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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
## エピローグ さまざまな顔

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番外 市場の勝者

###アーロン視点/市場が息を呑む朝


2015年3月、シンガポール


香港の板が崩れていく。

売りが止まらない。


(――龍騰)


想定より、浅い。

ならば、ここは底ではない。


入口だ。


指が止まる。


起業から苦楽を共にしたパートナーたちの顔が一瞬よぎる。

彼らの意見も聞くべきか。


(――いや、それでは遅い)


機会は、合議を待たない。


アーロンは目を細めた。


(――五年)


問題は価格じゃない。

どこに価値が残るかだ。


あの男は、五年かけてそれを構築した。


ならば。


(――市場がそれに気づく前に、席を取る)


ファンドの資金は使えない。

「勘」だけでは資金の用途説明がつかない。


アーロンは、自分の資産を確認する。


(これで、どこまで買えるか)


ファンドのパートナーとしてではない。

個人だ。

一瞬、妻・セリーヌの顔が浮かんだ。


(――ここで踏み損ねたら、五年分が消える)


アーロンは受話器を取った。


「個人で入る」


短く言って切る。

相手は息を呑んだ。


説明は不要だ。時間がない。


視線を動かさず、端末を叩く。


画面の隅で、上海の映像が始まる。


記者会見。


見なくてもいい。


どうせ、同じ結論に至っている。

あの男が、何の策もなしにこの場に立つはずがない。


アーロンは、買いを入れた。


売りがぶつかる。

構わず重ねる。


一度ではない。

途切れず、押し上げる。


売りが、鈍る。


さらに入れる。


値段ではない。

ラインだ。


ここは、割らせない。


理由はひとつでいい。


(――そこに価値がある)


板の呼吸が変わる。


逃げた。


当然だ。


理解していない側は、最後まで残れない。


アーロンは手を止めた。


十分だ。


画面の向こうで、昊天が何かを話している。


聞かない。


聞く必要がない。


アーロンは、わずかに口元を緩めた。


端末を閉じる。


言葉は交わさない。


それでいい。


同じものを見ているなら、それで足りる。

アーロンって、シンガポール国立大(NUS)→海外院卒→政府系投資ファンド→独立という、かの国でのエリートの王道のような人という設定です。ただ、富豪の3代目である昊天さんみたいな「銀のさじ」の生まれではありません。

シンガポールのエリートは、いかに高給取りでもマンションのローンと、苛烈な競争社会を生き抜くための子どもの学費に追われているのが常でして、個人資産で龍騰株を買い支えると決めたとき、妻の顔が思い浮かぶアーロンは非常に常識的な人です。


「俺のマンションも娘のインターナショナルスクールも、全部お前の未来に賭けてやる―――」


そう思うとアーロン、常識的でいてなかなか鉄火肌ですね。

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