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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第73話 七階層、ゴブリンの砦 2

 たぬ吉が光り輝く。

 その輝きは、たぬ吉の姿を変えた。


「進化したのか?」


「ポン!」


 あまり姿に変化はないと思うが、背中に背負っている急須の見た目が少し豪華になっている気がする。

 そしてたぬ吉自身の身体も、若干だが大きくなっていた。


 そんな進化したたぬ吉が、急須の中に熱湯を湧かせる。

 そんな沸いた熱湯を、急須から放出したのだが、進化前と比べると勢いが段違いだ。


「すごいな」


 たぬ吉が使ったのは“湧沸”だが、進化以前では考えられない威力を持ち、ゴン太の“狐火”か麗華の力を借りなければ破壊できなかったであろう砦を大きく損壊させた。


 たぬ吉のお陰で、俺たちが通り抜けるに足る穴ができたため、相手の防衛準備が終わる前に一気に突入する。


「悟空、突入と同時に襲撃を受けるだろうから、準備を頼むぞ」


「ゴリ!」


 悟空の白銀の体毛が赤く耀く。

 その状態で突入すると、ゴブリンたちの一斉襲撃が行われた。


「ゴリ!!」


 ゴブリンたちの攻撃を、悟空が一定に引き受け、赤き強靭な体毛にて完全に受け止めたのを確認し、俺たちは一斉に動く。


「全員、一斉攻撃だ!」


「コン!」


「ポン!」


「ニャン!」


「カメ!」


「はい!」


 “狐火”、“湧沸”、音の斬撃、水の塊、そして凜々花の飛ぶ斬撃が一斉に放たれた。

 凜々花や従魔たちの攻撃は、ゴブリンを一撃で魔石に変えている。ゴブリンが減ったことによって、余裕が生まれた悟空は、前線を一気に押し上げた。


「一気に奥まで行くぞ!」


「ゴリ!!」


 悟空は腕を振り回し、接近して来るゴブリンたちを吹き飛ばしながら、最奥を目指して進んで行った。

 しかし奥へと進むにつれて、俺たちの進む足は遅くなっていく。体力を消耗させられたせいで、足が遅くなったわけではない。出て来るゴブリンの種が、上位のものへと変わったせいだ。


 奥へと進む俺たちを拒んでいるのは、ゴブリンチーフと呼ばれる上位種に率いられたゴブリン。チーフは通常ゴブリンへの指揮権を持ち、通常ゴブリンの基礎性能が格段に底上げできる力を持っている。


「先にチーフをやりたいが、連携の取れたゴブリンに邪魔されてしまうな」


「コン!」


 何とか遠距離攻撃にて、奥にいるチーフを先に狙ってみたんだが、通常ゴブリンが身を挺して守ろうとするため、倒せずにいた。

 その間も湧き続けるゴブリンは追加されて行き、いつしかゴブリンチーフの姿も見えなくなってしまった。


「凜々花、【長谷部】を!」


「はい!」


 俺は凜々花から【長谷部】を受け取った。

 そして【シンクロ】を行使し、借りる力はたぬ吉の熱湯能力だ。


「はぁぁ!!」


 振り抜かれた剣から生まれたのは、とても薄い水の斬撃。

 しかし薄くなった分、鋭さが増し、超広範囲を切断できる長さになっている。


 俺の放った飛ぶ斬撃は、多くのゴブリンを屠り、ゴブリンチーフまでの道を大きく(ひら)けた。


「ポン!」


 たぬ吉は開けた道を使って、“湧沸”を放った。

 豪華になった急須から放出された熱湯は、蛇のようにうねることができる自由度はそのままに、勢いだけが良くなっている。


 ゴブリンの壁が作り上げられるよりも早く、たぬ吉の“湧沸”がゴブリンチーフの下へと到達した。


「グギャァ!?」


 “湧沸”はゴブリンチーフの頭部を貫き、一撃で魔石へと変えた。

 ゴブリンチーフを討伐したことは、周囲の生き残っているゴブリンにも影響を齎していた。


 統制の取れていたゴブリンたちは、一斉に砦の中心を目指して撤退を始めた。俺たちの追撃をさせまいと殿を務める者など居るはずがなく、我先にと安全圏へと逃げて行く。


「……所詮ゴブリンってことか?」


「今の内に数を減らしておきましょう」


 凜々花は【長谷部】を構え、飛ぶ斬撃を発生させた。

 ただでさえ不可視の斬撃を、背中を向けているゴブリンたちが避けられるはずもなく、ゴブリンたちはなすすべなく魔石へと変わっていく。


 当然、発生源である凜々花に近いゴブリンから魔石に変わっていくが、ある時を境に、遠く離れた逃げるゴブリンたちの先頭の方が魔石に変わり始めていた。


「なんだ?」


「あれは――ゴブリン将軍(ジェネラル)です!」


 ゴブリン将軍(ジェネラル)

 それはゴブリンの進化系統の中でも、最上位の存在だ。

 大きく膨れ上がった全身の筋肉、それに見合った巨大な大剣、ゴブリンたちを完全に統制する指揮能力。

 基礎ステータスだけを見れば、ゴブリンキングにも勝るゴブリンの中でもトップクラスの武力を持つ種類だ。


「――っっっ散開しろ!!」


 俺たちは散らばりながら、逃げる。

 刹那、元々俺たちが立っていた場所に巨大な何かが降って来た。

 それが何なのか、見なくても分かる。


「……グギャァァァ!!!!」


 砂煙に隠された強大な魔物の叫び。

 本能が危険だと警鐘を鳴らし、全身の震えが止まらなくなってしまった。


「どんな脚力をしているんだ」


 先刻、ゴブリン将軍が居た場所は数十メートル離れたところだった。

 それなのに、今ゴブリン将軍が立っているのは、先刻まで俺たちが立っていた場所。

 つまり数十メートルの距離を一度の跳躍で飛んできたという訳だ。


「――ッ!!」


 ゴブリン将軍は俺を狙ってきやがった!

 ……しかし、それを理解した頃には遅く、俺は殴り飛ばされていた。



この将軍は異常(イレギュラー)ではなく、通常の個体です。


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