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混頓中毒者異世界無残 ボール・ルーム・ブリッツ  作者: 黒い犬


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33/42

サンヂュウサン、もしくは、スラムに集いし人々の群れは色とりどりになりけり

 その夜のスティーブンスは上機嫌も上機嫌だった、私に対しては「合格も合格、大合格だよ!」とまで言った、マークライトはウインター・サンダーボルトとの試合に敗北していたし、その死も別段悲しむ程のものではなかった、所詮はスラムに巣食う混頓中毒者(ボール・ジャンキー)の死にしか過ぎなかった、その死体も行政を名乗る連中が現れて後日セルミーヤ地区のスラムの外れにある共同墓地に放り込まれていた、警察沙汰にすらならなかったのだ。


 ウインター・サンダーボルトは今回の試合をもって「ソリッド・フィスト」から足を洗った、あの狂乱の地下室の試合会場の中で唯一まともだったのは彼だけだったのかもしれない、セルミーヤ地区のスラムにせよ、隣接したラニャール地区の北部にせよ正しく治外法権の場所であった、だからこそ私は私の在り方を明確に提示しなくてはここ、スラムでは生きていけないと考えた、スティーブンスの伝承者(メスマー)としてのやり方を単純に真似ても意味がないとも考えた、そもそも、スティーブンスと私は信仰する宗教が違い、取り扱う混頓(ボール)も違う、スティーブンスに至ってはオリジナルの混頓(ボール)を発明しているというのだから根底から私とは資質のようなものが違うとも言える、やはりスティーブンスはその点からして天才なのだろう。


 スティーブンスの“職場”であるラニャール地区の北部のスラムにある木造のアパートメントの二階の部屋には毎日様々な連中が集まった、その大半がスティーブンスの施す混頓(ボール)目当ての中毒者(ジャンキー)であった、スティーブンスは私を聖竜信仰教(ドラゴレイダ)伝承者(メスマー)であることその連中に紹介してくれた、ニッキー・スペイシーは光教(オルラレイダ)の若い女で魔法は一切使えない混頓中毒者(ボール・ジャンキー)だった、そのルックスは良くも悪くもない単なる淫売で誰とでも寝る女だった、しかし、私はこの女とは関係を持たなかった、きっと一度でもこの女と関係を持てば私はセックス一つで彼女に混頓(ボール)を施す人間として漬け込まれてしまうだろうと考えたからだ、私は自信のビジネスを潔癖に保つべく、ニッキーからは金を厳しく徴収していし、彼女の誘惑も退けていた、それでも彼女は私の“インスタント・ラブ”に夢中になっていた。


 「ソリッド・フィスト」の会場の観客の中で知り合ったピート・ブレイリーはエスティス大陸出身の男で、金来徒道(コンライ・ロード)を信仰していた、魔法は使えない男で普段は肉体労働を営んでいる、スティーブンスの施す“チキン・ゾンビーズ”がお気に入りで、支払も滞りなく済ませる男で所謂“上客”というやつだった、私は彼によく“スクリュー・アップ”を施した、そのピートが連れてきたのがアーサーだった、まだ混頓(ボール)を知ってから日が浅い青年で口癖が「ヤバいのをくれ」だった、時折アパートメントの面々からおちょくられたりもしたが、その分だけ可愛がられたりもした、アーサーは混頓中毒者(ボール・ジャンキー)ではなかった、彼の目的はニッキーとのセックスにあった、彼女で童貞を捨ててからすっかりと彼女の身体の虜にされていた、また、アーサーも光教(オルラレイダ)だったが魔法は一切使えなかった、光教(オルラレイダ)はその信者数も多いがその分だけ魔法が使えない信者も多い宗教だった、また、魔法を使うことはできない混頓中毒者(ボール・ジャンキー)も少なくはなかった、だからスティーブンスや私のような伝承者(メスマー)が必要となるのだ。


 ニッキーにせよピートにせよ、そして、アーサーにせよ気の悪い人間ではなかった、特にピートはエスティス大陸からの出稼ぎで根っからのスラムの人間でもなければ混頓中毒者(ボール・ジャンキー)でもなかった、スティーブンスもアパートメントに来る人間の何人かには尊重ある態度を取っていた、私とスティーブンスの伝承者(メスマー)としてのやり方の共通点はそう言った部分にあったし、互いにビジネスには潔癖だった。


 問題を起こす客もいた、アルバート・スペンサーはとにかく様々な混頓(ボール)を試さずにはいられない中毒者(ジャンキー)で、一日で素面の時間が殆ど無いような廃人寸前の男だった、ヴィヴィアン・フィールドは他の客と寝て混頓(ボール)を横取りする癖があったのでアーサーだけには近寄らないように忠告していた。


ともあれ、私の伝承者(メスマー)としての生活は数ヶ月で安定を見せ始めていた、確かに厄介な客がトラブルを起こして混取締(マトリ)に目をつけられたりもしたが、それでもどうにか収めて生活を営んでいたのだ、私もスティーブンスもそれらの日々に満足していた、それは互いに本心でもあった。


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