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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第301話 王政

「はぁ、俺がやらなきゃいけない書類が多すぎる……」


 無事、窪田王国領へと帰って来た俺を待っていたのは、机に置かれた書類の山だった。これらは国王代理である江梨子では決められない書類らしく、直接一枚一枚目を通す必要があった。


「江梨子総裁も同じように愚痴っていましたが、しっかりやり遂げていましたよ」


「分かってるよ。逃げるつもりはない」


 そう俺を諫めたのは、成田甲斐だ。

 レオン王国攻略前に出会った様子のおかしな女性で、潜入時に麗華と共に行方不明になり、地下のダンジョンで生活していたことから適応力が高いことが分かる。

 だから秘書としての仕事を頼んだ。江梨子からその仕事ぶりを聞いてみたが、想像以上の成果を出していた。具体的な数字に出すのは難しい成果だが、江梨子曰(いわ)く、旧日本のダンジョン協会以上に仕事がやりやすかったらしい。


「王、まだまだ仕事は残っています。集中して取り組んでください」


「はいはい」


「はいは一回ですよ」


「はい……」


 訂正する。

 こいつは秘書じゃなくて母親だ。母親みたいなことを言うから、江梨子も仕事に取り組みやすかったのかもしれない。


「そういえば、今日の予定を教えてくれないか?」


「今日は一日中缶詰です」


「そうですか……」


 しかし母とは違い、一切の慈悲もない。

 甲斐の方針は、確かに俺の為になるかもしれないが、普通に精神が擦り減る。だからちょうどいい塩梅でなければならない。だが甲斐はそこの塩梅も丁度良く、文句を言うこともできないから、きついんだ。


「……?」


 ノックが鳴った。

 疲労具合も丁度いいと思い、俺が出ようとしたが、甲斐によって止められてしまう。


「王なのですから、雑用はお任せください」


 思わず舌打ちが鳴りそうになったが、あと少しのところで踏み止まることができた。ここで舌打ちでもしようものなら、愛のある拳骨が降って来ていただろう……。


 とにかく、ノックの鳴った扉は、甲斐の手によって開かれた。

 角度的に、ここからノックの主は見えていない。無理に見ようとしても、拳骨が――とまあ、用がないのであれば、俺は仕事に取り組み続けるしかないのだ。


「王」


「どうした?」


「急ぎの仕事です」


「……なんだ?」


 口頭で伝えようとしているってことは、机に向かわないといけない書類仕事ではないのだろう。久方ぶりに身体を動かせる。そう思うと、声が上擦ってしまった。


「はぁ、嬉しそうなところ悪いですが、書類仕事ですよ」


「そうなのかよ――ッ」


 書類仕事と聞き、全身から力が抜け、椅子の上に脱力してしまう。

 無理矢理椅子に座ってしまったことが災いして、机の上に置かれた書類たちが連鎖的に雪崩を起こした。ギャグマンガみたいに書類に埋もれるようなことはなかったが、書類仕事に対する意欲はその山に呑み込まれた。


「はぁ……それで、どんな仕事なんだ?」


「旧体制、レオン政権時代に名を上げた商会が、今回の政権交代のせいで負った赤字を補填しろと王城前で抗議しています」


「……それは書類仕事なのか?」


「ええ。武力で抑えるのは簡単ですが、それをしてしまえば王として、政権としての信頼は失墜します。書類と法で対抗するのが、賢い判断でしょう」


「確かにレオン政権時の書類は残っているだろうが、法に関してはまだ定められていないぞ」


「レオン政権時の法、もしくは旧日本国の法に照らし合わせるのが、一般的な判断になると思います」


「レオン政権時の法か旧日本国の法……一番詳しそうなのは、江梨子か。甲斐、江梨子を連れて来てもらえるか?」


「無理ですね。現在江梨子総裁は、ペドロ隊長と柳生指南役を連れて【皇居ダンジョン】に挑んでおりますので、帰還までは連れて来れません」


「マジかよ……」


 どうするべきか……。

 レオン政権時の法は調べれば、倉庫とかから出て来る可能性が高いと思うが、問題は旧日本国の憲法だよなぁ。俺も一日本国民として、ある程度なら分かっているけど、詳細に関しては調べないと分からない……でも旧日本国の法関連の本なんて、今となっては珍しい書物だろ。


「甲斐は法に関してどの程度の知識があるんだ?」


「平均的な知識しかないです。なので専門家を招聘して、対応を委託するしかないでしょう」


「専門家って……弁護士と検察、裁判官とかになるだろうけど、そう運よく専門家が見つかるとは思えないが……」


「ですので、破格の値段で招聘します。まあネットが消え去った今、最終的な判断は面談になりますので、見る目がなければ騙されて終わりますが」


「見る目はある……と思うから、招聘を頼む」


「ではこちらにサインをお願いします」


 受け取った書類に目を通す。

 いくら甲斐のような信頼のできる相手でも、書類に無条件でサインすることはない。ブラック企業時代に色々学んだからな。


 ちなみにこの書類は普通の物だった。



政治は力だけでどうにかなるものではない。


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