08 探求したいものと見学者達
ー登場人物紹介ー
◆夜岸連・"恋心"を食事にする生き物。中学生3年D組。
◇八ツ柳修子・連に片想い。A組。
◾️橋本爽子・元女子バスケットボール部員。D組。
◾️加々見舞・連の2年生からのクラスメイト。D組。
●雨宮英里・元男子バスケットボール部マネージャー。A組。
●近藤アイナ・雨宮英里の友達。A組。
●今井景子・元女子バスケットボール部員。C組。
放課後の教室にはわざとゆっくりと残ってみた。
八ツ柳修子がジャージの上を返しに来てくれるかもしれないと期待してだった。
来てくれなければまた中庭に行くつもりだった。
彼女が何故あんなにも他の女子生徒とは明確に違う"恋心"を持っているのか気になって仕方がなかった。
八ツ柳修子のことばかり考えていたので、彼女が教室の入り口に現れた時には立ち上がって向かってしまった。
美味い香りに またすぐに抱きつきたくはなったが、そこは自身をなだめる。
彼女は──これから先自分が"食事"をして生きていく上で、重要なキーパーソンであることに昨夜気付いたからだ。
彼女自身から"恋心"を消し去る前にもっと調べたいと思った。
"何故この人間の中の 好きは特別なのか"
────今、それを本人に聞くには不自然過ぎる。
まずは距離を縮めたい。
「八ツ柳さん。昨日、大丈夫だった?」
教室の入り口に手をかけて尋ねると、背の低い彼女はこちらを見上げてから恥ずかしそうにうなずいた。
それからスポーツブランドの袋を私に渡して
「ありがとうございました」
と頭を下げると、あとは振り返って去ろうとした。
教室の中にも廊下にもまだ他に生徒はいた。このやりとりだけでも注目されていることは感じた。別にかまわない。
私は
「八ツ柳さん、待って!!」
と呼び止めた。
彼女はビクリとして足を止めて振り返ったが、信じられないというような表情でこちらを見ている。
「なんで放課後 1人で水やりしているの?」
突然の質問に、戸惑ったようだが彼女は答えをくれた。
「園芸部なので。……私1人の園芸部なんです」
なるほど。
「そうなんだ。──僕も入ろうかな園芸部」
言葉は無く、彼女の顔だけがビックリしたものに変化した。あちこちから ざわめきが起こる。
「バスケ部終わってやることないなって思ってたんだ。1人で学校の花壇全部やってるなら大変だろうし」
修子は首を千切れんばかりに左右に振った。黒い髪も顔にまとわりつくほどで、異様だ。それもどうでもいい。
「大丈夫です!! それに勉強した方がいいですよ!! 絶対に!!」
"なんでこの女の子は避けようとするんだろう? ますます知りたい"
「雨の日は休めるだろうし、冬にはもう水やりもほとんどないよね? 全然勉強に影響しないと思う。────行こう、八ツ柳さん」
私は片手で受け取った袋をロッカーに放ったが、それは見事に命中してそこにスポッと収まった。
2年間バスケットボール部エースだったかいがあった。
見ていたヤツらが、おぉと感嘆の声も上げていたが無視して、私は修子の手を引いて歩きだした。
3ーDの教室には、今年同じクラスになった橋本爽子と加々見舞がまだいた。
2人は目を丸くして顔を見合わせていた。
そして 廊下には近藤アイナの姿もあった。




