第66話 悟空の力
俺たちは【ジャスケダンジョン】へと来ている。
麗華やまいちゃん、悟空といった新顔も一緒に来ているため、だいぶ大所帯のパーティーとなった。
「やっぱり麗華はすごいな」
ダンジョンに入ってすぐ、数体のウルフが襲い掛かってきたが、俺たちに触れることなく氷漬けへと変わっている。完全凍結。魔石に変わることすらさせず、生きたまま氷漬けにしている……まさに神に等しき御業だ。
「だが凍結させるのは止めてくれ。お金を稼ぎに来ているのに、倒した魔物が魔石に変わらなかったら、稼げないだろ」
「確かに」
凍り付いていた魔物たちが一斉に魔石へと変わった。
一瞬で氷が消え、魔石へと変わったため、俺ではその原理を知ることができない。
だが分かることと言えば、麗華がスキルによって生み出した氷は、彼女の支配下に置かれ続けているということだ。
「じゃあ進むぞ」
以前のように【長谷部】を持った凜々花と、新たに仲間となった悟空が前衛を務め、ゴン太、たぬ吉、タマ、亀之助、そして俺と麗華、まいちゃんが後衛という陣形を取りながら、ダンジョンを進む。
だいぶ後衛に偏ってしまっているが、もしもの時は俺も前衛に移るため、そこまで問題になることはないだろう。
この陣営を取ってから数分、再び数体が群れたウルフとの接敵が起こった。
「麗華、今度は手を出さないでくれよ」
「分かった」
「来るよ!」
凜々花の警告。ワンテンポ遅れてやって来たウルフたちの攻撃を、彼女は【長谷部】で受け止めていた。
「悟空!」
「ゴリ!」
白銀の体毛が輝くゴリラのような魔物の悟空。
しかし戦闘が始まると同時に、悟空の白銀に輝いていた体毛は、赤く耀き、燃える闘志を表しているようであった。
「ゴリ!」
悟空の拳が、凜々花の剣に爪を立てているウルフの腹部を捉えた。
かなりの重量があるはずのウルフだが、悟空の拳はそんなウルフを軽く吹き飛ばし、自分の筋肉を誇示するかのように力こぶを見せつけて来る。
「すごい筋肉だ!」
「ごり」
少し褒めてあげると、悟空は嬉しそうにポーズをいくつか取る。
その間に、離れたところで様子を見ていた残ったウルフの内一体が、接近してきた。
「ゴリ!」
ウルフの接近に対し、悟空は拳を振り抜く。
鋭い爪が悟空に肉薄したが、触れるギリギリのところで避け、カウンターパンチをお見舞いしていた。その拳はウルフの頬を捉え、一体目と同じように遠くまで殴り飛ばす。
残っているウルフは二体。
しかし仲間が二体もやられたことで警戒心を強めているのか、中々近付いて来ようとしない。
こちらから攻撃を仕掛けてもいいが、こちらがウルフを倒した時のようなカウンターを喰らってしまうのは、俺たちにとって絶対に避けなければならないことだ。
であれば、遠距離攻撃で倒すか、牽制するかが一番の安全策か。
「タマ、音楽を頼む!」
「ニャン」
タマが何処からともなく取り出した三味線をかき鳴らす。
発生した不可視の斬撃は、ウルフたちへと迫る。本能的に危機を感じ取ったであろうウルフたちは、各々が散開して斬撃を避けた。
「ゴン太、たぬ吉、亀之助、追撃だ!」
俺の号令に合わせて、遠距離攻撃を持つ三人は力を一斉放射した。
“狐火”、“湧沸”、亀之助の口で生み出された水の塊、それぞれがウルフへと着弾する。古参であるゴン太の一撃はウルフを魔石へと変え、たぬ吉と亀之助は二人の攻撃が合わさることによってウルフを倒した。
「良い感じにできたな」
「熟練のパーティーレベルで連携が取れてるね」
「まいちゃんは、熟練のパーティーに同行したことがあるのか?」
「まあ国からの要請で、何度か海外のパーティーに同行したことはあるかな」
まいちゃんの表情に若干の陰りが見えた。
これ以上踏み込んで、威力の大きさを想定できない地雷を踏むわけにもいかないため、無理矢理にでも話題を変える。
「……二階層に向けていくぞ」
「……そうだね」
自分のことを理解しているまいちゃんが一番に賛同して来る。
それに続いて麗華も凜々花も賛成の意を述べてくれたため、まいちゃんについての話は終わった。
そして何度かの接敵を経て、二階層へと続く階段に辿り着いた。
「じゃあ降りるぞ」
「そこまで警戒しなくてもいいんじゃない? だって一度来ているんでしょ?」
「確かに二階層に行ったことはあるが、ダンジョン異常を経験した身からすれば、警戒して損することはないと思っている」
「へぇ、異常を経験したことがあるんだ……きっと異常を経験したことがある悟くんたちは、日本を誇る冒険者になるだろうね」
「……確かに異常は得るものが大きいからな」
ダンジョン異常のボスを倒して手に入れたものは、使い勝手のいい【長谷部】や凜々花が手に入れた【剣術】、俺が手に入れた【シンクロ】といったダンジョン踏破に役立つものばかりだからな。
「違うよ。確かに物品やスキルは当然いいものだけど、一番は経験だよ」
「経験……」
そのことについて聞き返す前に、二階層へと到達してしまったため、経験についての話題は有耶無耶になってしまった。
悟空は悟の従魔初の前衛タイプです。
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