サンヂュウク、もしくは、上流に流れていても腐敗する澱みのような集まりドモ
ジュディ・マスビートは良いカモだった、態々ダインが骨を折らずとも次々と客を引き連れて来た、ジュディの友人のマリー・ホワイトもその一人だった、しかし、彼女の場合は単なる好奇心から混頓の世界へと足を踏み入れたのだ、マリーは上流階級特有の世間知らずな娘で騙す価値も意味も無いような馬鹿が着飾っただけの若さだけが取り柄の女だった、スティーブンスに一度混頓を施されただけで彼女はスティーブンスに執着するようになった、スティーブンスにすればそれはビジネスの純度を妨げる要素にしか過ぎなかったが、マリーはそれ以上に愚かだった、スティーブンスの施す混頓の為なら何だってやった、スティーブンスに私やダインの前で裸になれと言われれば服を脱いで見るに堪えない卑猥な事を平気でしてみせた、マリーは短期間で完全な混頓中毒者になっていた。
また、マリーはスティーブンスと肉体関係を持ちたがったがスティーブンスの心の中には今でもリトルベルに置き去りにしたアイリーンがいた、それを想うと私までが悲しくもなった、結局マリーはダインとセックスをしていた、混頓中毒者同士の行き場の無いようなセックスは空虚で最低だった、ジュディはその点で潔癖だった、彼女は純粋に私の“ラヴ・フラッシュ・フィーバー”の虜になった、一度だけ“ウォーター・パズル”を試したが、何を思ったのか素面になった様に一晩中教会の掃除をし続けて、その合間にオルガンで聴くに耐えないデタラメなジャズを歌いまくったりした、朝日を浴びるなり倒れ込み、世話をする方が大変な目にあった。
ジーン・レイクスもジュディが連れてきた客だった、THE CURTAINの、律厳社の女で格闘家だった、その実力は折り紙付きで勇者一行の選抜員の一人にまでなったが怪我が原因で実力を発揮できないまま燻っていた、私は彼女に“スクリュー・アップ”や“獣の嵐”を施した、結果として彼女は中毒者にはならかった、ジーンは私の施した混頓を踏み台にし、より高みへと上り詰めた女だった、しかし、彼女のキャリアが高みに上れば上るほどに混頓を使用した影が彼女を捕えた、その感情を私やスティーブンスは見逃さなかった、彼女に更なる客を呼び寄せるように脅しをかけたのだ、ジーンは肉体的には強かったが精神的には弱く誰よりも混頓中毒者になりやすい質だった、その気になればいつでも中毒者にすることができた、だからこそ彼女の気質を利用した、当人まで混頓中毒者でもある伝承者にとって、素面で有能な従者がいることは実に心強いことでもあるのだ、こうすることでジュディは天法典録団の客を呼び寄せ、ジーンは律厳社の客を呼び寄せた、私とスティーブンスのカウレスにおけるビジネスはどうにか基盤が整ったように思えた、しかし、このままではまたいつか混取締の餌食になるのか分からない状況でもある、圧倒的な権力、せめてこのカウレスの街だけででも有効な権力を持つ上流階級の客が必要なのである、それにはTHE CURTAINの中でも中枢にあるファミリーの一角を狙わなくてはいけなかった。
THE CURTAINの中でも秀でた三つの名家を三聡家と呼んでおり、それぞれ天法典録団の名家ミルズ家、同じく天法典録団の名家でスピアマン家、そして、律厳社の名家のゴルダム家の三つが存在している、同じTHE CURTAINの所属である三聡家ではあるが決して仲が良い訳ではない、ミルズ家とスピアマン家は同じ天法典録団同士でいがみ合いをしているし、律厳社のゴルダム家は三聡家の実権を天法典録団の二家に奪われないようにとしているのが実態だ、この一角の人間を一人でも客として迎え入れることができればその権力の元で私とスティーブンスはビジネスがしやすくなるのだ、どうにかしなくてはいけないと考えていた時にダインの懺悔室に一人の男が訪れた、名前をバーナード・“スピアマン”といった、顔立ちだけなら美しい青年だった、しかし、この男は混頓中毒者ではなかった、では何故ダインの懺悔室を訪れたのか、それはバーナード・“スピアマン”は実の妹であるエレンと肉体関係にあるというのだ、私とスティーブンスはこの告白に狂喜した、バーナード・“スピアマン”と言えばスピアマン家の長男だ、それが毎夜実の妹と通じているとなれば、これ程の脅しのネタはないと踏んだのだ、私はダインに言ってバーナードを教会の二階へと来させるようにした、チャンスが巡って来たのである。




