09 ついに、初めての恋人
ー登場人物紹介ー
◆夜岸連・"恋心"を食事にする生き物。中学生3年D組。
◇八ツ柳修子・連に片想い。A組。
私は死ねなくなってしまった
修子は、自分の部屋の机の上で日記に──そう書くしかなかった。
夜岸連くんが
あの夜岸連くんが
夜岸……くん……が
毎日私と水やりをしてくれている。毎日、朝か放課後のどちらかは一緒にいる。
まるで…………恋人同士……みたいに。
こんなに幸せなことって、ない。
いじめは──エスカレートしてる。
机には花瓶に花や、ゴミを置かれたりしている。教科書は裂かれた。
だけれどいいと思った。
この妬みや嫌がらせを引き換えに、夜岸くんと一緒にいられるようになった気がしたから。
私みたいな人間以下の顔の女子が彼に優しくされていたら、美人な人達は腹立たしくて仕方ないのだろう。
夜岸くんは……
夜岸くんは本当に素敵で……不思議な人だ。どうしてあんなにいい人間なのか謎なほど。
今まで──
こんな私でも男の子を好きになったことはあったんだ。
だけれどもみんな──私が好意を示しても迷惑がられて避けられた。最近はもう嫌がられて気持ち悪がられてしまう。
なのに夜岸くんは──違う。
彼に感謝や好意的な……"凄いですね。カッコイイですね"というような言葉を言っても──心から喜んでくれる。少なくともそう見える。
まるで可愛い女子に言われたみたいに…….反応してくれる。
他と同じように、ただ普通に扱ってもらえることは、どれだけ幸せなことだろう
それを、好きな人にしてもらえているなんて……
こんなに嬉しいことなんてない。
こんな顔の私でも人生で……何か良いことはあるのかもしれない。少しだけ、少しだけ希望を持っても……いいのかもしれない。
夜岸連との水やりや花壇の草取りは、もう1ヶ月以上になっていた。
彼はいろいろと私のことを尋ねてくれたし、私の話を聞いてくれた。まるで──私を知ろうとしてくれているかのように。興味があるかのように。
夜岸くんは成績もいつも10番以内で頭も良い。同じ高校なんて夢は見れないけれど、いくらかでも……彼から見てマシな自分でいたいと思った。
両親に頼んで家庭教師をつけてもらい、苦手な数学と英語の克服を頑張った。
中3のこの時期だったので、両親も応援すると言ってくれた。妹の習い事より──私の家庭教師を優先するって。
久しぶりに 嬉しくて涙が出た。
「夜岸くん、私 この前の模試で初めて数学で65点が取れた。いつも数学は40点とか……さんざんだったから、たいしたことない数字だけどとっても嬉しい」
家庭教師と勉強を始めてまた数ヶ月も経った頃だった。
気温も下がり始めていた。あと少しするとプランターの花々は校内に入れられ、用務員の管理になる。外の花壇の花たちもすでに時期が過ぎて、水を必要とはしなくなりつつあった。
「模試で65点は良いよ。期末考査なら70点台確実じゃないかな? それ以上だって狙えるかもしれないね。何よりこの時期点数のばせるって凄い」
彼が感心してくれたので、私は天にも昇る気持ちだった。
良かった! 寝ずに頑張って本当に良かった!!
「夜岸くんみたいに全科目平均して取ったりは私は出来ないけど……でも苦手なものをがんばろうと思ったの。あ、あの……」
ほんの少しだけ夢を見たいと思った。勇気を──出して良いはずだと 願う。
「あのう……だから……園芸部が終わっても卒業しても………………と、友達でいてくれませんか?」
夜岸くんのアイドルのような顔が戸惑いに かげったので、私は"しまった!"と背筋が冷たくなった。
余計なことを言うんじゃなかった──ああ、やっと仲良くなれていたのに……
今ので絶対に嫌われた
しかし次の瞬間、私のずっと崇めて想い続けてきた人は信じられないことを口にした。
「僕は八ツ柳さんの友達じゃなくて恋人がいいけど────だめ?」
神様 死にそうです
幸せすぎて
生まれて初めて 知りました
こんな 感情も あるなんて
お読みいただきましてありがとうございます。
次回より、内容の都合で2エピソードづつの更新になります。次回は明後日5月28日更新で『10 獰猛な刃』『11 獲物の奪い合い』になります。
よろしくお願い致します。m(_ _)m




