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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第64話 祝いのキャンプ

「……なんか顔つきが変わったみたいだね。それに本命が寝ている間に両手に花……漢だねぇ」


「黙れクソ医者」


「口も悪くなっているみたいだね」


 イカれたクソ医者と久しぶりに会ったが、変わらずのイカレ具合にだいぶ口が悪くなってしまった。

 しかしこの医者に会うと、日常に帰って来たとも思うから、なんだか不思議なものだな。


「……君らは“絶氷の薔薇姫”と日本の聖女だね」


「よく知ってるね」


「れいちゃんならまだしも、私は世間に姿を見せることは少ないと思うんだけどなぁ?」


 まいちゃんはあざとく首を傾げながら、見ただけで聖女だということを見破ったクソ医者に、疑惑の目を向けていた。

 確かにこのクソ医者は怪しさに塗れているが、仕事はしっかりこなしてくれる有能な医者だ。そこまで気にする必要はないと思うんだが……まあ聖女からすれば、疑ってしまうのは仕方のないことか。


「そろそろ病室の方に行こうか」


「……そうだな」


 クソ医者の背中を追い、未だに眠りについたままの凜々花が居る病室に入る。その病室には、北海道遠征前に見たまんまの姿で眠っている凜々花の姿があった。

 眠っているその姿は、初めて出会った時の騎士然とした凛々しい顔つきをしており、戦闘の際に見える弱々しい表情を浮かべる凜々花は想像できないだろう。


「この子が凜々花ちゃんね……悟くんが予想していた通り、この子は状態異常に掛かっている。詳しい効果は分からないけど、治してあげるわ」


 まいちゃんが凜々花の胸に触れる。

 掌が触れる胸元が輝き、神々しい光を放っていた。かなりの光量を発しているはずだが、俺が感じているのは眩しさよりも、心が安らぐような優しい気持ちだ。


 そして輝きは最大光量へと至り、流石に目を瞑ってしまう。その輝きは数秒続き、やがて力を失った。


 凜々花が目覚めていることを願って、恐る恐る目を開ける。その先にあった光景は……。


「はぁはぁ……やっぱり未知の効果を治すのは、かなり疲れるなぁ」


 息を切らしているまいちゃん。


「……お疲れ」


 そんなまいちゃんを労い、いつの間にか用意していたスポーツドリンクを手渡している麗華。

 そして……。


「悟さん……?」


「凜々花ッ」


「――っどうされたんですか?」


 俺は無意識の内に駆け出し、凜々花のことを抱きしめていた。

 凜々花は分かっていない様子だが、済まない。もう少しこのままで居させてくれ。


                ◇◇◇◇◇


 抱きしめ始めてから数分が経った……と思う。

 どの程度の間、凜々花のことを抱きしめて居たのか分からないが、彼女は顔を真っ赤にするターンを終え、母のような目で俺の頭を撫でているため、かなりの時間抱きしめていたのは確かだろう。


「急に抱きしめて済まなかったな」


「いえ。最初は驚きましたけど、何か理由があったんですよね。私が病院に居る理由とか、色々と」


「ああ。一から説明する――」


 ジャスケダンジョンで襲撃を受けてからの出来事を、事細かに……聖女に会うために北海道へ行ったことや、そこでスタンピードに巻き込まれ、日本最強の冒険者と出会い、最終的に聖女と会えたことなど、あまりに非現実的過ぎて、信じがたい事実を事細かに説明した。


「私のために……」


「気にしないでくれ。俺がやりたくてやっただけだ」


「それでもです。ありがとうございました」


「頭を下げないでくれ。凜々花が状態異常に陥ってしまったのは、俺にも原因があるんだから」


「……ふふふ、そうですね」


 一連の会話が終わると同時に、病室と廊下を隔てる扉が開いた。

 そこに立っていたのは、空気を読んで退室していた麗華とまいちゃんだ。


「終わった?」


「ああ、ありがとな」


「なにが?」


「いや、気にしないでくれ」


 彼女たちが入ってきたことによって、この部屋にいる人間は五人になった。そう五人だ。


「流石聖女様だ」


 今のはクソ医者の言葉だ。

 アイツは空気を読まず、俺と凜々花による語り合いの間も、この部屋に居たままだった。

 まあ俺たちは、アイツのイカレ加減には慣れているため、スルーすることで居ない者として扱うことができるから、そこまで気にしていない。


「状態異常は治ったみたいだし、退院ってことで大丈夫だよ」


「大丈夫なのか? こういうのは一応精密検査とかするものじゃないのか?」


「大丈夫でしょ。だって聖女と名高いお方の治療だからね」


「……そうか?」


 やっぱり医者としても信頼できないかもしれない。


 まあ取り敢えず……。


「凜々花」


「なんですか?」


「キャンプに行くか!」


「――そうですね!!」


 俺らといえば、キャンプだよな。


「キャンプ?」


「れいちゃん、キャンプは野営みたいなものだよ」


「なるほど……私たちも行く」


「じゃあ行くか!!」


「なら私も付いて行こうか――」


「無理に決まってんだろ」


「残念」


 全く残念そうに思っていなさそうなクソ医者を置いて、俺たち四人と従魔たち四人で【キャンプダンジョン】へと向かった。

 移動は麗華に甘え、空飛ぶ氷の部屋に入り、一度俺の家にキャンプ道具を取りに行ってから、【キャンプダンジョン】へと行った。


「変わらないなぁ……」


 【キャンプダンジョン】は亀之助と出会った頃と変わっておらず、自然溢れるキャンプ場にしか見えない。


「じゃあ俺と凜々花がメインで準備を行うから、二人は手伝ってくれ」


「分かった」


「はーい」


 その元気な返事の通り、彼女たちはしっかりと手伝ってくれて、一人または二人の時よりもだいぶ巻いて準備を終えることができた。


 一通りの準備を終えた俺たちは、大きめに作った焚火を囲って、各々飲み物を手にする。


「それでは凜々花の快癒を祝して……乾杯!!」


 カランと音を鳴らし、缶がぶつかり合う。

 麗華とまいちゃんは、凜々花と初対面になるが、乾杯の挨拶はこれが正解だろう。


 ぶつけ合った缶の中身は、俺とまいちゃんはお酒、麗華と凜々花はジュースだ。


「やっぱり外で飲むお酒は美味しいなぁ」


「あまり飲まないのか?」


「まあ家が家だからね。家でチビチビと飲むことはあっても、外で豪快に飲むことは滅多にないよ」


 まいちゃんはだいぶ度数の強いお酒を、勢いよく飲んでいた。

 豪快な飲み方に、思わず拍手してしまいそうになるが、お酒の一気飲みは身体に悪いため、止めに掛かる。


「一気飲みはやめておけって」


「大丈夫だよ。私の身体は、勝手にアルコールを分解しちゃうから、こうでもしないと酔えないんだよ」


 ……なるほど、盲点だった。

 まいちゃんは人を治すことに特化した聖女。彼女ほどになれば、自分の身体は勝手に治ってしまうのか。


「ヒック……私もれいちゃんに付いて行くから」


「……あぁ?」


 まいちゃんの言葉が理解できず、ドスの効いた声を出してしまったが、気にせず彼女は話しを続けた。


「最近、ダンジョンでの異変が多いし、渋谷ダンジョンでAランク冒険者が殺される事件もあったから」


「だが麗華は【日本最強の冒険者】だぞ?」


「確かにれいちゃんが負けるとは思えないけど、君たちと一緒に行動するとなると、確実に負けることはないと言い切ることはできない。それは君が一番分かっているでしょ」


「――」


 まいちゃんの言葉は、俺に深く突き刺さった。

 あの時、呂布に麗華が襲われた時……彼女の手の中から冷気が洩れているのが見えた。もし俺が転移するのを数秒でも遅らせていれば、呂布のことを氷漬けにしていただろう。


 つまり俺は足手まといでしかなかった。分かっていたはずなのに、見て見ぬふりをしていた……。


「勘違いしないで欲しいんだけど、別に悟くんを責めているわけじゃないよ。ただ、もし麗華を失えば、日本は終わりだから、私は付いて行くの」


 そう言うまいちゃんの顔は、とても真剣で、有無を言わさぬ覇気を纏っていた。

 当然、俺が返す言葉は一つだけだ。


「……これから頼む」


「うん、よろしくね。悟くん」


 俺とまいちゃんが握手を交わしていると、二人で話していた凜々花と麗華が近付いて来る。


「魔物が近付いて来ているみたいだけど、私がやろうか?」


「……いや、多分大丈夫だ」


 それから数分後、俺たちのパーティーは、四人と従魔五人の大所帯となった。


 ――【第4章 北の大地での舞踏会】 完



聖女のスキルは、知識があると燃費が良くなります。


これにて第4章完結となります

【第5章 縄張りを示す爆音】もお楽しみください。


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