05 追うもの達
ハァ……と
大きな溜め息が口から漏れる。
ここ数日 校内を一通り見て歩いても、今だにファンレターの送り主の手がかりはない。
教室内は雑多な匂いばかりで判別がつかない。廊下も同じだった。
不思議なことに──諦めて帰るために外靴を履き、校外に出た方が似たような香りを感じた。
"彼女"も下校した直後だからか──?
それとも……
「昨日も、連くん来なかったよねー」
近藤アイナの言葉に、雨宮英里は深くうなずいて言う。
「小塚や健ヤンも笑わせてはもらえるけど、やっぱり連くんいないと……つまんなかったなぁ」
その言葉に今井景子は苦笑している。
「小塚も健ヤンも英里の元カレでしょ? つまんないって言われて かわいそ」
3人は教室の窓側に出ているベランダにいた。
近藤アイナと雨宮英里は今同じクラスで、今年は違うクラスの今井景子は元女子バスケットボール部員でもある。
天気は快晴で、厳しい残暑も落ちつきつつあった。
「連くん最近そっけないんだよね。──でも、私には……前からだったな。
男バスのスターティングメンバーで阿久津や勝も告ってきたのに、言い寄ってこなかったの。連くんだけ」
「何それ!? マネージャーはスタメンのコンプリート狙ってたのぉ!?」
アイナは呆れたような声を上げながら大笑いだ。
「魔性の女なんだよ、英里は」
景子は微笑んでいたが辛辣に言った。
「だって連くん 見た目だけなら最強じゃん。私って魅力ないのかなぁ? 凄い目で追って視線送ったし、差し入れ1番に渡したりしてたのに。──丸2年よ丸2年。もう馬鹿にしてんのかって感じ」
「連くんも女子みんなに優しいから、罪な男だよねぇ」
そうしてベランダに手をかけて中庭を見ていたアイナは、口調が──変わった。
「ハハッ、見て"ヤツメウナギ"。水かかってるよ。鈍臭過ぎて気の毒」
下では長いストレートヘアのメガネの女子生徒がジョウロを持って花に水をやっていた。──が、コンクリートの段差につまずいて転んだところだった。スカートに水が大量にかかっている。
「アイツ今 私の席の隣なの。臭いっつうの」
英里が仏頂面で空に向かって唇を突き出して言った。
アイナはその言葉にキャハハと笑ったが、景子は中庭を見続けていたので
「ねぇ、見なよ2人とも」
と声をかけた。
英里とアイナは下に視線を向けた。その新たな人物を見つけると英里は、ベランダの縁を握る手に力を込めて身を乗り出した。
転んだ女子生徒には駆け寄る男子生徒がいたのだ。
夜岸連 だった──




