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第84話「都市の現場へ、そして“城”を建てる」

村の復興がひと段落し、匠はそろそろ帰還の準備を進めようとしていた。


そんな折、一台の馬車が村を訪れる。護衛を連れた高官風の男が、村長とともに匠のもとを訪れた。


「貴殿が、“現場を一日でまとめ上げた男”か」


「……まぁ、そんな感じです」


匠が苦笑しながら答えると、男は一礼して名を告げた。


「私はミスレーン王国・都市管理局の者だ。首都レクゼルより、あなたをお迎えに上がった」


「……首都?」


「はい。現在、城郭の再建工事が進んでおりますが、施工が大幅に遅れており……。ぜひあなたの“知識”をお借りしたく」


エルが、こっそりスマホから顔を出す。


《神原様、これは絶好の機会です。村から街へ、そして大規模建築へ――》


「……まさか、異世界で“城の現場監督”やることになるとはな」


匠は大きく息を吐いた。


都市レクゼルは、村とは比べものにならない規模だった。


石畳の通りに多くの人が行き交い、複数階建ての建物が並び、遠くには天を突くような城の塔が見える。


(まるでヨーロッパの古都……だけど、現場を見ると……)


建築現場では、図面も段取りも曖昧なまま、労働者たちが勘と経験で資材を積み上げていた。


足場は不安定、壁材の加工もバラバラ、職人たちは互いに怒鳴り合っている。


「おい! この石材、寸法合ってねぇぞ!」


「昨日の測り方と違うだろ!」


現代の現場監督としての血が騒ぐ。


(完全に管理が崩壊してる……でも、素材は悪くない)


《神原様……この地で、“あなたの現場”を創るのです》


「よし……まずは整理整頓からだ」


その日、現場に激震が走った。


「全体朝礼をやる? ……“始業前に打ち合わせ”?」


「“工程表”? 何だその神の書は!」


「資材は“同じサイズに揃える”? ……どうやって?」


戸惑いと混乱の中、それでも少しずつ変化が起きていた。


誰もが“言われた通りに動いた結果”建物の一部がピタリと組み上がり、それを目の当たりにした。


「……本当に、図の通りに立った……!」


「何だこの快感……!」


夜。城下町の簡素な宿舎で、匠とエルは静かに座っていた。


《神原様……この街の人々は、“型”を知りません。ですが、彼らには感覚と情熱があります》


「つまり、技術と美意識か。……いい現場になりそうだな」


匠はにやりと笑い、作業着の袖をまくった。



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