第二十四章 雨降り止まず
阿佐田扶美子が入院して数日後
天気予報では梅雨入りとなっていた
梅雨入りとは言っても今年は例年以上に雨が降っている
しかし、荒野のNEWCITY計画は着々と進めて居る様子である
近所より通称避難所と言われるあの場所は、やはり毎日混んでおり入れ無い状況となっていた
賛否両論がある中、近所の住人の中にはやはり工事の騒音によるストレスがあるらしい
市役所へ苦情申し立てをした住人が複数おり、数日後には更にバリケードを増やし防音対策を施す程であった
その為日中の騒音は軽減している様子もあった
ふたばの勤めている病院に入院している扶美子は、ふたばが会いに来る事で不安は解消されていた
今回花陽が戻って来た理由はお互い分からないままであったが、花陽が居ると言う事で安心する扶美子であった
ふたば「では、帰りますね」
扶美子「じゃあ、また明日ね」
扶美子の状態は回復して居る。良ければ1ヶ月と予定されているが、ふたばは扶美子には伝え無かった
そんな会社帰りも雨が降り続いている
大雨…
ちょっと車の中で雨が落ち着くのを待とう
そう思ってアオトにLINEをする
既読は付かない
あぁ…今日は非番だったな
すると突然着信が入る
♫♫♫〜
確認すると登坂伊太郎からだ
ふたば「もしもし、」
登坂伊太郎「こんばんは、ふたばちゃん。今電話大丈夫かな?」
ふたば「あっはい、大丈夫ですよ!」
伊太郎「雨凄い降ってるよね〜、全く止む様子無いね…8月にさ剛角祭りがあるんだけど、その話って覚えてる?」
ふたば「あっ覚えてますよ!巫女さんをやって欲しいって話ですよね?雨降り続いてますね」
伊太郎「うん、うん、それなんだけどやってくれるかな?」
ふたば「その日は休み希望を出しておきます。私で良ければ出来ますよ!」
伊太郎「あ〜良かった。友希ちゃんの方へもこれから聴いてみる所なんだけど、事前打ち合わせの日取りを設けたいんだよね」
ふたば「それでは、私の方から友希に連絡しておきますよ」
伊太郎「えっ!良いの?ありがとう」
ふたば「合う日程が分かれば連絡しますね。そういえば神主さん、工事が進んで居ますが、騒音大丈夫ですか?」
伊太郎「それがね…あれから鶏達が卵を生まなくなっちゃってね…ストレスなのかな…。だからねちょっと親戚の山小屋に避難させてるんだよ、まぁ鯉達は大丈夫な様だけどさ」
ふたば「そうなんですか…それは心配ですね…」
伊太郎「まあでも家の方にもバリケード張ってくれたから多少は悩まなくなったかな」
ふたば「それは良かったです」
伊太郎「打ち合わせは日中で大丈夫だからね」
ふたば「はーいです」
伊太郎「では、よろしくね〜」
電話が切れる
しかしまだ雨は降り続いている
大降りだ。遠くからサイレンも聴こえて来る
車に居るのは不安を感じてしまったふたばは
灌水しない内にと雨の中運転を始める事にする
でもワイパーのレベルがMAXになった所でまた不安になり、直ぐ傍のコンビニへ駐車した
ふたば(ふぅ〜、この雨いつまで続くのかなぁ)
コンビニの店内の明るさを見ていると安心した気持になった
キュルルルル…
ふたば(あ〜お腹空いたなぁ)
人は不安に陥っている時もお腹は空くもんだとふたばは感じてしまっていた
雨足は強いが、入り口へは10メートル程なので傘を差しふたばは店内へと入る
おにぎりが陳列されている棚より鮭おにぎりと冷たいほうじ茶をカゴに入れる
ふたば(何だかデザートも食べたくなって来たな)
ジュースコーナーから振り向き、デザートコーナーへ数歩歩く…
ドン!
ふたば「すみません」
何も言わずにぶつかった客は去って行くが、その拍子にヒラヒラと落ちるメモ紙を咄嗟に手でキャッチするふたば
正面を見るとスーツ姿の男性が既に会計を済まして出て行こうとしていた
ふたばは声を掛けようとするが、一歩どころか数歩遅れてしまって追いつけ無かった
メモの切れ端が折り畳んだ状態になっていた
何やら文字が書いてある様だ
ふたば(先に会計しよう)
デザートを通り過ぎたふたばは会計へと向かう
店員「350円です。」
ふたば(おにぎりとお茶だけで高いなぁ)小銭が沢山あったので小銭で支払う
店員「ありがとうございました。またお越しくださいませ〜」
再び店を出ようとすると、大降りの雨だ
このままじゃ灌水してしまうのでは無いかと胸騒ぎが走る
ふたばは会計へと戻り、雨が落ち着くまで駐車させて貰え無いかと店員へ聞く事にした
夜のコンビニの店員は男性ばかりだ
ふたば「すみません。外の雨が落ち着くまでこちらで過ごさせて貰って良いですか?」
店員「良いですよ。…凄いですよね〜雨、凄い降ってますよね~あちらのイートインスペースで寛いで貰って大丈夫です」
ふたば(車の中で休むって意味で伝えたけど、伝わって無かった…まぁ良いかな)「ありがとうございます」
ふたばは更にカップ麺を購入し、湯を入れイートインスペースで食べる事にした
ふたば(家へ電話掛け無いと)
ふたばは澪花の携帯に電話を掛ける
♫♫♫〜
澪花「あ、ふたば、この雨の中急いで帰らなくて良いからね!」
ふたば「うん、うん、それを伝えようとしてたのよ。止みそうに無いから、ちょっとコンビニに寄って雨宿りしてるけど・・止みそうに無いからイートインで軽く食べてから帰るよ」
澪花「うん、うんそうして。お母さん達は家に居るから。ゆっくり帰るんだよ」
ふたば「分かったよ」
澪花「ちゃんと、天気予報確認してね。テレビの雨雲レーダーだと9時頃までは雨らしいよ」
ふたば「後2時間!!分かったよ。確認するね。何かあれば連絡するから」
澪花「うん、気をつけてね」
電話をしてたら3分はあっという間で…カップ麺は完成していた。
鮭おにぎりを開けて先ずはおにぎりを一口齧る
ご飯の甘みと鮭のしょっぱさがちょうど良い。ほんのりと胡麻の風味も。美味しい
そして、カップ麺のスープとこりゃ合う
ふたばはおにぎりを後回しにし、カップ麺から食べ始める
ふたば(あっ、そうだ、さっきのメモ紙)
ふたばは手を下にして紙を拡げた
"姿町8-35八潮友希"
なぐり書きで書いてある
ふたば(えっ!?友希の名前!そして住所!友希を探している?友希に何かあったらどうしよう…)
ふたばはすかさず友希の携帯へ電話を掛けた
♫♫♫♫
友希「はーい、ふたばどしたの?」
ふたば「ごめ…ごめん、友希今大丈夫?」
友希「うん…実はこんな雨でしょ。家帰ら無いで本屋さんに来てるよ」
ふたば「そうなんだね!雨凄いよね!私もコンビニで雨宿りしてるんよ、でね…」
友希「どこのコンビニ?あっ、でも合流したくてもこんな雨だしね」
ふたば「うん…出来れば友希に会って話たい事だけど、コンビニで話す内容では無いと思って…ただね、友希…もし誰かお尋ね者が友希の家へ来たとしても軽々と招待しないで。」
友希「ん?どういう事?」
ふたば「詳しくはLINEへ載せておくから。ちょっとビックリしちゃって…。あっそうそう、神主さんから電話来てね、剛角祭りの打ち合わせをしたいんだって。出来たら次予定の合う日に合流出来無いかなって思って…」
友希「うん…あっ、そう、剛角祭りの話があったんだね!私は今週末は休みでワタルと過ごそうと思ってたぐらいだから大丈夫、空ける事出来るよ!」
ふたば「今週末ね!うん、私も1日休みがあるからじゃあその日に行けるって神主さんに電話しておくね!」
友希「了解!またふたばの家まで行って大丈夫?」
ふたば「うん、大丈夫だよ!」
友希「じゃあ、よろしく〜、さっきの詳細LINEに載せといて〜」
ふたば「うん、ではまたLINEでね〜」
プー、プー
早速、ふたばは友希へメモ紙を写メし載せて
(さっきコンビニでぶつかった人が落としたメモ紙を拾ったら、友希の住所と名前が書いてあったからビックリして電話したの!ここ最近変わった事あった?)
と記入し送信した
ふたばは一瞬肩の荷がおりた感じがした
少しカップラーメンが伸びてしまっていたが、そこにおにぎりを加えてラーメンおじやにして食べる事にしたのだった
いつまで降り続くのだろうか…雨降り止まず…




