12 恋ではない狩りを1
ー登場人物紹介ー
◆夜岸連・"恋心"を食事にする生き物。中学生3年D組。
◇八ツ柳修子・連に片想い。A組。
◾️橋本爽子・元女子バスケットボール部員。D組。
◾️加々見舞・連の2年生からのクラスメイト。D組。
●雨宮英里・元男子バスケットボール部マネージャー。A組。
●近藤アイナ・雨宮英里の友達。A組。
●今井景子・元女子バスケットボール部員。C組。
○伊東孝昌・元男子バスケットボール部員。3年。
○小塚良平・元男子バスケットボール部員。3年。
○大友健也・元男子バスケットボール部員。3年。
○森田勝・元男子バスケットボール部員。3年。
○阿久津仁・元男子バスケットボール部員。3年。
火曜日の朝だった──
修子が学校に来なくなって5日経っていた。
プランターの方の植物達がまだ外にあるので、私はジョウロに水を入れて水やりをした。ここ数日は朝1回の水やりにしていた。
中庭に人の気配がして、見ると──雨宮英里が立っていた。
「私もやろっかな。連くん、1人じゃ大変でしょう」
「ありがとう。凄く嬉しいよ」
私は英里に偽りの無い笑顔を向けて、本心を言った。
2人で水やりをする。早朝で、まだほとんど生徒は来ていなかった。
「もう1人の園芸部員、八ツ柳さん────すっかり学校に来ないものね」
英里の方から話をふってくれた。──助かる女だ。
「彼女は今までも来なくなる期間はあるタイプだったみたいだから……仕方ないのかもなぁ」
私は肩を落として声にも落胆を込めた。
「八ツ柳さんと毎日会っていたから、付き合おうかってなっていたんだよ。──けど、彼女には迷惑な話だったかもしれない。…………寂しいね」
すると後ろから、英里の声がした。
「連くんが寂しいなら……私じゃ駄目かな? 私と付き合うこと……考えてみてくれない?」
────私はゆっくりと……振り返った。
英里はジョウロを両手に持って、こちらをじっと見つめている。
「雨宮は今 伊東と付き合ってるんじゃないの? 喜んでいたよ、アイツ。部活動中はスタメンじゃないせいか全然相手にされなかったけれど、最近は声かけてくれるから告白してみて良かった──って」
「私はずっと連くんが好きだった。伊東とは別れたっていい。連くんが相手してくれないなと思っていたから、私も寂しかっただけなの」
そこで、不思議そうに聞いてみる。
「小塚や健也とも付き合っていたよね? あれもそうなの?」
彼女は大きくうなずいた。
「ちっとも好きじゃなかった。私が好きなのは連くんだけだよ。だからホラ、結局どっちとも長くは続かなかったもの」
「全然気づかなかったなぁ……。雨宮はモテるから。阿久津や森田にも告白されていただろう?」
英里は今度は首を左右に振る。
「阿久津も森田勝も私の好みじゃない。告白されても嬉しくもなんともなかった。私は連くんが良かったの」
その言葉を聞きながら、私は足元に空になったジョウロを置いていた。身体を起こして、腕を組んだ。
「だからって、みんなの気持ちを もてあそぶようなのは良くないんじゃないかな?」
ジョウロを置いたのは合図だった。元男子バスケットボール部の三年生メンバーが5人現れた。
そして、元女子バスケットボール部の今井景子と橋本爽子。それから加々見舞もいた。
「英里ちゃん、そんなふうに思っていたのかよ……」
現彼氏の伊東が、青ざめた顔で呟いた。
「伊東……。みんな……」
英里は呆然と立ち尽くす。
「別れる時には──僕には連じゃなくて、"健ヤンが好きになっちゃった"って言ってたけどなぁ。連のことそんなに一途思っていたっけ? 雨宮」
1人目の彼氏だった小塚が言った。
「ハッキリ言うと、オレの時には英里が先に言ったんだぞ。"私達付き合っちゃおうか"って。……なんでもかんでも積極的だったのはお前の方だったと思う。いつの間にかオレからいった感じになってないか、なんか」
2人目の元カレ 健也──健ヤンだ。
「英里に告白はしたけど……好きだったけど……なんて言うのかな? 僕は英里の方が僕に気があって、告白もOKしてもらえるとばっかりに思って──告白した。だから断られてビックリして……あの時落ちこんだよ。"思わせぶりすんなよ"って腹が立ったの覚えてる」
森田勝だった。
「オレは完全に片想いで──雨宮が好きだったよ。気が利くマネージャーで、可愛いくて……。凄く良い子なんだと思ってたから。……あの頃は」
阿久津だった。彼はそうして、今井景子と目を合わせた。
景子は口を開いた。
「私は今、阿久津と付き合ってる。私はずっと……ずっと阿久津が好きだったから。阿久津が英里を好きな頃から、私は彼を好きだった。──私はあんたが大嫌い、英里」
景子の言葉を聞いて、英里のジョウロを持つ手は震えた。
「何なの?……何なのよ、これ……」
そうして彼女は私に歪めた顔を向けた。
「なんでこんなことするの? 私に」
私は質問で返した。
「なんで八ツ柳さんのポニーテールを切ったの? 英里は?」
快晴の秋の日の始まりの朝だった。
校内には生徒達の姿が次々と増えていた──




