第三章 蟻の巣
朝5時40分、ふたばはアラームで目が覚める
楓「ネェーね…早過ぎるよ。今日日曜日だよ」
ふたば(はぁ~あ、んっ?楓が傍で寝てるなんて…あぁ、そうだった、昨夜楓が恋愛相談があると私の部屋に来て聞いてたらいつの間にか寝ちゃってた…)
ふたば「ごめんね、今日は友希と待ち合わせなの
友希が家に来るんだよ」
楓「友希ちゃん…最近家に来るようになったよね!
友希ちゃんが昔家へ泊まりに来た時さ、よくダンス動画を観ながら一緒に踊っていたっけ‥ネェーねはダンスに興味が無かったよね!ダンスよりゲームの方が良いってゲームしててさ…あの時は、友希ちゃんがお姉ちゃんだったらなって思ってた事もあったんだよ…
まあ、でもネェーねはネェーねだからね!楓は寝てるからさ、もうアラームはリセットしておいてよ!」
ふたば「うん…って無理だけど…寝起きから悲しい事言わないでよ〜涙出ちゃう…もう、ちゃんと部屋に戻って寝てよね」
ふたばはいつものように歯磨きして薄暗いリビングに電気を点ける
ソファーで寝てたローズも起き上がり、ゴロゴロさせながら絡んで来る
外は曇り空
テレビを点けると天気予報では曇り後雨予報
ふたば(6時に待ち合わせしていたんだ!!)
余裕でリモコンを持ちニュースを食いつくように観ていたら5分〜、10分と進んでしまう
ふたばは急いで仕度をし、リュックに纏めた荷物を背おい外を出た
友希は家の裏側のスペースに車を駐車していた
ふたば「友希ごめん、ごめん、お父さん達が休みって忘れてて…駐める場所指定してなかったね」
友希「うん、大丈夫よ、ここに駐めてても良いよね?」
ふたば「うん、大丈夫だと思う。じゃあ行こうか!
傘持った?何だか雨降りそうだからさ」
友希「もちろん、持ってる」
2人は家の裏側から鉄格子のドアへ向かう
ふたば「こちらから眺めてみると有刺鉄線はここから300メートルぐらいまであるけど、住宅街や工場が挟んでいるみたいね」
友希「ここの土地って以前からこうなの?」
ふたば「この家をお父さん達が購入して10年にもなるけどその時もこんなだったと思う」
友希「そうなんだね、土地が勿体ないじゃん」
ふたば「そう言われてもね…家以外にも荒野に繋がる扉ってあるのかな?」
2人は暫く眺めていると、近所のおじさんが犬にリードを付けてドアから出て来る
近所のおじさん「おはよう、また君達か、またこの先に行きたいのかい?」
ふたば「いえ、この先よりもこの有刺鉄線がどこまで続いているのか気になったんです」
近所のおじさん「そうか、見ての通りこの先は雑草が生い茂っていて全く管理されていない…この土地の所有者は、数年前に他界してこの土地を売りに出す事は無くて…家族も行方不明になってるんだよ…そろそろこの土地も工業団地にするかってを話になってはいるけどね。扉はここと南、東、西にあるよ。ここは北だから。おじさんはここの鍵を管理しているんだ。だから南、東、西にも管理している人はいるだろうよ」
ふたば「そうなんですね。私達は所有地を通らせて貰ったって事ですね」
おじさん「そうだね、この先を出たいって言って来たのは今までで君達だけだったからね
先日ここを出て行って、戻って来ないのにはとても心配だったから…でも無事に戻って来てくれたの事に安心していたんだよ」
友希「また鍵を開けてくださいって言ったら開けてくれますか?」
おじさん「いや〜、おじさんはちょっと無理だね。冒険心がある事は良い事だけど若い娘さん達が入るような場所では無いから」
友希「そうなんですね…判りました」
再び近所のおじさんは犬の散歩の為、後を去ったのであった
また新しい情報を聞く事が出来た
この場所の所有者は他界し、そして家族は行方不明…この周囲は有刺鉄線で覆われていて北の扉
そして東、南、西にも扉があると
元々足を踏み入れては行け無かった土地で呪われているのか?いや、もしかすると…この土地の所有者の家族は島に移住してるのでは無いのか?
そう思ったふたばであった
ふたば「ねぇ、友希残りの扉がある場所までつたって歩いてみようか?」
友希「うん、そうしよう!」
2人は東から歩いて探索する事にした
ふたばの家は住宅街の為細い道が数カ所にある
車は通れず自転車なら通れる道ばかり…まるで蟻の巣の様だ
平日は人の出入りは多く感じるが、今日は日曜日
時間も6時過ぎで僅かな人で閑散としている様だ
ふたばは住んでいながらも近所を散策する機会は少なかった
ふたば「近所なのに周辺を散策した事ってあんまり無いかも?たまに中学生の時に抜け道として通ったぐらいかもね。でも、確か最後に散策したのは…楓が小学生の時だったなバスケットボールの部活が夕方まで続いた時に学校まで歩いて向かえに行ったんだよな
楓は、小学生のわりには私と身長は変わら無いから、はたから見たら姉が楓で妹が私にしか見え無い感じだったけど…唯一、ジャージにランドセル姿で小学生だと判る感じで今になってみてはさ、楓は私よりも大人っぽい印象なんだよね~」
友希「楓ちゃん、そんな大きくなったんだ!私が思い出す楓ちゃんはキレッキレのダンスが踊れた姿だったけど・・」
ふたば「友希、今朝その話で私涙したからやめてくれない?」
友希「えっ?どうかしたの?…ハイハイ」
住宅地を抜けると定番の駄菓子屋さんがある
そしてたばこも別枠で売られているお店
閉店しているというよりももう営業していないらしい
唯一自動販売機だけは24H営業中だ
そしてまた東に向いながら細い道を抜けて行くと、小さな喫茶店を見つけた
電光掲示板があり、営業中となっている
ふたば「抜け道で通っていた時は喫茶店なんて無かったから最近出来たのかな?」
友希「日曜日に営業してるなんて有難い」
そして "もちろん!モーニングやってますよ" と表記されている
ふたば「友希〜朝食食べて無いからお腹ペコペコ、ここでモーニング食べ無い?私奢るからさ」
友希「えっ?奢ってくれるの?ラッキー、うん、うん入ろう」
住宅地に螺旋階段…
一際目立つ階段を上ると「cafe return」というお店の看板あり
ガラスのドアを開ける
入ると直ぐ店員が声を掛けてくれた
店員「おはようございます!いらっしゃいませ」
ふたば「おはようございます!2名で」
店員「こちらのお席へどうぞ」
2人は窓側の2人分座れる席へ案内された
椅子がソファの様にふかふかでずっと座り続けていたいと思える安心感がある
店員「こちら、メニューです 今の時間はモーニングなのでオススメはreturnモーニングです よろしければどうぞ」
友希「うわ~おしゃれだね!日曜モーニングを食べに来るお客さん多いじゃん!」
周りを見渡すと10席程ある中でほぼ埋まっている状況であった
ふたば「外は人気が無かったのに…こんな早い時間でも利用してるんだね」
returnモーニングは厚切りのトースト、スクランブルエッグ、ウィンナー、サラダ、グラタンが付いているそして飲み物はココア限定の様だ
友希「returnモーニングはココア限定って…コーヒーや紅茶って頼め無いんだね」
ふたば「そうだね…でも私はreturnモーニングにしようかな セットで750円(税込)って超お得だよね」
returnモーニング以外は単品のコーヒーが500円、トーストが250円でしょ、セットがお得じゃん」
友希「そうだね、コーヒーが飲みたかったけど…私もreturnモーニングが良い」
ふたばはテーブルにあるベルを鳴らす
店員がやって来る
店員「お決まりでしょうか?」
ふたば「returnモーニングを2つください」
店員「かしこまりました ココアは食前、食後どちらにお持ちしますか?」
ふたば「決めて居なかったね、どうする?」
友希「もちろん食前でしょう」
ふたば「両方食前でお願いします」
店員「かしこまりました」
ふたば「何だか雰囲気の良い素敵な喫茶店だね」
友希「まさかふたばの近所にこんな喫茶店があるなんて思って無かったよ」
ふたば「私も…ちょっと人生無駄にした感じかな…足を踏み入れて無い場所って他にも沢山ある筈だけど、社会人になってさ〜めっきり歩く事も少なくなったでしょう。いつも車ばかりだからね…こういう場所でのんびりって最高だよね」
友希「うん、うん、お客さんも本や新聞を読んだりしてゆっくり過ごしてるね。ヒーリング曲が流れていてさ焙煎されたコーヒーの香りが良い香りだよね〜」
ふたば「うんうん、あぁコーヒーも飲みたくなるね〜でもここはぐっと我慢…今度は友希の奢りでコーヒー頂こうかな」
友希「オッケー!」
店員「お待たせしました ココアをお持ちしました」
小さめのコーヒーカップに温かいココアが到着
ふたば「ココアも良い香りだよね〜頂きます」
友希「美味しい!ほんのりした甘み」
ふたば「ほんと、甘過ぎずビターな感じだね、私は甘過ぎ無い方が好きだから合う〜温まるね」
友希「そういえばふたば〜、あの彼氏とは続いてるの?」
ふたば「ねぇ、超特急過ぎるよ!友希には黙っていたけど…ナオヤとは先月別れたの」
友希「えっ、どうして?まぁこの間島に行くまでで話が出なかったのは不自然だったと思っていたけれど…話したく無ければ大丈夫だよ」
ふたば「話たく無い訳では無かったんだけど・・私の仕事って休みが不定休でしょ。だから週末限定休みのナオヤとはお互いの都合が取れ無い時もあったし…ナオヤはナオヤで友達と遊ぶ時間を優先にしちゃってさ。毎日の連絡が1日置きに変わり、1日置きが1週間、2週間となってきてそしたらいつの間にか連絡取る事でさえも忘れちゃった。自然消滅って言うのかな?」
友希「そうだったんだ…ごめん」
ふたば「いや、全然大丈夫だよ。友希にはいつかは話そうと思っていたんだけどね…友希の方はどうなの?」
友希「友達以上、恋人未満の関係かな、会う時は毎回ドキドキするんだけど。毎日のメールは疲れちゃって付き合っても居ないのに毎日どこにいるの?何してるの?ってメールに正直うんざりしてる。こうやってふたばと遊んでいる時間が癒しだし楽しいんだよね」
ふたば「それは嬉しい」
店員「お待たせしましたreturnモーニングです。グラタンは熱々なので気をつけてお召し上がりください」
2人「頂きまーす」
友希「パンがもっちもち!スクランブルエッグも美味し〜い!グラタンチーズトロットロ!」
ふたば「友希は食べるの早いわ…私も言えないけどさ グラタンとトースト合うわ」
2人は暫く朝食を楽しんだ
ふたば「美味しかったね〜良い朝食だった」
友希「また来ようね」
店員「お会計は1500円です」
ふたば「はい、1500円、美味しかったです」
店員「ありがとうございます!またのおこしをお待ちしております!」
友希「あ~良い朝食だったなぁ…何だか今日する目的はもう良いかなって思っちゃうくらい」
ふたば「そうだね…ってダメじゃん。真守お兄さんに帰って来て貰わ無いと」
友希「あっ、そうだよね!重要な問題だよ!真守兄どうしてるだろう…」
深夜3時頃八潮真守は皆橋ワタルを長屋に連れて布団で休ませた
真守(ワッチはあの洞窟に入ったのはいつだろう…もうあの洞窟を抜けて2週間が経つけれど遭難してたのか?気付くのがもっと遅かったらヤバかったな)
「おはよ〜う」
引き戸から声がする
真守「はい」
漁師「おはよう!今日はキンザンカを釣りに行くぞ!」
真守「おはようございます。はい、今から仕度します」
(あ~ヤバかった…後数分ここに居なかったら大変な事態になっていたのかもしれない。寧ろここから離れる事事態言っては居なかったから戻っていなければ不信感を抱かれていただろう…どうしたら良いものか…、そうだ!手紙を書く事にしよう!ワッチこの手紙を起きたら読んでくれ!)
真守はワタルへ手紙を書き残し漁へ出かけた
その数時間後、ワタルは目を覚ます
(はぁ~、眠ってたのか…夢の中でマモンに会ったようだった…ん?ここは何処)
ワタルは辺りを見渡すと布団とティーポットとテーブルぐらいしかない薄暗い部屋に居た
枕元に手紙が置いてあるのを気付く
"ワッチへ
偶然にも、トンネルでワッチを見つけて連れて引き返したんだ この場所は名前の無い島らしい 嘘は言わない ここから今日は出ないで欲しい 俺が帰ったら詳しい話をするから お願いだ テーブルの下の床を開けると食べ物があるから適当に食べてくれ トイレは右のドア、左の引き戸は鍵を掛けておいた
こちらから出ると外だけど外に出てしまったら大変な目に遭うかもしれない お願いだ 今日はここに居てくれ"
(ワッチ…ワッチって言う奴は真守ぐらいしか居ない…やっぱりあの時の声は真守だったんだ!名前の無い島?!僕が行きたかった場所かもしれない…
アパートを出て数日が経ち、何処へ行こうか考えていたけど…あの山を越えれば隣の街に出るからってバイクで山道を上がっていた。トンネルが2つありバイクを置いて使われて居ない方に進んだような…暫く進んで居ると闇になりその途端周りが暗闇に覆われて何かに躓いた拍子にトンネルの壁に側頭部がぶつかり気を失ったんだったそれから何日間か経過していたんだな…そうだ僕のリュック…)
もう一度周りを見渡し後ろを見るとリュックが置いてある
ワタルの物だ(マモンありがとう)
(お腹空いたなぁ…テーブルの床下開けてみようかな)
ワタルはほふく前進でテーブルの傍に来る
物音を立てるのを気づかれ無いのに配慮する為だ…
床下のパネルをそっと開くと沢山の果物やパンが貯蔵されていた。それを見てワタルは蟻の巣の貯蔵庫の様に感じた
(マモンは果物やパンを食べて生活してるんだな…この空間は部屋だけど決して居心地の良い場所では無いな。時が止まっているような…)
ワタルは直感で嫌な雰囲気を感じていたのだった…
薄暗い何も無い部屋で息を潜めて真守の帰りを待っていたのであった




