第63話「打設開始! コンクリートに想いを流し込め」
「神原、今日の午前中でポンプ据え付け終わらせとけよ。昼から打設スタートだ」
朝、丸山課長がコーヒー片手に現場を覗いてくる。
「はい、ルート確認済みです。車両も8時に入れて、スランプ検査はその場で対応します」
※コンクリート打設とは、生コンを型枠に流し込み、建物の構造体を形づくる作業。
特に“基礎”の打設は、建物全体を支える重要な第一歩となる。
生コンは時間との戦いであり、打設時の気温や湿度、打設スピード、締固めなど、無数の要素が品質に影響する。
ポンプ車のホースが構内を走り、ベース筋の上にしっかりと養生が敷かれていく。
「神原さん、スランプ値OKっす。温度も25度、合格範囲内」
「よし、じゃあ打設開始! 高槻、バイブレーターの配置、気をつけろよ」
「了解っす!」
コンクリートがホースから勢いよく流れ出し、型枠の中に広がっていく。
すぐ横では、職人たちがバイブレーターで気泡を抜き、左官がトンボで表面を整えていく。
「エル、風魔法で微調整できるか? 空気の流れで打設ムラを防ぎたい」
《“微風流制御”を使用します。ホース先端の風の抵抗を均一化し、流れの暴れを抑えます》
匠が手をかざすと、ホースの動きが驚くほど滑らかになった。
「……魔法と技術、共存できてるな」
午後、打設はスムーズに進み、最終チェックに入る。
「高槻、ゲージ下がってないか確認!」
「OK、レベル合ってます! 流し込みも均等です!」
「いいぞ、ラスト1スパン! みんな集中!」
現場の緊張感がピークを迎える中、職人たちの手が止まることはなかった。
そして――夕方、最後の一滴まで打設が完了した。
「お疲れさまでしたー!」
職人の声が響き、打設終了の余韻が現場を包む。
その日の帰り道。
匠は、打設が終わったばかりの基礎スラブを見上げる。
「これが、建物の“心臓”になるんだよな……」
《あなたの“想い”が、このコンクリートにも宿っているはずです》
「エル……たぶんだけどな」
匠はそっと笑った。
「この現場、俺の“気持ち”が流れ込んでる気がするよ」




