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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
## エピローグ さまざまな顔

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83/86

白湯の湯気

(承前)


――2015年の暮れ。


昊天がシンガポール出張から帰国した夜。

妻はリビングにいた。

顔色がわずかに悪い。


「疲れているのか」

「少し」


それ以上聞かなかった。

聞きすぎるのは自分らしくない気がする。


すると妻はふらりと立ち上がり、


「ごめんなさい。すごく眠いから先に寝ます」


そそくさと寝室に消えた。


(なんだ……?)


---


翌朝。


妻が少し遅く起きてきた。

それだけなのに、気になった。


コーヒーを淹れようとして、


「今日はいい」


と言われた。


(コーヒーが飲めないのか)


妻はカップに白湯をそそぎ、向かいに座った。

ふわりと湯気がたち、妻が軽く顔をしかめる。


「体調が悪いのか?」

「うん……」


沈黙。

医者に行くかと尋ねようとすると、妻がささやいた。


「……えっ」


思わず声がひっくり返る。


(待て)


(いつから)


(……あの橋梁視察のあとか)


(そうとしか)


(いや、今はそういうことじゃない)


(しかし)


(しかし、ってなんなんだ)


昊天はコーヒーカップを置いた。


妻はテーブルの向こうで、白湯のカップを両手で包んでいる。

視線を合わさない。


(かわいい)


(……そういうことじゃない)



---


昊明が酒を注ぎながら言った。


「にしても兄さん、タイミングよすぎじゃね」


昊天は答えなかった。


「知ってたの?」

「知らなかった」


即答だった。

昊明はにやにやしている。


「ほんとに?」

「……知らなかった」


今度は少し間があった。

昊明は笑うのをやめ、グラスを口に運んだ。


「まあ、そうだよな」


一拍。


「よかったじゃん」


昊天はグラスを傾けたまま、何も言わなかった。


(よかったな、か)


それだけは、確かだった。


>>(……あの橋梁視察のあとか)


いつでも大切なものに手をのばすことができず、逃げ回っていた昊天さん。高速建設現場からの視察から戻ってきちんと妻に謝ったようです。

その成果がばっちり出ましたね笑


ちなみに80話近くなって、昊天さんが初めて自分でコーヒーを入れているし、はじめての「……えっ」でもあります。



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