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ヨンヂュウロク、もしくは、狂宴は砕け散るように終わりを迎え、残された野良犬ドモだけが路地裏で吠える

 私たちは通りまで走るとイエロー・キャブを捕まえて乗り、ダインの教会のあるイルダメイダ地区のカメリナ通りまで逃げた、スティーブンスはこの失敗を大きな損失だと考えていたし、私もかなりと落ち込んでいた、ダインに至っては半ばパニック状態で神に祈りを捧げ続けていた、教会へ戻ると三人とも各々が口を利くこともなく眠りに着いた、私たちは単純に疲れていたし、先の失敗に関して考えたくもない状態だった、そう、ここに来て私たちは大きな失態を犯したのだった。


 しかし、翌朝になって嫌でも現実を直視しなくてはならない状態へと我々は叩き落とされることとなった、なんと翌日の朝刊に強盗殺人の事件として大々的に報じられていたのだ、スティーブンスが突き飛ばした女の僧侶は打ち所が悪く死んでしまったと書いてあるではないか、しかも、その死んだ女の僧侶はかのマリオン・“セヴン”・メイヤーだというのだ、犯人は未だに逃走中とありまだ我々が犯人と定まった訳ではないが、見つかるのも時間の問題だろう、何と言っても勇者一行に加わる筈だった僧侶を間違ったとしても殺害してしまったのだ、カウレス中の警察官が血眼になって我々を探し出そうとするだろう、我々はもはや収集のつかない失敗を犯したのである、私はこの記事の載った朝刊を握り締めてスティーブンスとダインの眠る教会の二階の部屋へと駆け上がった、そして、声を張り上げて二人を起こした。


「おい、起きろ、スティーブンス、ダイン、起きるんだ、ヤバい事になったぞ!」


 私はそう言ってから新聞の記事を見せた、スティーブンスは深いため息をついてソファーに倒れ込み、ダインはその場で泣き崩れた、倒れ込み泣き崩れたいのは私も同じだったが、それでも私は尚も声を張り上げて言った。


「スティーブンス、ダイン、私たちは逃げるしかない」


 ソファーに倒れ込んだままスティーブンスは言う。


「ジョニサン、逃げると言っても何処へ逃げるつもりだ?混取締(マトリ)の次はカウレスの警察(サツ)どもから逃げ回るのか?」


「そうだ、逃げるしかないんだ、今回の事件は流石のスピアマン家の権力でも揉み消せないだろう」


 ダインはただただめそめそと祈りを捧げているだけである。


光罰(オルラペルラ)だ…あまりにも不道徳な生き方をした我々についに(ペルラ)が…、そもそもスティーブンス、あなたが聖水を盗もうだなんて言わなければ…あぁ、光教神(オーラ・レイ)光教神(オーラ・レイ)…」


「黙れ!」


 ダインがあまりにも女々しい事を言い始めたのでスティーブンスは声を荒げた、確かにスティーブンスのせいではある、犯行の首謀者は彼で、尚且つマリオン・“セヴン”・メイヤーを誤って殺害したのも彼だ、しかし、今はそんなことで揉めている場合ではないのだ、混頓会場電撃戦(ボール・ルーム・ブリッツ)は開催不可能となり、我々の伝承者(メスマー)としての夢は完全に潰えたのだ、何よりも今後の身の振り方を決めなくてはならなくなったのだ。


「クソっ!解散だ、三人とも別行動を取るんだ、俺は金と残りの“セイレン”を持ってリトルベルのアイリーンの所へと逃げる、ジョニサン、お前はどうするんだ?」


 スティーブンスは焦りを隠せない様子で私にそう言った、しかし、私にその焦燥感が感染することはなかった、私は冷静になっていた、元々がこの世界の住人ではないのだ、戸籍や住民票すら無い私を警察が捕まえることができるのだろうかとまで考えていた、だから私は途端に冷静な口調になり「そうだな、どこか地方の街にでも行ってギルドで細々と稼いで暮らそうかな」等とどこか無頓着な様子で言った、そして、尚且つ私はスティーブンスに助言までして見せた。


「スティーブンス、カウレスから逃げるのなら明日の方が良い、勇者一行の来訪のパレードに紛れて逃げた方が捕まりにくい筈だ」


 その助言に対してスティーブンスは「それもそうだな、そうしよう」と言って従ってくれた、しかし、問題はダインである、この気弱な混頓中毒者(ボール・ジャンキー)の男がたった一人で上手く逃げ切れるとは思えないのだ、私とスティーブンスはこの男が自首をしたりして私たちの今までの悪行を警察にバラすのではないかという心配をしていた、何よりダイン自身が今はかなり不安定な精神状態で危ういのだ、私はダインを慰めながら少し強めの“スクリュー・アップ”を施してやった、しばらくするとこの弱気な男も最低限は気丈になり、それでもぼそぼそと呟くように「自分の生まれたマスパ地方にある漁村に帰って光教(オルラレイダ)の僧侶として隠れるように生きていこうと思います…」とだけ言った、幾分と不安要素であるダインだが、カウレスに留まって居られるよりマシだと考えて、私とスティーブンスは納得した、そして、私たちは明日の昼まで外へと一歩も出ない事を決意した、ダインはいつも通り教会の仕事に従事させたのだった。


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