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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
## エピローグ さまざまな顔

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番外 欠けた月

(承前)




「……顔色、悪いですよ」




スクリーンをにらむ昊天の耳に、 唐突に、音が差し込む。




顔を上げる。




菲菲は画面をにらんだまま、こちらを見ていない。




―― 不自然な売買が続いている。


名義は割れているが、流れは一つだ。




「最終受益者」―― 。




そこに辿り着ければ。




断片は揃っている。だが、繋がらない。




「……問題ない」


「問題がある顔です」




間を置かない。


数秒だけ沈黙があって、彼女は端末を閉じた。




「戻ってください。一度」




命令ではない。 だが、残る理由もない。




---




自宅のドアを開ける。




静かだ、と思う。


いつも通りに整っている。


温度も、光も、位置も。




(————違う)




人の気配が消えた家は、よそよそしい。




ネクタイを外したとき、やけに音が残った。




シャワーの記憶は曖昧だ。




温度は合っていたはずだし、手順も間違えていない。


ただ、何も残っていない。




寝室のベッドに入る。




目を閉じる。


身体だけが先に沈んで、意識が取り残される。




窓。


カーテンは開いていた。


都市の光の向こうに、月がある。




欠けている。


中途半端な形で、止まっている。




ふいに、しずかな横顔が思い浮かんだ。





————連絡。




浮かんで、すぐに形を失う。




実家にいるはずだ。


状況は、説明していない。


だが、




(……必要がない)




この状態で接触する意味を、 考えるまでもない。


彼女にとっても、合理的ではない。




(……契約だ)




条件が崩れれば、それまでだ。


そこに——




思考を切る。




月は、動かない。


こちらも、動かない。


どれくらい経ったのかは分からない。




目を閉じる。




(……明日でいい)




そう決める。


決めただけで、何も変わらない。




(……眠れない)




静けさだけが、残る。




月が、みていた。

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