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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第77話 異変

 俺たちは八階層に来てから、かなりの時間を探索に費やしてきた。しかし階段を発見するどころか、最初のアサシンゴブリン以降、魔物との接敵すらなかった。


「この階層はなんなんだ。この状況が普通の階層なのか、何らかの要因でこうなってしまっているのか……どちらにしても不安だ」


「私が知る限り、ここまで魔物との遭遇率が低い階層ではなかったと思うんだけどなぁ……」


 この中で一番【ジャスケダンジョン】への知識が豊富なまいちゃんがそう言うのであれば、何か異変が起きているのは確実だ。


 俺たちに関わる異変と言えば、ダンジョン嫌悪派組織による介入、もしくはダンジョンそのものに要因があるダンジョン異常(イレギュラー)なんだが……どちらにしても危険なことが待ち受けているのに変わりはない。


「……麗華、探索を手伝ってもらえないか?」


「いいよ」


 この階層では一時的に前衛をやっている俺の隣に、麗華が並んだ。

 麗華が戦闘に参加してくれれば、俺たちが危険に晒されることは万に一つもないだろう。


 ……北海道の時のように、奇襲を受けたらその限りではないのかもしれないが、今回はまいちゃんも居るし、可能性はもっと低いはずだ。


 麗華が前衛へと移ったことにより、まいちゃんもだいぶ前へと来たが、麗華目線では守るべき存在が纏まった方が楽だろうし、個の並びが最善のはずだ。


「来ます!」


 凜々花の【気配察知】に引っ掛かったということは、この階層に生息しているアサシンゴブリンではないということか。

 ダンジョン嫌悪派による襲撃か、たまたまこの階層に居る同業者なのか、はたまたアサシンゴブリン以外の魔物なのか……。


 警戒心を強めている俺たちの前で、相手の姿が見えるよりも先に草むらが揺れた。草むらの高さから考えるに、相手は意図的に姿を隠している人間か、草むら以下の背しかない魔物か……


「お前は……」


 揺れた草むらから飛び出してきたのは、見覚えのある顔だ。


「バレてたみたいだから、飛び出してきたけど……絶体絶命!?」


 こいつの顔を見たのはだいぶ前、凜々花が眠りにつく原因となった襲撃の時、一人で逃げ出した“きのした”という男だ。

 主に攻撃を仕掛けて来ていた“こくや”という男が口にしていただけで、“きのした”の漢字も知らなければ、それが本名であるのかも分からない。

 一つ分かることがあるとすれば、こいつが敵だということだけだ。


「こいつもダンジョン嫌悪派の人間だ!」


「案内ご苦労だったな、木下」


 木下の隣の空間が歪んだ。

 その歪んだ空間から現れたのは、全く見覚えのない男。


「下がって!」


 隣に立つ麗華に無理矢理下がらされると、彼女のスキルによって生み出された氷の壁が視界を覆った。

 八階層全てを凍り付かせたと思ってしまう程、巨大な氷の壁が視界いっぱいに広がっている。


「まだ何もしていないというのに、ここまでの仕打ちは酷いではないか」


 俺は驚きで言葉が出なかった。

 最強だと思っていた麗華の氷が容易く砕け散る。その中から出て来た謎の男と木下は一切ダメージを負っている様子がなく、常人であれば感じるであろう強大な攻撃を前にした焦りも感じられない。


「冒険者を一時的に引退していたとしても、君の情報は十全に足りている。私の情報力があれば、対策を練るなど容易いことだ」


「……対策を練ったところで越えられないから、最強なんだよ」


 俺は男の言葉に驚きが隠せなかったが、麗華は違う。

 彼女は自分の力に圧倒的な自信を持ち、敗北するとは一ミリたりとも思っていない様子で、掌で地面に触れた。


 刹那、全てが凍結する。氷を生み出すのではなく、俺たちパーティーメンバーを除いた全ての生命を芯から凍結させていた。もしかしたら居るかもしれない他の冒険者への配慮など一切ない、敵を凍り付かせることだけを考えた圧倒的な攻撃。


「だから知っていると言っているだろう」


「さ、寒いっす」


 謎の男どころか、見るからに弱いであろう木下ですら凍り付いていなかった。

 つまり謎の男は周囲に影響を及ぼす能力を持っており、その効果は【日本最強の冒険者】である麗華の力を防ぐだけの防御能力がある……つまり俺たちではどうにもできない。


「……じゃあ物理は?」


 大量の氷が槍状となり、一斉に謎の男へと襲い掛かる。

 木下は頭を抱えながらしゃがみ込んで、自分の身を守ろうとしているが、謎の男は黒コートのポッケに手を突っ込んだまま、攻撃が直撃するのを待った。


「だから言っただろう、君の持つ【絶氷】スキルの力は把握済みだよ」


 あいつが麗華のスキル名を知っていることにも驚いたが、一番驚いたのは、氷の槍が触れる瞬間に何ごともなかったように氷が消えたことだ。


「私の名は【エイムズ】。ダンジョン嫌悪派【十聖】が一人であり、ギルドに存在している情報の全てを知る情報官だ」


 目の前の男は【十聖】を名乗った。

 つまり北海道で襲ってきた【呂布】と同レベルの実力者であり、強力なスキルを持つのは確実だ。


「……なら誰も知らないスキルで戦うよ」


 麗華はエイムズに掌を向けた。



麗華の二つ名である“絶氷の薔薇姫”はスキル名から来ています。


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