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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第87話 竜馬

 揺れた草むらから飛び出してきたのは、馬……とはちょっと違うのかもしれないが、ほぼ馬のような見た目をしている魔物だ。


「ヒヒン」


「腹減ったのか?」


「ヒヒン!」


 もう驚きもしない。

 初めて見る魔物が隣に立っていようと、このダンジョンであれば驚くことはない。それどころか軽く話しかけるだけの余裕があった。


「ちょうどニンジンが夜ご飯だから、食べていくか?」


「ヒヒン!」


 過去一番――出会ったばかりだから当たり前のことだが、とても大きな声の返事が返って来た。

 俺は椅子から立ち上がり、馬のような魔物と共に凜々花たちの下へとゆっくりと歩いて行く。


「悟さん、もう少しでできます……よ?」


 俺の足音を聞いて、料理中の凜々花が振り返った。

 当然、その視線は隣にいる馬のような魔物に吸い寄せられる。だがすぐに目線は俺へと戻り、「またですか」とでも言いたげな表情で俺のことを見ていた。


「まあいつも通りだろ」


「……そうですね」


「やっぱり悟くんは物語の主人公だよ!」


 呆れた様子の凜々花とは対照的に、まいちゃんはとても面白そうに、腹を抱えて笑っている。

 そして麗華は馬のような魔物を目にして、一瞬だけ戦意を見せたが、敵意がないことが分かると、直ぐに興味を失い、火力調整の仕事に戻っていった。


「その見た目ってことは、ニンジンをあげた方がいいですか?」


「ああ、ニンジンがあるって伝えたら、元気な鳴き声が返って来たからな」


「生と調理済み、どちらが良いんでしょうか?」


「それはこいつが決めるだろ」


 俺は馬のような魔物の首辺りを触りながら、凜々花の疑問に対して答える。野生の動物ですら勝手に触れば、攻撃が返ってくるものだが、こいつは俺の掌に擦りつけるようにしてきていた。


「悟さんはここの魔物に良く懐かれますね」


「だよなぁ」


 馬のような魔物が擦りつけようとするのに合わせて、手を動かしながら凜々花の呆れたような言葉に答える。


「馬さんは、どっちのニンジンが良いですか?」


 凜々花が差し出した生のニンジンと、皿の上に置かれた焼きニンジンに対して、馬のような魔物は鼻を鳴らしながら近付く。

 何度か交互に嗅いでから、焼いた方のニンジンを口にした。


「凜々花の料理は上手いからな。当然、焼きニンジンを選ぶよな」


「……褒めても何も出ませんよ」


「美味い美味い」


 褒められて恥ずかしそうにしている凜々花を見て、思わずキュンとなりかけたが、ひっそりと焼きニンジンを食べて「美味い美味い」と呟いている麗華を見て、その感情は一気に鎮火した。


「はぁ……麗華、一人で抜け駆けはダメだぞ」


「ならみんなも食べればいい」


「……それもそうだな」


「では食べましょうか」


 既に麗華が食べてしまっているが、挨拶は大事なため、全員で手を合わせる。


「いただきます」


「「「いただきます!」」」


 俺が代表し、遅れて凜々花たち、さらに遅れてゴン太たち従魔の鳴き声、空気を読んだ馬のような魔物の鳴き声がダンジョンに響き渡った。


「やっぱり、りりちゃんの料理は美味しいなぁ。私もこんな料理を作れるようになりたいから、もし良かったら、私にりょうり――」


「悟さん! その馬さんをテイムするんですか?」


「そうだなぁ……まあここまで懐かれたら、テイムするしかないだろ」


 まいちゃんの言葉を遮った凜々花、そして一気に変わった話題に違和感を抱かせないように乗る俺。見事な連携により、無事まいちゃんから料理の話題を奪い取ることができた。


「俺たちの仲間になってくれるか?」


「ヒヒーン!」


 無事テイムすることができた。

 いつもここまでは簡単にできる。だが俺にとって問題なのはここからだ。名付け、それは俺がテイムの流れで最も苦戦する事象であり、逃れることはできない必要事項である。


「名前はどうしようか……」


 改めて馬のような魔物の姿を見つめてみる。

 身体は黒い体毛をしている馬だが、頭から首にかけて生えているたてがみを、押しのけている数枚のステゴサウルスの背中の板のようなものが、魔物であることを主張している。


竜馬(りょうま)とかどうだ?」


 ステゴサウルス(恐竜)のような板と馬という特徴から名付けてみたのだが、凜々花たちの感触はどうだろうか?

 そう思って、凜々花たちの方を見てみる。


「良いんじゃないでしょうか? 悟さんにしては良い名前だと思います」


「私もいいと思うよ!」


「……いい名前」


 凜々花に失礼なことを言われた気がしたが、みんな賛成のようだし、そこまで気にすることでもないだろう。


「じゃあ今日からお前は竜馬だ!」


「ヒヒーン!!」


 馬のような魔物改め、竜馬は前脚を上げて喜びを全身で表している。

 そんな竜馬の頭を撫でていると、ゴン太たちが羨ましそうな鳴き声を上げ始めたため、俺は従魔六人分の頭を撫で続けることになってしまった。


 従魔たちが満足する頃には、既に焚火は消えており、念のために持ってきたランプの光だけが俺たちを照らしている。


「じゃあおやすみ」


 従魔たちが入ってくることを考えて、だいぶ大きなテントを建てたのだが、竜馬が入って来ても大丈夫か?


 そんな心配をよそに、従魔たちは次々と入ってくる。

 そして以前までの従魔である悟空が入り終え、竜馬の番となった。


「気にしなくていいから、入って来い」


「ヒヒン!」


 狭くなったテントを見て、遠慮気味になっていた竜馬を手招きした。

 この状況で、竜馬だけを外に寝かせるなんて、俺にはできない。


 その夜、俺は碌に寝ることができなかった。

 後悔はしていない……していないぞ。



新たな従魔は馬でした。

能力の詳細は次回以降に分かります!


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