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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第3章 知夏編

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第3章番外 異邦人

(承前)


「昊天、昼は……」


シンガポール。アーロンのオフィスでの打ち合わせ後。


(……って、昊天は昼は食べない主義なんだっけ)


口にして、若干気まずさがただよう。

昊天とこうして仕事をするようになって数年たつが、毎度ランチの誘いを断られているのだ。


(俺もいい加減学習しない男だな)


アーロンは少し後悔した。


「行こう」

「え?」


虚を突かれ、目を上げると昊天がじっとこちらを見ている。

アーロンはあわててテーブルの上のスマホをつかみ、


「ああ、すまない。ではシンガポールらしいランチといこうか」


---


オフィス近くのフードコート。


昼下がりの熱気と、油の匂いが混じる。

アーロンは迷いなくひとつの屋台に向かった。

シンガポール名物、海南式チキンライスの人気店だ。

昊天はその後ろに続きながら、足を止めた。


「……システムがわからない」


振り返ったアーロンが、一瞬だけ目を丸くした。


「屋台ごとに別々に頼む。俺が買ってくる、座ってろ」


「……ああ」


昊天は言われた通り、プラスチックの椅子に腰を下ろした。

するとすぐに、エプロンを身につけたおばちゃんがやって来た。


「drink?Teh?Kopi?Ice or hot?」

(飲み物は?紅茶?コーヒー?アイス?ホット?)


昊天は一瞬固まった。


「……」


「Teh-O?Milo?What you want lah」

(ストレートティー?ミロ?で、あんた何にするの)


「…………コーヒー」


「Kopi?Kopi-O?Kopi-C?Ice?Hot?Siu dai?」

(コーヒー?ブラック?ミルク?アイス?ホット?甘さひかえめ?)


「………………」


列の途中でアーロンが振り返ると、昊天が無表情のまま完全に詰められていた。

周りのサラリーマンたちの注目の的だ。


アーロンは列を抜けて戻ってきた。


「Kopi-O peng」

(ブラックのアイスコーヒー)


おばちゃんはさっとメモして去っていった。


昊天は無言だった。

一拍置いて、


「……助かった」


アーロンは笑いをこらえながら列に戻った。



実は『市場が息を呑む朝』の回で、噂となっていた正体不明のホワイトナイトこそが彼、アーロンでした。

「お前の未来ロジックは、俺がこの価格で買い取ってやる」とばかりに、友情を巨額の買い注文という、世界で最も重く誠実な「数字」に変えて叩きつけたアーロン。シンガポールのホーカーでのコピ(コーヒー)の注文から、数千億円規模のマーケット・サポートまで、これぞまさに昊天さんが唯一「戦友」と呼べる男です。

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