘッドギアを持った人で溢れかえっていた。
ざわざわした雰囲気
数多の人で混み合っている会場を、上部のライトが照らす。
会場には日本人だけでなく、英語や中国語を話す人も沢山いる。
僕と同じ高校生らしき人も沢山いて、少し安心した。
入り口から続々と人が入ってくるので、僕はサーフボードに乗るように奥へ奥へ進んでいった。
時刻は11時半になり、新規参入者も少なくなった頃
証明の一部が切れてそれと同時に
上の方がバカッと開いて、大きな四面モニターが現れた。




