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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第286話 悟と凜々花

 凜々花の本拠地は、京都らしさ溢れるものであった。

 魔物の氾濫で一度倒壊した建物の建材を利用して、同じように建て直しているようで、古さの中に新しさも感じられる。


「ここが凜々花たちの本拠地か……」


「ああ、私たちが苦労して作り上げた街だ」


 そう口にした凜々花の表情は、とても誇らし気であった。

 その気持ちは分かる。俺たちはレオンが作り上げた国家としての基盤を、ただ踏襲しただけに過ぎないというのに、国を褒められたら嬉しくなる。それが自分たちで一から作り上げたものともなれば、その嬉しさは計り知れないものだろう。


「……」


 最初は街にばかり注目していたが、慣れて来ると別の物へと移る。

 それは戦闘要員ではない、一般人たちの視線の鋭さだ。それは戦場を経験した者のような、戦いを覚悟している目をしていた。確かに世界の変化に伴って、一般人であろうと魔物や人と戦う機会はあっただろうが、それでも歴戦の猛者のような眼光を持つことはできないはずだ。


 凜々花であれば、聞いたら教えてくれるかもしれない。しかし俺の勘が口を閉ざすように言っているため、不用意に聞くことは選ばなかった。


「なあ、凜々花」


「なんだ、父さん」


 口を開いたのは広忠だった。

 俺がお願いしたわけではないため、広忠は自分の意志で凜々花の名を呼んでいる。理由は直ぐに分かるだろう。


「……どうしてあの人たちは、俺たちのことを親の仇かのように睨んできているんだ?」


「……それも会談の時に話すさ。言えることがあるとすれば、今の私たちの置かれている状況が、彼ら彼女らにあのような眼差しをさせているということだ」


「そうなのか……」


 広忠も俺と同じことを思っていたようだ。

 戦場を経験したような鋭い眼光は、俺たちへと向けられている。確かに、部外者である俺たちのことを睨みつけるというのは、何となく分かるが、陸の孤島のような立地ではないため、そこまで部外者を警戒するのか、という疑問が残る。


 まあ取り敢えず、全てを知ることができるのは、ここの王と会談を行う際だというのが分かったから、変に気にするのは止めよう。


「ここで行う」


 凜々花が足を止めた。

 そこは寺。現在も仏教の建物として機能しているのかどうかは分からないが、その外観は寺そのものであった。


「寺か?」


「ああ。元々有名なお寺が、どうしてか魔物の襲撃から逃れていたみたいで、そのまま重要な会議などで使用させてもらっている。まあ元々の住職は居なくなっているから、寺としての機能は果たしていないけどな」


 見た目が寺なだけで、今となってはただの会議室になっているようだ。それにしても魔物が襲わなかったのには、何か理由はあるのだろうか。

 偶々襲われなかっただけなのか、それとも寺が神聖な何かに護られていて、魔物を寄せ付けなかったのか……もし後者だった場合、今後の国家防衛に役立てることができるかもしれない。まあそれを考察するのは、凜々花陣営に確認を取ってからだけどな。


「……信頼していないわけではないが、代表者一名だけが入ってくれ」


「まあ当然のことだろうな。俺が行くから、麗華たちはたぬ吉たちと待っていてくれ」


「分かった」


 麗華が居れば、危険はないだろう。

 確かに凜々花は強くなっているだろうが、それでも麗華には及ばないはずだ。麗華が将軍と呼ばれていることから、それ以上の実力者は居ないはず……まあもしもの時は、直ぐに合流すればいい話だ。


「悟」


「……なんだ?」


 俺たちは二人っきりで、寺の本殿への長い階段を上っている。

 名を呼ばれたため、凜々花の方を見てみたが、その表情は何処か悲し気に感じられた。


「【十聖】との戦いで、以前の私は消えたんだ」


「以前の私……ああ、弱気の頃か」


「そうだ。私は自分の力を過信して、悟のことを連れ回して、一生目覚めないかもしれない状態へと追い込んだ……そんな自分が許せなくて、新たな人格を作り出したんだ」


「あの性格の大きな変化は、そういった理由があったのか……でも俺は凜々花のことを怨んでなんかいなかったぞ。それどころか、ブラック企業から救ってくれた救世主とさえ思っていたくらいだからなぁ」


「救世主?」


「ああ。冒険者になったきっかけは、ゴン太をテイムしたことだったけど、凜々花が居なかったら会社を辞めていなかったはずだ。冒険者なんて名ばかりで、それまで通り休みの日にキャンプを楽しむ。そんな一生を送っていただろうな。俺はそんな奴なんだよ」


「そうだったか……」


「まあだから、あの時の犯罪まがいの行動も、最終的には俺を救ったんだ。だから気にしないでくれ」


「……ありがとう、悟。できる限り、こちらは譲歩しよう」


「そんなことしなくても――」


 凜々花の手によって、本堂の扉が開かれた。

 その先に居たのは――



人の行動は、受け取り手次第で良くも悪くもなる。だから何も知らない状態で批判するのは、両者の関係にヒビを入れる可能性もあるので、止めましょう。


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