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忘れたく無い記憶  作者: 柊海音


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第六章 友希の職業

伊太郎「ありがとう、本当に今日は感謝しか無いよ君達に会えて良かった」

友希「私達も感謝しています。また今度伺いますね」

ふたば「その時はよろしくお願いします。」

剛角神社の神主、登坂伊太郎の運転する車に乗り込んだ2人は、阿佐田鉄工所前で下車

伊太郎にお辞儀をし

2人は向かいの本宅のインターホンを押した

(ピンポーン)

扶美子「おかえりなさい!良かった…もう来てくれ無いかと思っていたの連絡先も頂いて無かったから落ち着か無かった」

ふたば「ごめんなさい。連絡先聞いておくべきでしたね。私達夢中になってお手伝いしていたものでしたから…奥さまどうぞ、こちら先程神主さんから卵を頂いたので」

扶美子「あら、卵!ありがとう!今夜はすき焼きも用意してたのよ。ほら、中に入って、お腹空いたでしょ食べましょ食べましょ」

2人はダイニングへ案内される

テーブルにある光景に2人は思わず声が出た

ふたば「うわぁ凄い」

友希「ご馳走だぁ」

テーブルの中央には、すき焼き、そして席に1人ずつ天ぷらの盛合せとお刺身とサラダ。茶わん蒸しもある。

ふたば「何だか料亭に来てる感じ」

扶美子「さぁ、頂きましょ、卵もね」

「頂きまーす」

暫く食事タイムが続く…

扶美子「ご飯沢山あるから食べてね」

2人「はーい」

友希「どれも最高に美味しかったです」

ふたば「うん、最高でした」

扶美子「良かった〜、そうそう、自己紹介しましょう

名前も判らないのはどうかと思うでしょ。ふたばちゃんとゆきちゃんね。私は扶美子ふみこです。よろしくね。」

ふたば「私は七瀬ふたばです、看護師をしています。兄弟は2人いて弟と妹です。」

友希「私は八潮友希です。ホテルのフロントマンをしています。兄弟は兄がいます。」

扶美子「看護師さんとホテルのフロントマンさん。とても良い職業ですね。私は無職とは言ってたけれど、週3日日市内のお弁当屋さんでパートをしているの。1人切りで居るのは辛いしね。そして帰って来ると1人でしょう。食事なんて喉も通ら無かったから簡単に済ませちゃって…冷蔵庫なんて殆ど空だった…」

ふたば「ではお休みの時はお家でのんびりとなんですか?」

扶美子「そんな日もあるけれど、幸いな事にご近所さんが良くしてくれて食事に誘ってくれたり、たまに一緒に旅行へ連れて行ってくれたりしてくれるの。それが生きがいなんです」

ふたば「そうなんですね。心置ける場所があって安心しました。では週末は休みなんですね」

扶美子「そうですね。でもたまにヘルプを頼まれる事はあるけどね」

友希「ありますよね。私も休みなのに出て来てって言われる事ありますよ。でも同僚とも仲良くやってますので今の仕事は飽きないですし楽しいです」

ふたば「私もナースの仕事を始めてからまだ3年目ですが、毎日が勉強って感じで‥患者さんが元気になって退院する姿を見るとやりがいを感じます」

扶美子「そうなんですね。お二人は幼なじみ?」

友希「そうです。中学校からですが、ずっと仲良しです。」

ふたば「友希は今は姿町に住んでいるので私達の住む花和田市からだと10kmもあるんですよね。」

扶美子「友希ちゃんは元々花和田市に住んでいたの?

友希「いえ、中学生の時は両親がビジネスマンで帰りが遅く平日はおばあちゃん家に泊まらせて貰いながら歩いて通っていたんです。土日は実家だったので、月曜日の朝は早く起きて中学校までの自転車通学は大変でしたよ。そして金曜日中学校の帰り道、パンクしてお世話になったんですよね」

扶美子「あ~あの日は金曜日だったのね。あの後花和田市まで帰ったんだね。大変だったね」

友希「大変でしたが、おばあちゃん家での生活も楽しかったので…でもおばあちゃんは私が中学を卒業した後施設に入所してしまったのでおばあちゃん家は売りに出してしまい今は誰かが住んでくれています。帰れる場所が無くなってしまうって悲しいですよね‥

それから母は仕事を辞めて今の今まで私への愛情を注いでくれてます。早速LINEが入っていますね…」

ふたば「平日は友希はおばあちゃん家から通って居たんだね!あの当時から仲良かったけどお互いの家行き来してお邪魔させて貰った事もあったけど、私は事情を気にする事は無かったよね。大変だったんだね。中学の時はよく泊まりに来てくれたもんね」

友希「まあね。高校になってお互い別々の高校になったけど月に2、3回は会っていたよね!」

ふたば「そうだったね。そして社会人になって今があるってね」

扶美子「そうなんだね。2人は何だか似ている様な感じもするしね。お互いを思いやれる関係性なんだね」

ふたば「今回お互いが同じ意見だったんです。猫の後をついていきたいと。成人して良い歳になった2人が考える事では無いですよね‥」

扶美子「冒険心って素敵だと思うよ。いつもと変わら無い日より変化のある日の方が楽しいでしょ。私は2人ぐらいの時に結婚して花陽が生まれて。育児してたから冒険ってした事は無かったの。だから今のふたばちゃんや友希ちゃんを見てると羨ましいなぁって」

ふたば「今は絶賛失恋中の2人が寄り添って非現実的な冒険を楽しんでいる。とっても楽しいです」

友希「ほんとね、今は恋人を見つけている場合じゃ無い、兄を連れ戻さないと」

扶美子「友希ちゃんのお兄さんも花陽が居ると言う島に住んでるの?記憶を無くして?」

友希「兄は記憶を無くしてはいませんでした。でもあの島で漁師の格好をして働いていた様に感じます。

あっ…そろそろお暇しないとね。明日もあるから」

ふたば「うん、そうしよう、お腹いっぱいです。美味しかった〜ご馳走様でした!」

友希「美味しかったです。ご馳走様でした!」

扶美子「明日は2人とも仕事なんだね、ご苦労様、じゃあ今夜はおしまいにしましょう」

こうして阿佐田家での夕食会を終えると

扶美子の連絡先をお互い聞き登録するのであった

そしてふたばは澪花(母)に迎えに来て貰う

澪花は扶美子に挨拶をし暫く話ていた

澪花とも気が合いそうだ。そして家の駐車場へ着くと、お疲れさま〜バイバイと2人は声掛け合わせ友希は帰るのであった。


そして真守は…キンザンカ漁にて1日中船に乗っていた。キンザンカとは幻の魚と言われる程、市場価値があるらしい。キンザンカ1匹で約3万円の価値がある。キンザンカが連れると漁師はバイヤーと連携を取り交渉するとそれぞれに生活に必要な物、服や食べ物が支給されるらしい。お金が発生しないから争い事は無い。泥棒も入らずセキュリティは万全な様だ。

勿論、他の魚も市場価値はあるが楽したいのならキンザンカを狙う事だと言う。この島人は常に労働している。休みという休みはほぼ無いようだ。

休みが無いと言うのを苦だと思っても居ないらしい

朝から船に乗り夜までで20匹釣れた。

後は港に戻るだけだ。真守はこれからの事を考えた。ワタルにこの島の事実を話て信じてくれるのであろうか。いや、真守は家に居られず飛び出してしまったか…島人に捕まってしまってるのでは無いか…と色々と浮かんで不安になって来る。

ワタルの方はと言うと暗闇の中で真守が帰るのを待ち続けている

体調は良くなっている様だ。真守に言われた通りに外へは全く出ず待機し続けている

耳を澄ませると波の音、犬の鳴き声が聴こえて来た

ワタル(僕はあの町を離れたくて彷徨い続けてバイクで山道を登っていると洞窟に気持が惹かれて行く気分になり進んで行った…でも一向に暗闇で先が見え無い。そんな時石に躓いて転んでそのまま時間は過ぎてしまっていた様だ。ここに居る空間は今まで居た場所と違う‥小さい頃遊びに行った田舎のばあちゃん家を思い出させるような安心感はするのだけど何だか不安を感じる…)

港に戻った真守はその場で漁師が捌いてくれた魚を頂いた後シャワーを浴びた。そして長屋へと帰るのであった

長屋のドアが開く音でワタルは目が覚めた。気付いたら何度も寝たり起きたりしていた様だ。

真守「あっワッチごめん。」

ワタル「…マモン?…大丈夫、何とか潜んでたよ。誰にも気付かれては居ないし出て居ないから」

真守「さあ、どうしようか。俺はこの生活に馴染んでるのが正直不安で…半面妹が無事に戻ってるのかも気になるし。」

ワタル「ここは何処かの知らない町?洞窟に入った記憶はあるけどずっと暗闇で何も見え無かった。この場所は洞窟を抜けた場所なんだよね?」

真守「そうそう、でもここは記憶を消す島とも言われていて新顔は捕らえられ水を飲まされ記憶を消されるんだ。」

ワタル「マモンは記憶は消されんかったの?」

真守「俺の場合は水を飲まされたけど記憶は残っていたんだよ。だから水を飲まされただけで一概に記憶を消されるって訳では無いと思う」

ワタル「そうなんだ。僕にとっては記憶を消して貰えるなら…寧ろ…そんな場所を探していたから。でもいざ捕らえられて儀式を受け無くてはならない事を思うと何だろ…恐ろしい。」

真守「そうだよな。俺もビビったし。で…どうしようか?」

ワタル「まぁ、マモンに付き添って貰ってなら儀式に参加してみても良いかなとは思うかな」

真守「それで記憶が、俺との記憶が無くなってしまったらワッチはどうなる。俺はやだな」

ワタル「それもそうだよね。そしたら自分が自分でも無くなってしまうんだよね?」

真守「ワッチを見つける前、俺はここから経つ事を考えていたんだ。だけど・・途中でワッチを見つけたから引き返したんだ」

ワタル「僕のせいでまたこの島に戻ってきさせてしまったのは、ほんとにごめん…」

真守「いくらでもチャンスはあるから、今夜だって。でも疲れたから寝ても良いかい?明日は農業の手伝いになるから。行かなくても気にされ無いと思うんだ」

ワタル「オッケー。ゆっくり寝させて貰って僕は大丈夫。やっぱり考え直してみるよ。」


そして夜が更けていく…ワタルは耳を澄ませると雨音に気付いた。どうやら雨が振り始めたようだ。

雨が降ると夜明けが判らない

いつ真守を起こしたら良いのか悩まされた…

そして更に数時間が経ち、ワタルも雑魚寝していたが真守が起き上がる物音に気付き目が覚めた

真守「良く寝たよ。さぁ、出発しようか。」

ワタル「雨降ってるけど…」

真守「大丈夫さ。傘あるから」

ワタル「へぇあるんだ。」

真守とワタルは長屋を出て元来た場所へ向かって行くのであった

心なしか雨が強く感じていた

ワタル「風もあるし、荒波もあるね」

真守「強雨の時こそ好都合、誰も家からは出やしないし、農業も今日は出来無いから」

そしてまた使われて居ない用水路へ到着する

しかし用水路は劣化しており穴が開いており海水が漏れ出しているようだ

真守「時間の問題かもしれないから早めに潜ろう。暗いから俺の傘に掴まって歩いて」

ワタル「分かった。こんな暗闇をマモンは歩いて来たんだね。」

真守「一度歩いた場所は慣れた物だよ」

2人はどんどん進んで行く…気付くと踵まで水笠が増して来ているようだ。後ろを振り向くと闇の中に霧が立ち込めている。出口は近い。そして漸く洞窟の中へ足を伸ばして歩いて行けるようになった。出口はもうすぐ。するとバイクが置いてある。

ワタル「あっ、これは僕のバイク」

真守「ここに置いたらバレるじゃ無いか。俺は茂みに隠しておいたから」

洞窟を出る2人。真守のバイクも無事だった様だ

でも現実の世界も雨だ…

雨の中2人はバイクでツーリングして帰路へ着いた


そして、朝

友希は早番の為6時に出勤する

プレミアムタイムホテル。市内で一番の高級ホテルに友希は勤めている。出勤し着替えて早速モーニングバイキングの準備が始まる。勿論調理はしない。食器の準備をし、テーブルと椅子を拭く。宿泊者が快適に朝食を食べて貰えるように配慮する

そして、朝食の時間になりぞろぞろと宿泊客がやって来る…

「おはようございます。朝食券を預かりますね。お好きな席へどうぞ…」と声を掛けて行く

そしてバイキングのメニューが空になれば調理員に声を掛けたり。食べ終わったお客様のテーブルを片付けて次のお客様を呼ぶ…作業を10時まで行わ無くてはならないのだ。

バイキング中のトラブルに対してもいち早く対応しなくてはならない

9時になるとお客様もまだらになって来て料理の催促も楽になって来る

友希は宿泊客が去った後のテーブルを片付けている時だった、ビジネスマンが使うバッグが椅子に置き忘れて居るのに気付く。そう言えば先程出発した客はスーツを来ていた。何やら忙しそうにしていたから忘れてしまったのであろう。友希はバッグをフロントの忘れ物置き場へ預かる事にした。

そろそろモーニングバイキングが終わろうとして来た所、慌てた感じで青ざめた表情のスーツを着た男性がバイキング会場にやって来た。自分が座っていた場所で何やら探している様子。

スーツの男性が友希の方へやって来る

男性「すみません、あっ、あの辺りに黒のバッグを置き忘れてしまったのですが、誰かが持っていたとか…何か判らないですか!!」

何やら焦っているみたいだ。重要な物らしい。

もしかすると椅子にバッグを置き忘れた人物か…顔をよく見て無かったから分からないがメガネを掛けて長身だった。そして、黒のスーツ

よく見ると当てはまる

友希「もしかして椅子にバッグを置き忘れた方ですね。フロントで預かっています」

男性「ありがとう。見せて貰えませんか?」

友希「では、フロントへどうぞ…こちらです」

友希は男性にバッグを渡した。バッグの中を確認すると安心した表情で「これは間違い無いです」と友希に何度もお礼を言って来た

友希「一応身分証の確認とこちらの用紙に住所と電話番号をご記入ください」

男性「分かりました…ありがとう」

友希はとても重要な書類だったんだな

直ぐ預かっておいて良かった。良い行いが出来たと心底嬉しかったのだった。





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