第62話「火花の先に、鉄筋がつながる」
「神原、今日から杭頭の補強筋な。立ち上がりまでいっきにいけるように、段取り組んどけよ」
朝、丸山課長のひと声で現場が動き出す。
「はい、杭芯のチェックは昨日済ませてます。溶接屋さんにも朝から入ってもらってます」
※杭頭補強筋とは、地中の杭と基礎を一体化させるための鉄筋。
杭の上端(杭頭)から基礎に向けて、鉄筋が立ち上がることで、荷重を杭に伝達する。
その接合は極めて重要で、多くの場合“溶接”で確実に固定される。施工精度と安全性が要求される重要工程のひとつ。
溶接屋の親方・高山が、分厚い面をかぶって溶接準備を進めていた。
「D32を180ミリピッチ。定着長は600、補強帯筋も入れてある。問題ねぇな」
「ありがとうございます。火花飛びそうなんで、養生は広めに取っておきます」
匠が話していると、後ろから高槻が声をかけてきた。
「神原さん、南面の2本、仮止めしたけど傾いてます。レベル差が出るかも」
「マジか。……エル、これ“固定補助”とかできない?」
《“磁力フィールド”による一時保持が可能です。鉄筋を軽く引き寄せ、垂直をキープします》
「じゃあ南面の杭に展開。仮止めの位置、合わせるぞ」
匠がそっと手をかざすと、わずかな磁力のような風が流れ、鉄筋が垂直に整った。
「助かりました。これでキレイに収まります」
溶接作業が始まると、現場は一気に“火花の戦場”に変わる。
バチッ――!
鋼同士の接合部から火花が飛び、作業員の手が次々と杭頭の鉄筋を結んでいく。
「火花、飛ばしてると現場が生きてるって感じしますね」
高槻が言った。
「そうだな。音も、光も、匂いも、全部が“作ってる証”だ」
匠の目には、連なる鉄筋が“建物の骨”として形になっていく過程が見えていた。
作業を終えて、事務所へ戻る夕暮れ。
匠は図面と溶接記録を見つめながら、そっとつぶやいた。
「杭と基礎がつながった。これで、地中からの力が柱に伝わっていく」
《あなたの“支えたい”という想いが、鉄を結びましたね》
「……エル、魔法ってのは、結局“想い”に反応してるのかもな」
《それが、この世界の“仕組み”なのかもしれません》




