第284話 京都での襲撃
魔物の迎撃を受けたと思い、麗華に天井を開けるようにお願いした。
しかし返って来た言葉は、予想していなかった言葉だ。
「ダメ。攻撃してきたのは人間だったから、もし天井を開けたら入ってくる可能性がある」
「人間かよ。俺たちのことを敵だと思って、攻撃してきたのか」
この殺伐とした世界では、見慣れない存在は皆敵とみなしてもおかしくはない。だから向こうが悪いと非難することはできないが、だがこちらか見ても相手が善性なのか、悪性なのかが分からないため、不用意に行動することはできない。
「どうする?」
皆の目線が俺を見ている。
王である俺に方針を求めるのは間違っていないんだろうが、ここで敵味方を決めつけるのは難しいだろ。
「取り敢えず、地面に着陸しよう。その間も攻撃を受ける可能性が高いだろうから、何とか耐えてくれ」
「分かった」
もし攻撃してきているのが凜々花やまいちゃんの仲間だった場合、ここで反撃をしてしまえば、絶望的な亀裂が生まれかねない。
「俺が出て、一度穏便に収束できないか、話してくるから、一瞬だけ開けてくれ」
「……分かった」
心配そうな顔をしている麗華だったが、無理に止めようとはして来なかった。ある程度は俺の実力も認めてくれているんだろう。
そして氷球の壁に、俺が一人通れる分の穴が開かれる。
そこから飛び出し、地面へと降りる。地上まではそこそこの高さがあったが、怪我するほどの高さではない。まあ衝撃で、大量の土煙が俺の姿を隠してしまったが。
「――ッ!?」
近接戦を仕掛けて来やがった。
遠距離攻撃を得意とするタイプじゃないのかよ。
先手を取られてしまったが、幸いなことに打撃を得意とする相手のようで、こちらも腕で受け止めることができた。もし切れ味の良い武器を得意としていた場合、右腕も切断されていた可能性もあったからな、不幸中の幸いだ。
「お前も、アイツ等の仲間だなァ!!」
「アイツ等って誰だよ!」
左ストレートを放ってきたのは、野性味あふれる服に身を包んだ、鬼気迫る表情をしている女性だ。
膂力は王状態のレオンと比べたら可哀そうになるほど、貧弱。ゴン太由来の力が消失する【六道】の代償下でも、受け止められていたであろう膂力でしかない。
腹部がガラ空きだから、蹴り飛ばすなどして無理矢理距離を開けることは簡単なのだが、そんなことをしてしまえば、今後の話し合いが難しくなってしまうだろう……なんともムズムズする状況だ。
「俺に戦う意思はないから、攻撃を止めて欲しいんだが――」
「問答無用だ!」
面倒だなぁ。
俺は後退しながら、攻撃を軽くいなしていく。膂力もなければ、技量も圧倒的と言うにはほど遠い。全くもって時間の無駄としか表現できない、虚無な時間が過ぎていく。
「ほら、いくら攻撃しても、有効打を与えられないんだから、一旦話し合いをしようって」
「はぁはぁ、なんで片腕の奴に当たらない!!」
こうやって何度も話し合いをしようと伝えているのに、こいつは全く話しを聞いてくれず、ただ猪突猛進で突っ込んで来ている。
流石にそろそろ面倒くさくなってきた。
「これは最終通告とするが、お前の上司はこの行動を知っているのか? もし俺たちが正式な使者だった場合、お前は責任を取れるのか?」
適当な言葉を吐いただけだ。
しかし女性の拳は、俺の眼前十センチのところで止まった。
「……お前らが紛らわしい登場の仕方をしたのが悪い」
「他責かよ。しかも戦いの最中も説明し続けたってのに……まあいい。俺たちはここに居るから、お前のボスに伝えて来い。『我々窪田王国は、貴国と会談を行いたい』とな」
「帰国? 階段?」
「はぁ……そのままの言葉を伝えてくれればいい。てか、変な意味を追加しないで、そっくりそのまま伝えてくれ」
「……分かった」
分かっていなさそうな反応なので、一抹の不安を覚えるが、既に荒廃した京都の道を駆け抜けて行ってしまったため、念押しすることはできなかった。まあ何とかなるだろう。
その出来事に合わせて、少し浮いたところにあった氷球も降りて来た。
「悟、大丈夫だった?」
「ああ。想定の数倍弱かったから、特に困ることはなかったな。まあこの氷球を揺らせるだけの、遠距離攻撃を使えることは確かだから、真の実力は分からないが……」
「もし二人の関係者じゃなかった場合も、親交を結ぶの?」
「まあ向こうの立場次第だろうな。もし凜々花やまいちゃんと敵対関係になっていた場合、友好関係は結べないだろうな。それどころかあの襲って来た女の予感が当たって、敵対関係になるかもしれない……それにしても、アイツ等ってのは誰のことなんだろうか」
「ここら辺を縄張りとしているグループ?」
「なあ広忠」
「なんでしょうか?」
急に敬語で話すようになった広忠に、一瞬頭がおかしくなったのかと思ったが、これから外交を始めるのであれば、ウチの上下関係を相手に見せるのは必要なことか。
「念のため、関西方面。主に京都周辺の主要冒険者を教えてくれないか」
「なるほど……京都府周辺になりますと――」
襲って来た女性の所属は―!?
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