第二十五章 愛する者への応え
残ったラーメンスープに半分のおにぎりを加え、おじやカップ麺を食べつくしお腹いっぱいのふたば
そして時計を見ると30分をとうに過ぎ20時を過ぎていた
テーブルに置いていたスマホから着信が入る
アオトからだ
ふたば「もしもーし」
岩田アオト「ごめん、今休憩中、ちゃんと帰れた?雨ヤバいから」
ふたば「うん、雨ヤバくて今コンビニで軽食食べてイートインスペースで雨宿りしてる」
アオト「そっか、そっか、無事で良かった!非番じゃ無ければそっちに行ってたんだけどな~。これから都合つけて行きたいぐらいだよ」
ふたば「ううん、私は大丈夫だよ!どう?体調は?」
アオト「うん、大丈夫だよ!おかげ様で。アパートへも帰る事になったんだよ!叔母さんはもっと居て良いって言ってくれてたけど、そう長く居たってね〜ふたばちゃん次の予定は?」
ふたば「明日夜勤で週末は休み1日あるけど、剛角祭りの打ち合わせで友希と神社へ行って来るの」
アオト「そうなんだ、忙しいね」
ふたば「うん、まあまあね…アオト君、友希の事で伝えたい事あってね」
アオト「え何、何?」
ふたばは先程コンビニでぶつかった客が落としたメモに友希の住所と名前が書かれていた事をアオトに話た
アオト「ん〜それって友希ちゃんを誰かが探してるって事だよね。ぶつかった人の特徴は?」
ふたば「一瞬だったからよく覚えて無くて…でも紺色のスーツで黒いビジネスバッグを持っていたってぐらいで…ぶつかっても何も言わ無いし、振り向かないで去ってしまったから…」
アオト「あ〜そうなんだ。大丈夫?怪我しなかった?友希ちゃんは知ってるんだよね、その事」
ふたば「うん、さっき連絡しておいたよ。安易に家のドア開けちゃダメだよって話しておいた。私は大丈夫だよ」
アオト「そっかぁ、怪我無ければ良かった。何だか心配だよね。お兄さんの記憶喪失と何か繋がりがある可能性も無きにしもあらず…」
アオト「あっ…ごめん、ごめん、休憩時間終わっちゃうからさ、必ず僕の所に家帰れたのかメッセージ残しておいて!僕もこまめに確認するから!気をつけて帰るんだよ!愛してる!」
プー、プー
ふたば(最後の愛してる…ふふふ)
気付くと雨足は小さくなって来た様だ。これで帰れるだろう
ふたばは椅子から立ち上がり、ゴミを捨て傘を購入しコンビニを出る事にした
店員「ありがとうございました!またお越しくださいませ」
道路は一部灌水はしていたのだが、車両の数が増えた様子であった。その波にのまれれば家へ帰れるだろう…
ふたばは漸く車を発進したのであった
その頃…同じく雨の降っている失念島の夜空を窓から眺めながら酒に浸る日々の男がいた
真守である
不眠は相変わらずして続いており、度々見る幼き自分と少女の夢
それを何度も思い返す
夢の中でも雨は降っていた。サッカーの大会に参加している真守であった
突然の豪雨で我先にグランドへ傘を差しながら走って来た少女。そして後数メートル付近で少女は転んでしまう
少女「わ~ん、わ~ん」
擦り傷が出来ていた
真守「大丈夫?お兄ちゃんおんぶしてあげるよほら」
手を差し出す真守。泣くのを止め真守の背中に捕まる少女」
少女「お兄ちゃん…今日誕生日だからね、お兄ちゃんにケーキ作ったんだ!」
真守「凄いじゃん、さあ急いで帰ろう」
すると直ぐ傍までボヤケた男女が現れた
女性「もう、転んじゃって、大丈夫?あっちの水道で洗って絆創膏付けましょう」
男性「真守ももう立派なお兄ちゃんだ!ゆきの事いつまでも守ってあげるんだよ」
そして目を覚ます…
夢の中ではゆきと言っていた。聞き覚えはあったな…でもいつの日か島へ出た時、優しくしてくれた青年達
あの時に食べたチーズケーキ美味しかった。良くしてくれたな
真守(あぁ…なんであの時釣りがしたいが為にここに残る選択をしてしまったのか…あの時唯一自分の事知っていた男女にもっと聴いておけば良かった…)
診療所から貰っている薬を飲んでいると幻聴や幻覚は治まっている感じがした。その分あの時の男女に会いたいと言う気持が高まっているのであった。
真守(この雨が止まない内にここを出ようかな…)
ふとそんな考えを浮かべる真守であった
そして話は変わり…
多美枝「お姉さん、鏡太郎と沙苗はこの島を去ってしまって…ゴホゴホ」
多可祢「そりゃあ知っとる。ここを出る前に挨拶に来たんだよ。夫婦で。この島もどうなってしまうのじゃろうか」
2週間前の夜
鏡太郎宅
トントンドアを叩く多可祢
鏡太郎はドアを開ける
鏡太郎「ああ叔母さん」
多可祢「話ってなんじゃろ?」
鏡太郎「信じられ無い…母が…僕を忘れてしまったんです」
多可祢「どういう事じゃ?」
鏡太郎「僕は母を1秒も忘れた事は無かった。でも母を発見した船に運んだ時には既にはもう…」
多可祢「ここで話す理由にもいかん。中へ入れてくれ」
鏡太郎は多可祢を客室へ迎える
沙苗「どうぞ」
沙苗はお茶を持参する
多可祢「ミヨリを覚えてるって事か?」
鏡太郎「だから1秒も忘れた事は無かったよ」
多可祢「船に運んだ時とは?どこに居たんじゃ?」
鏡太郎「あの日は漁に出ていて一隻の船が向かって来たんだ。そこには作之助が運転する船に横たわる母が居たんだ。母は意識はあったけど朦朧としていて熱もあった。作之助が乗せてくれ、この船じゃもう保たないと懇願して来たから母を抱えて乗せる事にしたんだ」
多可祢「作之助はミヨリと逃げた男だな。今は2人はどこに居るんじゃ?」
鏡太郎「使って無い長屋にいるよ」
多可祢「2人でか」
鏡太郎「そう。」
多可祢「どうするんじゃ?」
鏡太郎「僕は、家を用意して。診療所から薬を貰って三日三晩介抱していたのだけど‥それを飛龍雄馬に見つかってしまった。でも以外にもこの件はこっちで対処するからとそう言われ…そして昨日だよ」
飛龍雄馬「鏡太郎君、あの人達と一緒にここに居て貰う訳にはいかないから子どもと沙苗を連れてあの島へ移住して貰うよう手続きをもうしている。だからこの島から去るのだ」
多可祢「あの島って言うのは?」
鏡太郎「夢と絶望の島だよ」
多可祢「ほう、そう呼ばれてるんじゃな」
鏡太郎「そうじゃ無いの?」
多可祢「つい数月も前に若い2人の女性が尋ねて来たのを覚えて無いじゃろか?」
鏡太郎「覚えてるよ。沙苗を助けてくれた子達だから」
多可祢「これは鏡太郎には内緒にしていたんじゃが…ミヨリを見つけた以上はな。もう話ておかないと行け無い時なんじゃ無いかと思う。ミヨリがな、2人の若い女性にお使いを頼んだんじゃ。手紙を書いてな、これを渡してと。わし宛じゃったんだ」
鏡太郎「母さんが手紙を」
多可祢「そうじゃ、これを読んで欲しい」
多可祢は鏡太郎へ手紙を渡した
"多可祢さん、お元気でしょうか?
私はもう長く生きられないかなと思うので、これが最初で最後の手紙になってしまうかもしれません。鏡太郎の事は、作之助から聞いています。元気にやっており多可祢さんの姪と結婚して子もいると。ありがとうございます。私が離れてから鏡太郎が1人で生きて行く事に胸が苦しい思いでいっぱいでした。しかし、私が離れる時に鏡太郎が遠くからずっと手を振り続けてくれた事は一瞬たりとも忘れた事はありません。
離れてから作之助との間に女の子が誕生しました。
そしてすくすくと元気に育っていましたが、ある日私達の行動を監視している人物に気付いたのです。作之助とはそこから離れて暮らす事にしました。作之助の方に目を向けて貰いたかったからです。
それが効いたのかそれから私達を監視する者は居なくなりました。
しかし、子が14を迎えた後不審死を遂げました。遺体には傷跡も首を絞められた後も無いと言っていましたが、きっと狙われたのだと思います。それから私にはもう生きる希望は無くそろそろ人生を終わらせようと考えていた時に、作之助が度々私の傍に居る様になりそこから10年間生きて来られました。
そんな時、私は部屋で倒れ気付けば病院で入院して居りました。度々私の元にやって来る看護師さんが亡き娘の同級生でありましたが、私の事は忘れている様でした。しかし娘と少しの時間でも寄り添ってくれた、素晴らしい友人へ今回手紙を託したのです。島へ着く保証は無い。しかし、何故か私にはこの娘に任せて良いのでは無いかと思えたのです。この手紙が渡っている時には私はもうこの世には居ないかもしれません。私には死=記憶を忘れる事と同じ事だと感じています。どうか、どうか鏡太郎、家族をお守りください。多可祢さんとは私にとって姉妹であり、かけがえの無い親友です。貴方にお伝えしたかったのです"
鏡太郎「僕には妹が居たんですね。お母さん…なんでお母さんはそんな辛い思いをしなくてはいけなかったんだ!」
鏡太郎は目の前の壁に握り拳を使い壁を打ち砕いた。
多可祢「ミヨリは死ぬ事よりも記憶を忘れる事の方が恐かったんだろう。あの時手紙を受け取って鏡太郎には見せられ無かった。すまない…」
鏡太郎「多可祢さん、お母さんを守ってくれないかな?」
多可祢「ミヨリが居るのなら私達は生きてる限りは守ってやるさ」
鏡太郎「お願いします」
鏡太郎(お母さんと亡き妹を苦しめた奴ら許さ無い)




