第十九章 立入禁止
島の山の頂上のベンチに座っている青年がいる
真守である
島に戻ってそろそろ3週間
キンザンカを釣る為に島へと戻って来た
しかし‥孤独だ
毎日が孤独。自分は何者なんだ…
真守お兄ちゃんと言われ続けていたあの日を思い出す
そしてフラフラになった自分を支えてくれた青年…
名前が思い出せ無い
そもそも自分はどうしてここに居るのか
キンザンカを釣る為だけにここに居るのか…
最近は悪い声が聴こえて来る。不眠も続いていた
漁師に相談すると診療所へ行けば何とかなるよと
漁が終わると今朝は診療所へと向かったのだった
そして診療所から受け取った薬を手のひらに乗せながら飲んで良いのかと疑心暗鬼に苛まれていたのだった
あの日に食べたチーズケーキの味も忘れられ無いでいる…
竜二は花陽と坂道を上って行く
そして頂上に辿り着くとベンチに座っている青年がいる
花陽「あの人、診療所にも居た人だけど大丈夫かな?」
竜二「一緒には働いた事無いけどたまに見かけてはいたけど顔色悪そうだね」
竜二は声を掛けに向かって行った
数分後竜二は戻って来る
竜二「なんだか自分が誰なのかって混乱しているみたい。悪い声も聴こえて来るんだって。薬を受け取ったけど飲むのを迷っているらしい。水筒の水で薬を飲んで貰ったよ」
花陽「精神的に病んでしまったのかな?なんだか他人事では無い感じがしちゃうけど…」
竜二「家へ帰るって言ってるたし、家があれば大丈夫かなって思うけど」
花陽「まあ、そうね、先に進みましょう」
アーチを潜り抜けた先の林の中へ入って行く
花陽「竜二はバイトって何してたの?」
竜二「朝の新聞配達とか、たまに夜間の工場のライン作業だったり…勿論漁がある日は出てたよ」
花陽「そうなんだ‥何で気付かなかったんだろう…その間お母さんには合わなかったの?」
竜二「裏口から回って鉄工所の中通ら無かったからね。後お隣さん家のお婆ちゃんにバレた時もあったけど、どうやらお隣さんのお婆ちゃんは、花陽のお母さんとの交流が無いのか話もしないみたい。僕が鉄工所で働いていた事は知っていたから何とも思ってなかったみたいだけど」
花陽「お母さんに何て言えば良いだろう…」
竜二「正直に話すしか無いよね…」
2人は林の中を歩き続ける…
それから黙々と歩き続けると
眩しい光が見えて来た
すると音が聴こえて来る
工事をする様な音である
竜二「何だか騒がしいね」
花陽「出口に誰か居たりして」
竜二「花陽、ちょっとここで待ってて。行って見て来るよ」
花陽「分かった。待ってる。直ぐ戻ってよ」
竜二は身を潜めるように向かって行く
次第に竜二の姿が見え無くなった
1人で島へ行った5年前
今はここで1人で取り残されるのに不安が余儀った花陽だった
花陽はその場に座り込む
10分、15分と待つ…
花陽の不安はピークに達していた
すると奥から竜二が驚きを隠せ無い表情で戻って来た
花陽「あ〜おかえり・・・心配してたんだから」
竜二「ハァハァ…出口に指計ろうとした時に、作業員が居て荒野を伐採してたり、ブルドーザーを使っていたよ。作業員が居なくなった隙に見たらフェンスが目隠しされていて立入禁止の紙が至る場所に貼られてたよ」
花陽「あれかな、買取りてが見つかって荒野は何か建つかもしれないって事。私達は行けそうも無い?」
竜二「どうだろうな…もう一度見てみる」
再び竜二は確認へと戻る
そして5分後…
竜二「作業を止めて作業員が帰って行く様子だよ。花陽、僕の後ろにしゃがんで付いて来て」
花陽「分かった」
花陽は久しぶりに島から荒野へと戻って来た
後ろを振り向くとトンネルの様な空間が浮かぶ
島への出入りが出来る者でしか見え無い様だ
もし作業員に見えていたのならバレてしまうはずである。
花陽「草で覆われていたこの場所も伐採したらきれいな敷地に変わったのね…」
辺りは陽も暮れかかり小学校のチャイムが鳴り響いている
キーンコーンカーンコーン〜
竜二「ほら、ほら立ち止まら無いで、鉄工所の入り口まで直行しよう!」
花陽「う、うん」
鉄工所のゲートはプラスチックの鉄板で覆われて居たのだが、骨組みの構造を知り尽くしている竜二にとってはお安い御用だった
花陽は気付いた。竜二のジャケットに工具が嵌めてあるのを…それを見て夫を更逞しく思えたのだった。
竜二「花陽先に入って。この鉄板を元通りにしておくから」
花陽「うん、気をつけて…」
久しぶりに実家の鉄工所の裏口へ錆びた鉄筋を跨ぎ歩き鉄工所の横に出る。相変わらず住宅地の近くであり集団で帰る学生の姿がある
それを見て懐かしいと感じる花陽
ふと、反対車線の実家のインターホンを押す女性と隣に立つ男性が居るのがわかる
花陽(お母さんの知り合いかな…)
するとドアを開けて笑顔で迎える母親の姿を見る
花陽(お母さんあんなに笑顔が似合う人だったっけ…)
2人が中へ入るのを見届けた後、扶美子はドアを閉めようとすると…目の前に長身のほっそりとしたロングヘアの女性が視界に入る
扶美子(花陽?!)
花陽は母扶美子と目が合った
花陽は今更隠れる事なんて出来無い
扶美子は靴を履かず出て来た…
そして、道路を渡ろうとした瞬間であった
ドン!
大きな鈍い音と共に道路に転がる扶美子
花陽「おかあさ〜ん!」
花陽は走って倒れた母に近づく
扶美子は微かに目を開けた
扶美子「花陽?花陽なのね!…」
そして気を失った扶美子
「扶美子さーん!」女性が家から出て来る。男性も。
その女性は友希、男性はワタルであった
八潮友希「扶美子さん!!しっかりして!扶美子さん…ワッチ、相手の方確認して来て!」
皆橋ワタル「わかった」
八潮友希「119番…もしもし、家の前で知人が車に引かれてしまったんです…頭は打って無いみたいですが、ショックで意識が無いです。名前は…住所は…」
花陽「お母さん、お母さんごめんなさい…」
友希「お母さんって…もしかして花陽さんですか!?」
花陽「えっ?何で私の事?知ってるんですか!」
ワタル「相手の運転手は怪我して無いって。衝撃で車体が破損したみたいで。110番に僕は掛けるよ」
友希「うん、怪我無くて良かった。扶美子さんを安全な場所へ」
数分後救急車がやって来る
竜二「花陽、何があったの?!」
花陽はガクガクと足を震わせながら涙を流している
花陽「お母さん、お母さんが…私が悪いの」
友希「花陽さん、救急車に乗ってください。私達が事情聴取受けますので」
花陽「ごめんなさい。竜二さん、ここで待ってて」
竜二「いや、僕も付いて行く」
救急隊は扶美子を担架に乗せ車内へ。花陽と竜二を乗せ病院へと向かったのであった。
その後、友希とワタルは警察の事情聴取を受け、相手側との示談は成立したのであった。
その頃買い物を終え、フードコートで軽食を済ませたふたばとアオトはアオトの住むアパートへ向かっていた。
アオト「本当にアパートに来てくれるの?やったぁ!3週間ぐらい空けてるから埃まみれかもしれないけど」
ふたば「うん、掃除ぐらいは何とかやってあげられますわよ!後、購入した食器を棚に並べたりしないとね〜」
アオト「んじゃあ、コンビニで何か買って行こうか?ジュースとかデザートとか」
ふたば「そうだね!それも良いね」
♫♫♫♫♫〜
ふたば「着信鳴ってる、アオト君のスマホ?」
アオト「いや、違うよ。ふたばちゃんの方だわ」
ふたば「ちょっと彼処の角にあるコンビニに入って良い?」
アオト「良いよ!適当に中で買い物して来るから」
ふたば「了解」
ふたばはコンビニの駐車場に車を駐め、アオトが車から出るとスマホを確認した
ふたば「友希からだ」
すかさず友希へ電話を掛け直す
ふたば「もしもーし、友希、どうしたの?」
友希「ふたば!扶美子さんが!扶美子さんが車に引かれて!救急車で運ばれたんだよ!」
ふたば「えっ!?何で!?で、今友希は扶美子さんと居るの?」
友希「花陽さんが救急車に乗って病院へ向かって行ったよ」
ふたば「えっ?今なんて?花陽さんって言った?えっ?なんで花陽さんが?」
友希「そう、扶美子さんの娘の花陽さんだよ!」
ふたば「えっ!?島から戻って来たって事だよね?何で?」
友希「分からない。」
ふたば「ちょっと待ってね…救急日は…私の職場だよ!きっと私の職場に向かってるかもしれない…」
友希「うん、救急隊の人にどこへ向かうかを確認したら、ふたばの働いてる病院って言ってた。さっき警察との聴取終わってふたばに連絡した所なんだけど、ふたばは何してるの?」
ふたば「うん、ちょっと出かけてる」
アオト「戻ったよ!これだけ買えば充分かな?」
ふたば「ありがとう」
友希「もしもし」
ふたば「一旦切るね、こっちから掛けるから。ごめん…ピッ」
アオト「ん?どうしたの?」
ふたば「友希からだったんだけど、阿佐田鉄工所の奥さんの扶美子さんが、車に引かれて救急車で運ばれたんだって。」
アオト「それは大変だね!発見者が友希ちゃん?どんな状況だったんだろ?」
ふたば「何故か島に居る筈の花陽さんも居たって…幻でも見てるんじゃ無いかな?」
アオト「島の住人さん。あぁ、島に着いて自宅に招かれた女性の事だね。でも何でここに?」
ふたば「事情は分からないんだけど、アオト君ごめん…これから友希の元へ行きたいんだけど・・アパートはまた次回で良いかな?」
アオト「うん、アパートは次で良いよ。良かったら僕も着いて行こうか?」
ふたば「うん、居てくれても…。でも大丈夫なの?ちょっとまた友希へ電話掛けるね」
ピッピッピッ
友希「はい、ふたば」
ふたば「友希、今からそっちへ行くから。友希は今どこに居るの?」
友希「扶美子さん家」
ふたば「あっ、そうなんだ!今からそっちに行っても大丈夫?」
友希「私の車が駐車場に停まっているから、ふたばの駐められる場所は鉄工所の空き地があるよ」
ふたば「分かった!そっちに駐めるね!」
ふたばはアオトと共に阿佐田鉄工所へと向かうのであった…




