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恋を狩る夜に  作者: シロクマシロウ子


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15 獲物の行末

ー登場人物紹介ー


夜岸連やぎしれん・"恋心"を食事にする生き物。中学生3年D組。

やつやなぎ修子しゅうこ・連に片想い。A組。

 



 あの日、家に()いて私はとても子供っぽいことをした。──実際(じっさい)身体(からだ)だけは大人でも……まだ子供だったのだろう。


 私は父親に自慢(じまん)すると言う──実にくだらない真似(まね)をしてしまったのだ。




 父に 自分に恋人ができたこと、彼女は本当に私を愛してくれていることを話した。そして、その愛をまもなく食べる予定だと。自分も、もうすぐ愛の味を知ると教えた。


 父はいつもは私にはあまり感情(かんじょう)を出さない。だがその時だけは──瞳になんらかの感情が宿(やど)っているように感じた。闇ではなくて。


 向かい合ったソファで、彼はゆっくりと話し出した。


「年齢の数値(すうち)が低い(若い)うちに体感(たいかん)できるのは貴重(きちょう)なことだ。──おめでとう」


 (めずら)しく()めているのだと思った。私は多分笑っていた。


「一つだけ教える」


 彼は言った。


「私達を本当に愛する女達は、その愛を失うと(なや)むのだ。

 "何故(なぜ)あんなに愛していたのに、自分はその気持ちを(うしな)ってしまったのだろうか"……と」


 この人は何が言いたいのだろう?


「それでも(そば)にいれば彼女達は再び私達を愛する。そう しむけることも容易(ようい)だ。(ふたた)()らうことも。むしろ喰わずにはいられないだろうな。最高級の食べ物だし、我々に真に満足感をくれるのはそれしかない。

 食べても、彼女達はまた"何故あんなに愛していたのに、自分は再びその気持ちを失ってしまったのだろうか"と悩み自らを()めるだけだ。それも、こちら側は(いた)くもかゆくも無いこと。

 恋心や愛を食べているなんて──誰も気付きもしないんだ。

 我々の"感覚(かんかく)"も"能力(のうりょく)"も、人間の医学や科学では立証(りっしょう)出来(でき)ない。つまり私達はこの世界に(さば)かれることは無いだろう。

 だが1人の人間で()()()(かえ)していると……」



 彼は静かに私を見据(みす)えた。私はもう笑みが消えていただろう。



「その女性は(くる)っていく。頭がおかしくなったり、心が()むのさ。────愛を失う自らを責め続けて」



 しばし静寂(せいじゃく)があった──

 部屋には壁時計の音だけがしていて、私達はソファで向かい合っていた。

 もうすぐ夜の(やみ)(すべ)てを(つつ)む頃だった。



「彼女達は……(おろ)かだ。(もろ)くて弱くて無防備(むぼうび)で。それなのに全てを()し出す。……(かな)しい生き物だ」



 父は少し姿勢(しせい)を変え、目を()せた。



「お前がどう生きるかはお前の自由だ。()()のやり方は特に──誰も口出しは出来(でき)ない。しても、意味もないことだ」



 それでも、聞いてみたかった。この目の前の人に。



「父さんは……()()()()を繰り返し食べた? ()()()知っているんでしょう?」



 その人は再び私と目を合わせた。



「──そうだ。間違いなく……最高の食事だった。何度喰っても()きることもなかったから、手放(てばな)さなかった。だが ()()()()()来た──」




 私はどうするのだろう?



 八ツ柳修子(やつやなぎしゅうこ)確実(かくじつ)美味(うま)いに決まっている。


 ………………別に手放さなくても いい気もした。

 彼女達は結局(けっきょく)は"食料"なんだ。


 食べることは止められない。


 好きなものを喰えるだけ喰って何が悪い?


 あちらだって一緒にいることでの幸せだって(かなら)ずあるはずだ。



 私はいろいろと逡巡(しゅんじゅん)していた。父は──今思うと、それを見透(みす)かしていたのかもしれない。



 彼は その夜 最後の言葉を()げた。







「最高の食事だったよ。────お前の母親は」








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― 新着の感想 ―
そうだよな。 ゲームのスコアじゃない、心にある強い感情の起伏だ。 100あったものが急に1になったら、酷く困惑するし混乱するだろう。 それを繰り返せば心の均衡なんてあっさり崩れてしまうだろうなあ(・_…
 衝撃の秘密がここで明かされましたね。もし、父君の仰る通りであれば、夜岸氏と父君は、何と哀しい運命を背負っていることでしょうか。  修子ちゃんはこれからどうなるのでしょう、最終話が楽しみです。  ………
途中からそうかな?そうかな?とぼんやり思い始めましたが、うわーん、最後のシーンは悲しすぎます(。ノω\。)でもクライマックスに向けて盛り上がってきましたね!
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