第59話「地業工事と、砕石の誓い」
「神原、今日から地業な。砕石敷いて、捨てコンまで段取りしとけよ」
丸山課長のいつもの“朝ひと言”で、現場が始まる。
「了解です。午後から雨予報なんで、前半勝負ですね」
※地業工事とは、基礎を支える“地盤づくり”の工程。
掘削後の地面に砕石を敷き詰め、転圧して密度を上げ、建物の荷重に耐えられるようにする。
その後、捨てコンクリート(捨てコン)を打設して、基礎の正確な位置を出す“墨出し”準備を整える。
「砕石2号、2立米追加。西面はまだ敷いてないから、先回しで」
「神原さーん、トン袋、段差で横滑りしてきてます!」
「ストップ! 一回、整地ライン戻すぞ!」
砕石敷きは、思った以上に不安定だった。
地盤に微妙な凹凸があり、転圧機械も跳ねてしまう。
「……エル、“均し補助”出せるか?」
《はい。“地盤レベル補正”魔法を半自動で展開可能です。±5ミリ以内で整えます》
匠はスコップで目安となる中心を打ち、魔力を注ぎ込む。
すると――
「おい、これ見ろ。敷いた砕石が勝手に平らになってくぞ……!」
「まじかよ……振動ローラーいらねーんじゃね?」
「いや、それはそれでちゃんとやろう。あくまで“補助”だからな」
匠はあくまで、現場の“正攻法”を外さない。
砕石敷きが完了した午後、ポンプ車と生コン車が現場に到着。
「捨てコンは厚さ50ミリ。レベル出てるから、ライン沿って打設」
「神原、雨降ってくるぞ」
「エル、“表面保護”いけるか?」
《短時間の撥水膜を展開可能です。ただし、強い雨では効果は限定的》
匠はすぐさま保護魔法を展開し、コンクリ表面に薄膜を張った。
その間に作業員が急ピッチで仕上げる。
「……これで、明日から“基礎の正確な位置出し”に入れるな」
現場が静まり返った夕暮れ。
匠は、整った砕石層と捨てコン面を見つめながら、つぶやいた。
「建物ってのは、ここから“輪郭”が現れるんだ。魂を込めて、線を引く準備が整った」
《あなたの魔法と技術が、“建物の始まり”を支えました》
「ようし、いよいよ次は……墨出しから鉄筋だな。魔法の使い方も、もう一段階上げてくぞ」




