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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第3章 知夏編

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第3章(9)帰りの車内

夜の上海を走る車内は、静かだった。

アーロン・チャンは窓の外を流れる夜景をぼんやりと眺めながら、

さきほどのペントハウスでの食卓を反芻する。


龍騰グループの主力事業——建設、不動産、港湾物流、エネルギー。

政府との結びつきを強め、巨大な事業体を築いてきた。

李家の屋敷には以前、ファンドの共同パートナーとともに招かれたことがある。

だが、ペントハウス——昊天が妻と暮らす自宅に招かれるのは初めてのことだった。


1年ほど前に結婚し、二人で別宅に移ったと聞いていた。

出迎えた夫人の表情はほんの少し硬く、来客に慣れているとは言えなかった。

あの寡黙な、隠密行動を好む男の奥にある、生活の守り方——

そういう男の“隠れ家”に案内されたことは、決して悪い気分ではなかった。


---


思考は自然に、過去にさかのぼる。

2010年、最初に出会った日——


アーロンが友人らと立ち上げたホリゾン・コア・インフラストラクチャー・ファンドのシンガポールオフィスに、昊天がやってきた。

横文字と金勘定が飛び交う業界で、彼は「港湾のデジタル化」「滞留解消による運用効率化」「設備保全」と、現実味のある話だけをしていた。

派手な言葉は一切なく、しかし物事の構造を見抜いていた。

創業家出身の若い総裁——この人物は面白い。

アーロンはその直感を確信に変えた。


2012年——「若様の道楽」と揶揄されていたネクサス構想を、アーロンは初めて真面目に聞いた。

外部者として15%の資本を入れる時、昊天は「支配される」ことを嫌がらなかった。

むしろ、透明性を選んだのだ。


2013年——龍騰グループが傘下に置く港湾の一部区画で行われたPoC(概念実証)の最中。

局所停止の危機が起きたとき、昊天は即座に指示した。

「止めるな、守れ」。

彼は現実を押さえ、システムを守った。

アーロンはそこに“覇道の本質”を見た。

それは、静かに、しかし確実に支配する力。


昊天とは、その後何度も上海やシンガポールで議論を交わし、自宅に招いたこともある。

昊天は礼儀正しく、一線は越えなかった。

だが今日、初めて“逆”が起きた。

彼のペントハウス——城に入ることが許された。


---


アーロンは微かに笑みを浮かべた。

この先、彼と共にいれば、面白いことが起きる——そう確信していた。

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