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第12話「ふたりの現場魔法」

朝礼直前。神原はヘルメットを手に、空を見上げた。


「今日も、ひと仕事あるな」


高槻が資料を片手に寄ってきた。

「搬入口、今日からB面に切り替わります。段取り、確認済みです」


「ありがとな。じゃあ、朝礼後に一緒に巡回しよう」


「了解っす、バディ」


「やめろ、その呼び方は照れる」


二人の間に流れる空気は、昨日までと明らかに違っていた。



――現場では、鉄筋工・設備屋・型枠大工、それぞれが別の工区で作業をしている。

現場監督は、それぞれの進捗と安全を調整しながら、全体を円滑に回す“司令塔”だ。


その中でも、神原と高槻は「現場の流れを読み、噛み合わない歯車を調整する」ことに長けていた。



「設備屋の搬入、午後便にずれたって。ユニックの空き時間も変わる」


「……なら、鉄筋工の作業を先に移動させる。B面に余裕あるし」


「了解。じゃあ俺、図面更新して各職に回してきます」


高槻は迷いなく動く。神原はスマホに小声でつぶやいた。


「エル、軽く風を回してくれ。南面、湿気がこもってる」


《了解しました。風属性、微弱操作……実行》


足場の隙間を風が抜け、作業員がふと顔を上げる。

「お、なんか空気が通ったな」


神原と高槻は無言のまま、ふっと目を合わせた。



昼前、トラブル発生。


「神原さん! 型枠の一部、間配りミスってます! このままだと打設まで間に合いません」


「現場で修正いけるか?」


「職人は対応可って言ってます。でも時間が……」


神原は少しだけ息を吸い、スマホに話しかけた。


「エル、バフを使う。集中力強化と動作効率上昇、半径10メートル範囲」


《了解。バフ系魔法、指定範囲にて発動》


「高槻、型枠屋の応援出せるか?」


「あと一班、詰所に控えてます! 行かせます!」


魔法と段取りのコンボ。1時間の遅れが30分で解消された。



夕方、現場が一段落すると、高槻がぽつりとこぼす。


「……不思議っすね。なんか今日は、全部が“噛み合ってた”感じです」


「おまえが動いてくれてるからだろ」


「いや、神原さんの魔法と合わせて、現場の歯車が……全部ひとつのエンジンになった気がしました」


神原は、空を見上げた。


「魔法も道具も、使い方次第だな。信じられる相棒がいるなら、なおさらだ」


エルが静かに微笑んだ気がした。


《神原様。これが、“現場魔法”の本領かもしれませんね》

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