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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
## エピローグ さまざまな顔

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番外 プラタナスのカフェ ###店員視点

(承前) 

週末の午前。

プラタナスが茂るフランス租界のカフェは、まだ静かだった。

グラスを片付けていた私は、

ふと入口に視線を向けて、固まった。


(……ちょ、ちょっと待って)


入ってきた男女——

背、たっか。

顔、良っ。

オーラ、強っ。

雰囲気、絶対どっかの社長……?

いや、この威圧感、会議室じゃなくて法廷か株主総会の空気じゃない?


「いらっしゃいませ〜……」


(声、裏返ちゃった)


男性はほとんど喋らない。

でも“沈黙で支配してくる”感じ。

実在するんだ、こういう人。


女性のほうは優しい雰囲気で、

なんか花の匂いがしそうな人だった。


席についた二人は、控えめに話し、

控えめにコーヒーを飲み、

控えめに去ろうとしていた。


そして会計。

男性が、無言でカードを差し出した。


私は無意識に構えた。

「外資系ブラックカード」だとか

「高級アメックス」だとか

なんかピカピカしたやつだとか

そういうのを想定した。

だって見た目がそうなんだもん。


でも——

置かれたカードを見た瞬間、私は一瞬フリーズした。


(…………ん?)


色、地味。

デザイン、素朴。

キラキラゼロ。

むしろかなり使い込んでる。


(え??

この人、絶ッッッ対に大金持ちのオーラしてるのに……?なんで……?)


思わず二度見した。

本当に庶民カード。

え、限度額いくらのやつ?

年会費永久無料みたいな?


うそでしょ?


(……もしかして、めちゃくちゃ節約家?)

(……いや、偽名の人?地下の人?)

(いやいや、奥さんきれいすぎ……どういう……??)


完全に脳がバグる。

でも男性は無表情のまま、

受け取るときだけ軽く会釈をした。


紳士っぽい。

怖いけど。


女性のほうは「ありがとう」と笑ってくれた。

天使だった。


そして二人は静かに店を出ていった。

私はレジに残されたレシートをぼんやり見つめた。


「庶民カード……

あの威圧感で……庶民カード……」


頭が混乱して、

同僚に小声でつぶやいてしまった。


「……今の人、多分すごい人だよね?」

「え、庶民カードだったじゃん」

「逆にだよ!!!

“真のすごい人ほど庶民カードで隠す”って聞いたんだよ!!?」

「都市伝説じゃない……?」

「いや今見たの絶対そういうやつ!!」


その日の夜、SNSを見て私は叫んだ。


《龍騰グループ総裁・李昊天 会見まとめ》


(……あの無表情……

……あの顔……

……あの結婚指輪……

……え、今日、うちのカフェにいた?)


手が震えてスマホを落としそうになった。


「ちょっと待って……

たぶん“あの人”、絶対センチュリオン持ってる系の人だよね……?」


庶民カードで支払っていったけど!?!?!


(どういう生活……!?)


私はその日、

レジの棚にそっとそのレシートを隠しておいた。

記念にとは言わないが——

ただ——

この街に溶け込んだ“覇道の男”を、

確かに見た証拠として。

昊天さんは金持ちだって思われるのがイヤで銀行から押しつけられたセンチュリオンは引き出しに放置。そもそもお買い物はスーパー外商の劉さん経由、自分はコーヒー代くらいしか支払わない生活なので、学生時代からの銀聯デビットカードを愛用。(妻も昊明も気づいているがこだわりがありそうなので突っ込めない)

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