第十三章 近所のおじさんの失踪と家族旅行
それから1週間…何事も無く世間で言うと平凡であった。
しかし…友希の家も平凡であると言うのが可怪しいぐらい平凡であった。
あれから友希の両親は、真守の事を言わなくなったのだ。如何にも真守の存在が無かったかのように…
友希も時間が経つにつれて真守の存在を忘れかけていたのだった‥
唯一、ワタルとはLINE交換をする仲となり友希にとってはかけがえの無い存在の様になっていた。
七瀬家では久しぶりに家族で一泊旅行の予定を立てていた。そして、海へ潮干狩りもする計画もあったので、勇人が早朝から張り切っているのであった
勇人「ふたば〜、楓太、楓〜起きなさい」
1人ずつ階段から下りて来る
ふたば「…ねぇ、まだ4時だよ〜。昨日夜勤明けだったしまだ寝てたいんだけど〜」
続いて楓が下りて来る
楓「パパ〜、もう出るの?仕度して無いんだけど〜」
続いて楓太が下りて来る
楓太「父さん、久しぶりの全員集合で気合い入ってんじゃん!夜明けまでゲームして無ければ良かったなぁ…あ〜眠い」
勇人「家族揃って出かけるって事無いんだぞ!ほら、さっさと準備して」
澪花はおにぎりを作っている
ふたば「ローズは?」
勇人「せっかくだからローズも連れて行こうと思ったけど・・ペット同伴の宿じゃ無いからね。ローズも今日は天気が良くなるだろうから外行きたいだろう」
ふたば「ローズ〜今日は皆でお出かけして来るから ローズも出かけて来ても良いけど・・ちゃんと帰って来るんだよ」
ローズ「にゃーん」
ふたば「バラの木の下にローズ用のテント用意してあげようよ」
澪花「そうしなさい」
楓「ねぇ~ね〜、ビーチサンダル貸して〜」
ふたば「あれ、楓持って無かったんだっけ?」
楓「ローズが片方何処か持っていったんだよ多分」
ふたば「こらっローズのせいにしない」
澪花「ほらほら、早くトースト食べなさい。パパがコーヒー淹れたんだから飲んでもう出かけるわよ」
3人「はーい」
30分後仕度を済んだ御一行は父のワゴン車に乗り込む
戸締まりをしてふたばはふと隣の家を見た。隣の家は近所のおじさん、倉浜さんの家である。
しかし…近所のおじさんの家には「売家」の看板が置いてあった。
ふたば「ねぇねぇお父さん、倉浜さん家って、えっ?何かあったの?売家って〜?」
勇人「ん?なぁにふたば、お隣さん家なんていつからかな…ずっと居なかっただろうけどな?どうしたんだ?」
ふたば「えっ!うそうそ、そんな事言わないでよ!恐いよ…おじさん、倉浜さん、毎朝犬連れて散歩に行ってたじゃん、ねぇ、楓、楓太お母さんも知ってるよね!!おじさんの事」
澪花、楓、楓太「…?」
ふたば「ちょっとやめてよー、恐いんだけど・・そうやって嘘ついてさ…いいよ、もう友希へ言うから!」
ふたばは泣き出した
勇人「ふたば、仕事で疲れてるんじゃ無いか?」
澪花「そうよ、毎日出歩いているから」
楓「ねぇ~ね、泣かないでよ…楓も泣きたくなるよ」
ふたばは家族が自分に隠しごとをしているとしか思え無かった。先週会っているのに自分以外の誰もおじさんの存在を知らないという現実がとても怖かった
おじさんと犬は失踪してしまった‥
ふとまた白根ミヨリが退院した時を思い出した
ふたば以外の職員はミヨリを覚えていない
証拠となる物が何も残っていない…
ふたば(鍵は?そうだ!扉の鍵…失踪と関連があるのでは…?)
勇人「ふたば、大丈夫か?」
楓「ねぇ~ね泣いてたって何も変わら無いよ」
ふたば(そうだ!泣いてたってね)
ふたば「ごめん…良いよ、出発して」
澪花「ふたば、悩んでるなら話聞くから…楽しい旅をして来ましょうよ」
勇人「では、出発〜」
車が発進すると周辺を見渡す…
誰も住んで無かった様にスッキリしている様子であった
車内では楓太はアイマスクをして眠っている
楓は携帯ゲームを楽しんでいる
ふたばは外の風景を眺めながら暫く考えていた
両親は夫婦で会話を楽しんでいる様子
高速道路のSAに入って皆それぞれ休憩…
楓はふたばの手を引きながら
トイレ休憩がてらふたばに自販機のジュースを要求する
ふたばは何も考えず楓以外にもジュースを購入して車内へと戻る
澪花「大丈夫〜?皆お腹空いて無い〜?」
勇人「後30分ぐらいで海岸に着くからね」
ふたば「大丈夫〜」
楓「お腹空いたよ〜」
楓太「名物のいか焼きが美味しそうだったから食べて来たぜ!」
澪花「楓太は我慢出来無いんだから〜」
勇人「では、出発〜!」
ふたば「はい、お父さん、お母さん」
両親「ありがとう」
ふたば「ほら、楓太」
楓太「さすがアネキ!」
高速道路を下りると海岸沿いになり4人のテンションも上っていったのだった。
楓「ねぇ~ね〜、ちょっと、写メ撮るから、窓際ずるい〜」
澪花「もう、海着けば沢山撮れるんだから」
勇人「うわ〜思ってたより客多そうだなぁ〜」
唯一ふたばは見慣れた景色だと思っているのであった。
青い海、潮風の匂い、カモメの鳴き声、大きな橋…。!!
ふたば「お父さん、彼処にあるあの橋ってなんて言うの?」
勇人「何だっけねぇ〜、ママ分かる?」
澪花「何だっけ〜?大きい立派な橋だねぇ」
ふたば(失念島に行った時に海の先に見えた橋によく似てる…あの先を越えれば失念島だったりして!…)
ふたばは友希のLINEへおじさんの事を伝え、携帯から橋を撮影をし友希の携帯へ送信したのだった。
仕事中の為友希の携帯には既読は付かず‥
海へと着いた御一行は暫く潮干狩りを楽しんでいたのであった
澪花「だいぶ採れたね〜、クーラーボックスに入れてね」
勇人「今日泊まる旅館で持ち込んだ貝で料理もしてくれるらしいからね。旅館にも持って行こう!」
楓「お腹空いた〜」
ふたば「私も」
澪花「さあ、お昼にしましょう!」
澪花は朝作っていたおにぎりや唐揚げ、卵焼き、サラダを並べる
勇人「家族揃ってピクニックなんて久しぶりだよね」
ふたば「本当に久しぶり。楓の小学校の運動会以来かも」
楓「そうだっけ?そう言われると皆揃ってって事無かったからね。特に、にいにが居るのも珍しいわ」
楓太「いっただっきまーす!」
澪花「お父さん、写真撮って」
勇人「あっ、そうだ、そうだ忘れてた〜せっかくだからもう一度潮干狩りをしているって写真も撮っておきたいな」
ふたば「もういいよ〜クタクタだし」
楓「この後はどうするの?」
澪花「水族館でも行こうかなって思ってるんだけどどう?」
楓「さんせー!」
楓太「水族館ならイルカにも会いたいな」
ふたば「家族で水族館久しぶりだね」
勇人「そう決まったら出発だ〜」
一行は片付けを済ませると車へと乗り込んだ
ふたばはLINEを確認すると友希からの返信が入っていた
友希(えっ?!ウソじゃ無いよね?おじさんが失踪?ふたばの家族が知らないってどうゆう事?ふたば不安じゃない?大丈夫?すぐ話たいんだけどさ、家族旅行中か…いつ帰って来るの?)
友希(大きい橋だね。綺麗…何となく島から見えた橋にみえるね)
ふたばは友希からの返信を見て安心した
もしかすると友希もおじさんの記憶が消えてるのでは無いかと…そしたら幻を見てた?島へ行ったのも夢の記憶なのでは?と考えてしまっていたからだ
家族には申し訳無いが友希に直ぐにでも会いたい気持に駆られていたふたばであった
ふたば(明日の午後かな?夕方かな?ローズが心配だから早めには帰れると思うけど)
友希(家族旅行なんだし、焦らずゆっくり過ごしてきな〜ちょっとおじさんの事がヤバいぐらい気になるから、帰りに見に行って来ようかな)
ふたば(1人で行くの?それは心配だよ…)
友希(ワッチに連絡してみるかな?笑)
ふたば(ワッチさんも頼れるからね!一度見に行ってみて‥私だけって気持を留めておきたく無いから)
友希(了解)
ふたばは友希とワタルとの関係が上手く行っている事に気持が弾んだ
そしてスマホを仕舞おうとすると電話が掛かって来た
岩田アオトからの着信である
しかし…家族旅行の車内での通話のやり取りはやめようと電話には出なかった
勇人「水族館着いたよ〜」
楓太「よっしゃー!一足先にイルカショーの予約して来る」
澪花「楓太、その前にチケット買わないと、お母さんこの間割引チケット貰って来たんだよね〜」
澪花は人数分のチケットを持ちヒラヒラさせた
勇人「さすが澪花ママ」
楓「ねぇ~ね、お土産屋さんに先行こうよ」
ふたば「せめて水族館観てからの方が良いんじゃ無い?お土産屋さんは逃げ無いから」
楓「はぁーい」
車から下りて、澪花、ふたば、楓は3列で歩く…勇人と楓太は後ろからついて歩く
澪花「ふたば、この水族館、阿佐田さんに教えて貰ったんだよ」
阿佐田扶美子。阿佐田鉄工所の奥さん
ふたば「扶美子さんと交流してるの?」
澪花「実はね、ふたばを迎えに行った時に少し話ただけだったけど、この前仕事中に扶美子さんと会ったんだよ。扶美子さん大量に娘さんの服をクリーニングに掛けるんだってね、持参して来て…その時に娘さんと行っていた水族館を教えて貰ってね、チケット貰ったの」
ふたば「そうだったんだ。それなら扶美子さんも誘えば良かったね」
澪花「家族旅行だからね、扶美子さんはそこまでの気持は無いだろうよ。ふたばと友希ちゃんにもよろしくって言われてたからさ、今度ふたばも扶美子さんに連絡してね」
花陽を待つ扶美子の姿を思い浮かべたふたば
以前阿佐田鉄工所で扶美子が言っていた
扶美子「私も島へ連れて行ってください!」の言葉を思い出す…
街からどんどん人が居なくなって行く。そしていつの日から突然存在を忘れられて行く
ふたば(私の家族…お父さん、お母さん、楓太、楓、そしてローズ。もし家族が私の存在を忘れてしまったら…その逆も有り得るかも…そして友希も私を忘れてしまったらもうこの街へは居られ無い…この真相を辿るには私と友希だけでは危険過ぎるかもしれない。…岩田アオト…私の救世主になって)
ふたばは岩田アオトへショートメールを送っていた
その後水族館へ入ると一行は我を忘れて楽しく観賞するのであった




