第二十四話 取調べ室(2)
「そうか……ところで、荒木とは大分仲が良かったらしいね」
萩原刑事が鋭い眼光を瑛子に向けてきた。思わず、全てがお見通しなのかとドキッとする三人だが、そこは親に隠し事をするという日常で、表情を隠す訓練を積んできているのだ。そう簡単に暴露はしない。
「仲がいいなんてほどじゃないですよ」
京香がけん制する。
「仲がよくなるはずでしたけどね」
と、瑛子もけん制したつもりだ。
「仲がよくなるはずだったのか。と言うことは、パートの人たちと同じ位の関係なのかな」
「パートのオバサンと同じだなんて、失礼だわ! それ以上に仲がよかったのよ! だって、これから付き合うはずだったんだもの」
ペラペラと話す瑛子の足を、両側に座っていた京香と夏美が思いっきり踏みつける。
「痛い! なんで足を踏むのよぉ」
壁際に座ってメモを取っていたオバサン刑事が噴き出した。それと同時に、京香と夏美が大きくため息を吐く。
「そうか、荒木に誘われていたんだね。誘いに乗らなくてよかったよ。大変なことになるところだったからね」
萩原刑事が真面目な顔で瑛子を見据えた。
「でも、悪い人じゃないですよ」
「……荒木が付き合っていた女性がいることを知っていたかい?」
「付き合っていたかどうかまでは知らないけど、うわさは聞いてました」
「沢渡さんと榎本さんも知ってた?」
京香と夏美が仕方なさそうに頷いて見せた。
「その話しは誰から聞いたのか覚えてる?」
「誰からって……ねぇ」
瑛子が救いを求めるように、視線を京香にむけた。
「パートさんたちが話しているのを聞いたくらいです」
京香が萩原の目を真っ直ぐに見つめて言うと、萩原はじっと京香を見返して、しばらく考えていた。
「そうか……荒木とその女性が会っいるところを目撃したことはあるかい?」
「仕事してる時に会ってますけど」
瑛子が考えながら答えるが、その内容はいたって当たり前のことだ。萩原がそうじゃなくてと言いたげなのが分かる。
「二人だけで深刻そうな話をしているところを見たとか。そういうことはなかったかと聞いているんだけどね」
苛立っているのだろうが、そこは熟練刑事だ。じっくりと噛んで含めるように話してくる。
「ありません」
京香がはっきりと言い切ると、夏美と瑛子も力強く頷いた。
「そうか……じゃぁ」
そういうと、萩原刑事が女性の写真を目の前に置いた。それは、首に縄の後がくっきりと残り、髪が乱れ白目をむいていた。
「この人を知っているかな?」
三人は、テレビでよく見るような写真を目の当たりにし、驚きと共に興味で目が皿のようになった。
「君たちの知っている人かな?」
萩原刑事が再度質問してくる。三人は視線を背けることなく、大きく顔を上下に動かした。それが誰なのかは考えるまでもなかった。




