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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第四章 名の呪い

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第4章(5)ひび

ペントハウスの窓に、夜の光が格子を作る。

車の列は止まらない。

信号が変わり、また流れる。


昊天はグラスを傾け、氷の音を聞く。

その音だけが、時間を戻す。


李家の屋敷の廊下は、いつも同じ温度だった。

夏でも冬でも、冷たく、均一。


父が帰る日、屋敷は静止する。


使用人は気配を消す。

母はいつもより念入りに髪を結う。


「昊天。姿勢を正しなさい。」


怒ってはいない。

ただ、乱れは許されない。


父はいつも短く言った。


「勉強は」

「はい」


母は、いつも待っていた。


だが、父はほとんど帰らなかった。


---


葬儀の夜。


屋敷は異様に整っている。


昊天は母の部屋に入る。


鏡台の上の櫛。


髪が一本、絡んでいる。


整髪料の甘い匂いが、薄く残っている。


昊天がそれを手に取った瞬間、

背後から声。


「もう片付けろ」


父だった。

父は、部屋を確認するように見渡した。


指に髪が絡む。

昊天は、櫛を戻す。


翌日、部屋から母の匂いが消えた。


---


寝室の扉の向こうで、

かすかな音がする。


針が布を抜ける音。


止まる。


また、動く。


規則正しくはない。


少し、間がある。


窓に映る自分の顔。


あれからもう、30年近く経った。


寝室の扉は閉まっている。


(あの部屋のように、

何も残らない、ということだけは)


だが、


李家は、立ち止まることを許さない。

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