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恋を狩る夜に  作者: シロクマシロウ子


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4/18

03 食事ではなく

 



 2人の女子から好きだと言われ"どっちが好き?"とその場で問われるのは、男子には天国でもあり地獄でもある。

 大人になった今ならその面倒(めんどう)さに()め息をついただろう。


 しかし14歳の私は、知らないが(ゆえ)の──新鮮な()け引きへの好奇心にかられていた。


「2人が好きでいてくれているって、今突然分かったばかりだから……どっちかなんかとても決められない。だけど────」


 女子2人を交互(こうご)に見つめて言う。


2()()()僕のことどれくらい好きなの?」


「あたしは……!」


 橋本爽子(はしもとそうこ)は いち早く口を開いた。


「あたしは去年から体育館で見ていた。目を()くなぁ……って。女子バスケ部と男子バスケ部はコートが隣りだから。」


 爽子に私がうなずくと、加々見舞(かがみまい)も話し始めた。


「私は……今年クラスが一緒になってからだけど。ホラ、前期のクラスの副委員長が私と(れん)くんだったでしょ?

 運動会の準備でも討論会(とうろんかい)の用意でも……2人でやってていつも助けてもらってたから……。連くん、優しいなぁって思っちゃったの」


 長めの制服の上着の(そで)から出る細い指を口に当てて、恥ずかしそうに舞は言う。だが視線はこちらにしっかりと送ってきた。


「そっか。ありがとう2人共」


 ──そこで、いつも追う側だった自分の中で 遊び心が(うず)いた。


「あとは? 好きだと何をしてもらえるのかな?」


 と聞いてみる。

 爽子は少し考えながら


「連くんが好きな音楽とか場所があったら一緒に楽しみたい。あたしと、ストリートバスケで1ON1(ワンオンワン)やろうよ」


 と答えた。デートに誘っているのだろう。


「私は……」


 舞は目を細めて かすかに笑みを浮かべた。


「キスしてあげたい」


 横にいた爽子が舞に振り向き、目を見開いて凝視(ぎょうし)している。


「……って言うか、キスできたらいいな──って言う私の妄想(もうそう)? 連くんが……大好きだから」


 舞はやはりまた恥ずかしそうに言葉を発する──が、チラチラとこちらに目配(めくば)せをしてくる。


「そんなことまで考えてくれてたんだね」


 そう声をかけると、彼女は今度こそしっかりと私の方に視線を向けてきた。

 ハタから見ると、自分と舞は見つめ合っていたのかもしれない────

 座っていた橋本爽子が、その時いきなり立ち上がったのだ。


 私と舞は少し驚いて橋本を見上げる。女子バスケットボール部のエースにもなっている彼女は、背が高くスタイルが良い。そんな彼女は言った。


「あたし、胸を見せてあげる」









 自分も食欲ばかりではなく、オスとしての性欲は(そな)わっている。中学生男子には刺激的(しげきてき)な発言だった。

 私は立ち上がって爽子と目を合わせて聞く。


「本当にいいの? そんなこと?」


「いいよ。あたしだって連くんが大好きだもの。好きな人になら、見せたって悪いことじゃないでしょ」


 彼女はそう言ってブレザーの上着のボタンを(はず)し、早々(はやばや)と足元に落とした。ブラウスのボタンを外す指はわずかに震えていた。──それでも、止まりはしなかった。


 舞が言葉を失って座ったまま見つめている。

 自分も女の子の身体(からだ)への興味で目を(うば)われてはいたが、頭の中はどこか冷静だった。

 引っかかっていた。"大好きだ""好きな人"と言っているわりには、香りが……弱い。


 やがて爽子はキャミソールとブラジャーだけの上半身になり、キャミソールの肩紐(かたひも)両脇(りょうわき)に落とした。あとはブラジャーの…………


 コンコン


 とノックの音がして全員が息を飲む。

 私は"父だ"と瞬時(しゅんじ)に気づいて、ドアに手をやる。

 爽子は体に手を回しながらしゃがみこんだ。


「何?」


 ドアを押さえながら私が聞くと 父は


「友達が来ているようだが、暗くなってきている。ひと言かけようと思ってね」


 と言って──去って行った。

 橋本爽子はブラウスと上着を抱きしめて動けないでいる。


「頑張ったよ、爽子。……帰ろう」


 と舞が声をかけると、彼女は小さくうなずいた。


 口を出す雰囲気(ふんいき)ではなかったので(だま)っていたが、正直言って私は思っていた。

 ────"人間の女は何がしたいんだか分からない" と。







 彼女達をバス停まで送り、バスを見送りした。


 バスを待っている間に爽子は私に


「連くん、あたし今日バカなことしちゃった。ごめんなさい。…………お願い、恥ずかしいから誰にも言わないで」


 と半泣(はんな)きのような顔でうったえてきた。

 ほとんど何を言っているか理解出来なかったが


「分かった」


 と言って、泣きそうな彼女の腕をポンポン優しく叩いた。

 バスに乗って爽子と舞は帰って行った。

 私は橋本爽子の腕に触った自分の手を思わず見返していた。


 うまそうな(にお)いも弱く、触れても(いや)しはわずかだ。

 橋本爽子は──私に"恋心"はほとんど……なかった?


 言葉や行動とは裏腹だった。


 私は混乱しながら家に着いた。



 靴を()ぎながら、後ろに人の立つ気配(けはい)を感じた。



「何?」



 とドアの向こうの時と同じ口調(くちょう)で言う。



「お前のやっていることは()()ではない」



 その言葉に振り返った。──父親に。



 その人は言った。





()()を つまんでいる程度(ていど)のものだ」








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― 新着の感想 ―
ああ、思わずいけない妄想をしてしまいそうですね……。 どうして女子はそんなに早熟なのでしょうか。 あと、親父の強キャラ感ですよ。
橋本爽子ちゃんは、恋愛感情ではなかったみたいですね。 言葉では好きといっても、匂いがしなくなるというのはそういうこと? 舞ちゃんに対する敵体心ですかね? 女心はまだ14歳ではわからないですね。 (*^…
恋に恋する中学生かな? ちょっといいと思ったくらいの相手だけど、ライバルが出来てしまったからついつい対抗してしまった? 爽子ちゃんが舞ちゃんLoveだったとは考えたくないな…………。 この程度の想い…
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