16 全ての結末
ー登場人物紹介ー
◆夜岸連・"恋心"を食事にする生き物。中学生3年D組。
◇八ツ柳修子・連に片想い。A組。
◾️橋本爽子・元女子バスケットボール部員。D組。
◾️加々見舞・連の2年生からのクラスメイト。D組。
●雨宮英里・元男子バスケットボール部マネージャー。A組。
●近藤アイナ・雨宮英里の友達。A組。
○大友健也・元男子バスケットボール部員。3年。
○阿久津仁・元男子バスケットボール部員。3年。
『素敵よね、いくつになっても誰かを愛せるって』
爾来領子がテレビ画面でセリフを言っていた。もう熟練の域に入っている40代の女優。確かな演技力と画面を支配するような美しさが評価されている。
彼女の経歴には確かに一般人との結婚の過去があり、そして離婚の記録がある。結婚している間と離婚の後しばらくは──仕事も休んでいた。
父はもう仕事に出ていた。
1人朝食をとり食器を水につけた。
コートを羽織って指定カバンを持つ。
そして、産みの母親の映るテレビを消した。
爾来領子は、私が一度も会ったことの無い女性だった。
八ツ柳修子に起こったことは"いじめ重要事態"に学校や教育委員会が認定し、いじめに関わった6人はすぐに自宅謹慎になった。が──これはさほどのことでも別に、無い。
修子の両親はすでに告訴の方向で動いていた。警察も起訴に向けて調べてくれていた。
だが、直前にそれを止めたのは──修子本人だった。
加害生徒達は修子の家に訪れ、謝罪をしていた。
それぞれに暴行や脅迫に対して謝り、修子の希望があれば今後はその通りにするというような内容だった。
特に──雨宮英里の両親はメガネの賠償を約束し、精神的な苦痛への賠償も込めて鼻の治療費をださせて欲しいと具体的に申し出ていた。
修子自身は誰とも直接は会わなかったが、その話を聞いて──"申し出を受けたい"と言ったのだ。
"許すのは難しいけれど、受け入れて自分も前に進みたい"──と。
そして修子は治療として、鼻を整形したいと希望した。
修子と雨宮英里・近藤アイナの件は大体の収束を見たが、彼女達は他の同級生や後輩にもいじめをしていたようで、2人は結局転校した。
その後の彼女達のことなど知ったことではない。
私や橋本爽子達バスケットボール部員、加々見舞達はその後は受験勉強に励んだ。
鼻の手術もした修子はとても出遅れたが、彼女には学校側が特別な措置をしてくれた。
A組からD組へのクラスに変わることが認められたのだ。
修子はA組ではいじめられ、それを嘲られたり傍観されたりする記憶しかなかった。スクールカウンセラーがクラスを変えることを提案し、学校に働きかけてくれたのだ。
D組には私や爽子や阿久津、健也もいた。舞はいじめのことで連絡してからずっと修子とやりとりをしていてくれたらしくて、すでに友達だった。
学校に再び来た時に修子の鼻は上向きではなく普通の綺麗な鼻になっていて、メガネはデザインがレンズ部分にフレームが無いものに変わっていた。全体的に明るい印象だ。
髪の毛もバッサリと切ってボブに変わっていて、同じくボブだった舞に
「その形すっごいイイ! 修子ちゃん似合ってるよー!」
と絶賛されていた。
私は何がいいのか よく分からなかった。
みんなで修子の勉強も応援した。それぞれに苦手教科を教え合った。
私達はそうして、全員が希望した高校に合格する。
卒業式のあと──
クラスの打ち上げでカラオケに行った。
帰り道は夜になった。
修子を──私は当然家まで送った。
2人で花壇に水をやっていた頃のようにとりとめのない話をした。
彼女の家の前まで行ったとき、修子は私に向き合って言った。
「ありがとう、夜岸くん。本当に……何もかも。
私、夜岸くんのおかげで凄く……凄く幸せになったよ」
メガネを通した彼女の瞳がキラキラと輝いていた。
「僕こそありがとう。本当に。──君に会えて良かった」
私達は触れるようなキスをした。
──そして、私は……
私は修子を抱き締めた。
それまでの 全てを 解き放って
彼女の愛を抱き締めた
それから 私達が会うことは 無かった────




