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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第99話 【ダンジョン嫌悪派】創設者

 空間の歪みから飛び出してきたのは、仮面を付けていて顔は分からないものの、背中に生える翼と頭上部に浮かぶ輪っかは、以前岡崎に来ていた時に出会った明智のものとそっくりだった。


「私は【ダンジョン嫌悪派】創設者であり、【十聖】の一人である【明智】だ」

 

 名前まで同じであれば、それはもう以前出会った明智ということなのだろう。


「お前が【ダンジョン嫌悪派】のリーダーだったのか!」


 実力差を考えると、絶対にヘイトを買うべきではなかったのだが、頭で考えるよりも先に叫んでしまっていた。


「ふむ、確かに君のことは狙い続けていたが、君と会ったのは初めてだと記憶しているが?」


「初めてだと?」


 なら偶々スキルが似ていて、偶々名前が同じ、偶々岡崎で出会ったというのか? そんな偶然が揃うなど、天文学的確率だろ。

 だがあいつがそう言うのであれば、俺が気にする必要はない。ただ敵の首魁が出て来たとだけ考えて、麗華の援護に回ることが最適解のはずだ。


「麗華!」


「分かってる」


 一気に冷気が広がる。

 作り出された巨大な氷の槍は、一瞬にして明智へと迫った。


「日本最強の名に劣らない威力だ……だが私には届かない」


 明智は掌を突き出し、迫り来る氷の塊を受け止めた。

 受け止められただけでなく、氷は触れられた場所から砕け散っていた。言葉だけ聞くと、エイムズに一度見せた攻撃が通用しないのと同じように聞こえるが、明智は単純な膂力のみで受けきっている。

 見ただけでそれが分かるはずがないのだが、どうしてだか明智がスキルを使っているようには思えなかったため、そんな考えに至っていた。


「化け物」


「化け物に化け物と言われたところで、心に響くことはないな」


 麗華は攻撃の手数を増やし、大量の氷塊を生み出し、明智に押し付けた。氷塊はダンジョンを埋め尽くさんばかりに巨大で、近くに居る俺たちへの配慮など感じられない、麗華の本気の力だ。


「ゴン太!」


「コン!」


 俺の意図を組んでくれたゴン太は“狐火”を発生させる。

 それに合わせて俺も“狐火”を行うことにより、迫り来る氷塊を破壊して、自分たちへの被害を限りなくゼロに近付けようとした。


「これが麗華の全力――」


 しかし俺とゴン太の力を合わせてもなお、麗華の全力によって生み出された氷塊を受け止めるには足りていなかった。

 氷塊はジワジワと押し寄せて来ており、俺たちは一歩一歩後退して逃れることしかできていない。


「たぬ吉、タマ、亀之助、悟空、竜馬!」


 全従魔に加勢を頼む。

 攻撃技を持っている者は攻撃技を、防御技を持っている者は防御技を放ち、氷塊に対して破壊と防御を仕掛ける。

 それでもなお氷塊の勢いが止むことはないが、先刻に比べれば進む速度が遅くなっているように見えた。


「味方が追い詰められているようだぞ」


 巨大な氷塊の先から、明智の声が聞こえて来た。

 目の前にある氷塊は物理的な壁と変わりないはずだが、彼女の声は鮮明に聞こえてきている。そしてその声からは焦りを感じられず、それどころか余裕さすらも感じられた。


「私は悟を信頼している」


「そうか……だが信頼など、簡単に崩れるものだ」


 過去になにかあったのだろう。

 明智の声はあからさまにテンションが下がっていた。


「もういいだろう。私が姿を見せた理由を述べよう――君を【ダンジョン嫌悪派】に勧誘しに来た」


「――ッ!」


 確かに先刻までは、氷塊による壁の先から声が聞こえていた。

 しかし今はどうだろう。明智の声が聞こえてきたのは、俺の背中側。詳しく述べれば、耳元と言っても過言ではない。

 【シンクロ】の使用を中断し、慌てて振り返る。


「さっきまであそこに――」


「しっ。私が聞きたいのは、イエスかノーのどちらかだけ。それ以外の言葉を喋ろうとしたら、君の命が散る。それで、【ダンジョン嫌悪派】に入ってくれるか?」


「……ノー」


 恐怖で口が震え、言葉を発するのに時間が掛かってしまったが、しっかりと否定の意思を伝えることはできた。


「……それは残念だ」


「――っ」


 明智の姿が消えた。

 それと同時に、俺たちと麗華を隔てていた氷塊も砕け散る。


「なっ――」


 麗華でさえ、全ての氷塊を一瞬で破壊されることは想定していなかったようで、彼女の口からは驚きの声が漏れ出ていた。


「これから話すことを、ギルドに伝えるといい。我々【ダンジョン嫌悪派】はギルドとその後ろ盾である日本政府に対し、宣戦布告を行う。手始めに【魔境群馬ダンジョン群】にて、スタンピードを引き起こす」


「させない」


 麗華は氷塊が破壊されたことによって、空気中に舞っている氷の破片の温度を急激に上昇させ、爆発を引き起こした。

 彼女によって生み出された氷塊は、破片にされようと彼女の支配下にあり、俺たちの周辺にあるものの温度は上昇していない。


「――その程度の攻撃では、私の防御は突破できない」


 爆発の煙の中から聞こえてきたのは、全く焦っていない明智の声だ。

 遅れて煙が晴れた先に見えた明智の姿は、真っ裸になっている姿だった。


「ふむ、私が耐えられても、服は耐えられなかったか」


「それって」


「ああ、これのことか?」


 明智は己の下腹部辺りを差しながら答える。


「天使は両性具有。つまり私には両方あるのだ」


「……」


 そこまで明智と同じ……やはりあの時の明智とダンジョン嫌悪派の明智は同一人物なのか?

 そんな俺の疑問に、明智が答えてくれることはなく、そのまま空間の歪みへと姿を消してしまった。


「……凜々花!」


 明智の姿が消えると共に、宙に浮き続けていた凜々花が落下した。

 俺は慌てて駆け寄り、地面スレスレにはなってしまったが、キャッチすることに成功した。


「――よかった、息はあるみたいだ」


 今回はキャンプには行けないよなぁ……。



今回の戦闘から分かったこと→明智の実力は現在の麗華以上。


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