第五章 剛角神社
阿佐田家を出て歩き出すふたばと友希
昼下がりだが天候は依然として良く無い
雨が降りそうだ…でもまだ傘は必要では無い
まさか鉄格子が4方位にあり扉の周辺には扉の鍵を所有する人達が居る事、そして阿佐田家の1人娘はふたばが島に着いて出会った女性だったって言う事
今日1日で沢山の情報を得る事が出来た
そして今から西にある神社へ向かう事に…
晴れていたら西陽が綺麗なんだろうなと思いながら2人は歩いて行く…そしてまた300メートル先に住宅街の中で一際目立たない鳥居を見つけるのであった。
鳥居を潜ると更に鳥居が続いている
そして階段を上って行く…
おおよそ100段はあるだろう。さすがに疲れた2人は階段を上り切った先の大きな石の上に腰掛ける事にした。
すると遠くの方で、"コッコッコッコッ"と鶏の声が聴こえて来た…そして穀物の様な匂いが漂って来る
ふたば「いや〜、今日は沢山歩いたね〜。階段上がるなんて…もう疲れたよ」
友希「そうだね〜水分摂らないと」
友希はリュックからスポドリを取り出す
友希「常温だと温くて美味しく無いけど、ふたばも飲む?」
ふたば「お茶持って来てたから大丈夫。ありがと。」
2人は石に腰かけて飲んでいた
すると、体格の良い強面の表情の男性に遭遇した
服装的に神社の神主の様だ
神主「うっふん、この場所での飲食は止めて頂きたい」
ふたば「あぁ、申し訳ありません」
ふたばは声に驚き咄嗟に立ちあがる
そう言うと神主は去って行く…
友希「あの方が神主さんか…厳格って言っていた通りの人だったね」
ふたば「まあ、この場所で飲んでいた事に関しては私達はね、間違ってるよ。さぁさ、お参りして来よう」
2人は賽銭をしお参りをした
ふたば「扉はどこかにあるはずだけどさ、階段上がれば無いよね」
友希「ふたば、彼処に下りる階段あるよ」
友希に言われ見ると右側の奥に階段が見えた
鶏の鳴き声は彼処から聴こえて来る様だ
"この先立ち入り禁止"との看板がある
ふたば「友希、彼処の階段下りてさ、見に行かない?立ち入り禁止だけどさ、この先に扉がある様な気がしてならない」
友希「まぁお客さん居ないからねえ。私見張ってるからふたば、下りて見て来て。」
ふたば「了解…近くに居てよね!帰ら無いでよ〜」
ふたばは細い階段を下りていく…するといけすがありその先に大きな鶏小屋があった
ふたば「まるで養鶏場の様…この場所で卵販売でもしてるのかなぁ…掃除は行き届いていないみたい」
空は生憎の曇り空の為、放牧はしていないらしいが足元には羽の絨毯が広がっている
普段は放牧していそうだな
いけすには鯉が数匹泳いでいる様だ
でもいけすが汚れていて魚達が可哀想
ドブの臭いと雑穀臭が酷い
鯉達も雑穀を食べているのだろうか
ふたばは呟きながら
鶏小屋の方へ向かって行く…
鶏小屋の後ろに鉄格子の扉が見える
ふたば(彼処に扉が…ん?)
ふたばは違和感を感じた
それは鶏小屋の後ろでは無くて鶏小屋の中に鉄格子の扉がある様だ
ふたば(えっ?何で鶏小屋の中に?)
神主「おーい、ここには入ら無いように!!関係者以外侵入禁止。という看板を見なかったのですか?通報しますよ!」
ふたば「えっ、そうでしたか、気が付かなかったです度々ご迷惑をおかけして申し訳ありません…私は鶏が好きだったものなのでついつい鶏達の声に魅了されてしまって…」
ふたば(理由になって無いか…フフ)
友希「ふたば〜どうしたの?今からそっちに向かうね
」
神主「鶏が好きなら鶏小屋に入れてあげても良いぞ」
神主は鶏小屋まで走りだし扉を開けようとする
ふたば(たちの悪い神主だこと…あぁ気味が悪い)
友希「ふたば〜大丈夫、ハァハァ…神主さん…このバッジ心辺りありますよね?」
友希はふたばが気になって階段を下りて走って来た
神主「えっ…?何で君が神社の紋章の物を持って居るんだい?ここではバッジなんて販売して無いぞ」
友希「このバッジこそこちらの神社の紋章となっているのにはびっくりしました。神主さんは失念島ってご存知なんでしょうね?」
神主「ん?何を言ってるんだ!!君は。私は何も知らない。」
ふたば(あぁ!あの島で受け取ったバッジ。友希が持ってたんだ。神社の紋章…もしかして、多可祢さんと繋がりがあるのでは?)
ふたば「多可祢さんってご存知でしょう?」
神主「多可祢…多可祢は私の母ですよ。貴方達はどうして母の名前を?そして何故此処に?」
ふたば「私達は島へ奇跡的に辿りついてバッジを受け取って多可祢さんに会いました。多可祢さんからは自身の子どもが居ると言う話は聞かなかったのです。多可祢さんには記憶が無いのかもしれませんね、何故神主さんが此処に居るんですか?」
神主「母さんがどこに居るって?母さんに記憶が無い……?どういう事だ。私の名前は登坂伊太郎、そしてこの神社は父の登坂勘次郎が建てた。母は私を生み育てあげ私が成人すると跡形もなく消え去ってしまった…」
ふたば「多可祢さんの失踪は何か理由はあったんですか?」
登坂伊太郎「…母が晩年あの扉から出入りするのを度々見ていたけれど子どもの頃はフェンスなんて無かった。阿佐田家が訳ありでフェンスを立てたのだろう。ただの雑草が生い茂る荒野に何も無く、母は踏み入れて何をしてるんだと思っていたんだ。そして母が失踪して半年後…日めくりしたカレンダーの最後に手紙が貼ってあるのに気付いた。母が書いた手紙だった。その手紙は
"伊太郎、ごめんなさい。お母さんを許して。お母さんの妹の多美枝が向かった場所に住む事になったの。これはどうしてもそうしないとならない理由があるからなんだよ。伊太郎は判ってくれるだろうって思う。
伊太郎はこの土地で平和を祈り続けるのです。
お母さんも多美枝の住む場所で多美枝と住人達とが寄り添える場所を築きあげて行きたいと思ってる。
どんなに忙しくても、伊太郎の事は忘れ無い。一緒に過ごした思い出はね毎日振り返る様にしてるの。そうすると全然寂しくなんて無いのだから。
遠い場所に居ても伊太郎の事忘れたりなんてしない。幸せを築き上げるんだよ 多可祢"
登坂伊太郎「そんな手紙を残して母はどこかへ向い生きている。鶏小屋の扉はね、いつでも母が帰って来ても良いように開けているんだ。ここ数年間で育てている鶏が居なくなる事があるんだよ。もしかすると誰かが奪ってるんじゃ無いかって思うけど…それが母であったらと…でも母はそんな事するわけは無い…だから看板を置き始めたんだよ。母は出入りしてたけどこの先から消息を経つ事なんて出来る筈は無い。私はこの荒野の草刈りをしていた時期もあったけど何も無いんだよ。まさか君達が母の名前を知る人達だとは思っても見なかった。良ければ話を聞かせて貰え無いでしょうか。」
ふたばと友希はこの荒野から失念島へ向かった事、多可祢さんに出会った事を話た
登坂伊太郎「ありがとう。母はもう80歳になるだろう。元気に過ごしているのを聞いて安心した。でも生きている内に孫の顔を見せてあげたかった」
ふたば「息子である伊太郎さんを置きざりにしてまで妹さんとの絆を大切にしようと思った多可祢さんの気持ちがちょっと判らないです」
登坂伊太郎「私はこの神社の神主として離れては行け無いと母は一緒に行くのは断念したのかもしれません。正義感の強い人でしたから」
友希「私達、この荒野を進んでまた島へ行く事を考えているのですが、こちらから通らせて貰え無いでしょうか?」
登坂伊太郎「君達達は、本当にこの何も無い荒野から母の住む場所へ辿り着けると思ってるんですか?あり得ないです…でも実際に行けたって事はあり得るんですね!記憶を消されるなんて危険な場所へは行かない方が良いかもしれませんよ。私なんてそんな勇気は正直無い。だけど母に会いたいと言うもどかしさはあるし…。もし君達が島へと行けるのであればその時は協力しますよ」
友希「ありがとうございます」
ふたば(鶏小屋の中には結局入るんかいな)
友希「せっかくなのでこちらのお庭をお掃除させて貰え無いですか?」
登坂伊太郎「えっ、良いのですか?掃除して頂けるのは有難いです。でもどうして?」
友希「神聖な場所をほったらかしにしていると神様も寄り付かないんじゃ無いかと思って」
登坂伊太郎「以前は2人雇って居たんだけどね、ある日突然辞めてしまってから神社の切り盛りをする気持が起きなくなってね…」
ふたば(疲れたって騒いでた友希が掃除するとは…私もやるかー)
ふたば「私もお手伝いさせてください」
登坂伊太郎「ありがとうございます」
それから2時間掛けて鶏の羽の絨毯はすっかり無くなり庭園と池は綺麗になった。2人のやる気を見て伊太郎も掃除をする意識へ傾いた。そして伊太郎の息子と娘も掃除に加わる…その後鶏小屋の方も掃除を施した。スマホの時間を確認するともう5時半を過ぎていた。
伊太郎「ありがとう。君達には感謝しか無いよ。もうすっかりと夜だし妻が夕食をご馳走したいと言っているんだけど…どうかな?」
ふたば「ありがとうございます。お言葉に甘えたい所でしたが、これから用事がありますので…」
伊太郎「用事があるのに働いてくれたのは何とも申し訳無い…。何か私に出来る事は無いかな?」
友希「私達あしが無くて。歩いてこちらまで来たのですが…出来れば車で送って頂きたいのです」
伊太郎「遠くから歩いて来てくれたんだね。喜んで。」
ふたば「阿佐田鉄工所さんまで送り届けて貰え無いですか?」
伊太郎「あぁ、阿佐田さん所ね。ご主人が亡くなってから奥さんとも会っていないけど。」
ふたば「実は…これから阿佐田さんの奥さんが夕飯をご馳走してくれるんです」
伊太郎「先着が居たんだね。君達は心優しくて素晴らしい子達だ。暫くそんな子達とは会って居なかったから何だか嬉しくて涙が出ちゃったよ。では家で手洗いうがいをして貰って出発するからね!」
2人は登坂家で手洗いとうがい後、奥さんからお礼にとお茶とお菓子と籠に入った10個ずつの卵を2人に渡して来た。
登坂郁代「本当はご馳走を食べて貰いたかったんだけどね。残念だけどまた遊びにおいでね。」
2人「ありがとうございます」
伊太郎「ほら、出発だよ〜」
2人は伊太郎の運転するワゴン車に乗り、阿佐田鉄工所まで送って貰ったのだった。




