第283話 京都
龍を焼き終わった。と言っても、素材としての価値を限りなく落としただけで、使おうと思えば今でも使うことはできるレベルでしか燃やせていない。だがこれ以上燃やそうとしても、無駄に体力を消耗してしまうだけで、素材の価値を落とすことはできないと思い、普通に諦めた。
「はぁ、まあこれくらい燃やしておけば、敵の戦力アップには繋がらないはず……この程度で戦力アップになる相手であれば、そもそも敵ではないからな」
「うん。大丈夫だと思う」
「じゃあ京都へと向かうか」
「うん」
「広忠! 移動を再開するぞ」
「分かった」
少し離れたところで、悟空以外のウチの従魔たちとゴロゴロしていた広忠を呼び寄せ、俺たちは氷球の中へと入る。
龍との戦闘で疲労していた麗華だが、龍肉の摂取で失っていた体力以上の体力を得ているため、氷球を頼んだら直ぐに了承してくれた。
「魔物の襲撃がないといいが……まあそう簡単にはいかないよなぁ」
「大丈夫だよ。だって私たち元気だし」
「まあ龍と戦う前よりも、体力があるから、龍が来ようと勝てるかもな」
断定はできない。
あの龍でさえ、俺たちはかなり苦戦した。もしあれ以上の魔物と接敵したら、確実に勝てる戦いはできないだろう。
「凜々花やまいちゃんが京都に居るとなると、二人は合流、もしくは最初から二人で飛ばされたと考えるのが合理的だよな」
「うん。豊臣がどんな基準でマッチアップを組んだのか分からないけど、二人が一緒に居る可能性は高いと思うよ」
凜々花もまいちゃんも生きているとなると、【十聖】との勝負に勝ったということなんだろうが、凜々花たちの実力で【呂布】や【エイムズ】クラスの強者を倒せたとは、にわかに信じがたいが……生きているのが何よりも証拠だろう。
「おい、滋賀県に入るぞ」
「滋賀県か……琵琶湖はどうなってんだろうな」
「琵琶湖の近くには【琵琶湖ダンジョン】って高難易度ダンジョンがあったから、多分魔物で埋め尽くされてるだろうな」
「魔物でいっぱいかぁ……」
迎撃される気もするが、遠距離攻撃がない魔物が多いのであれば、案外簡単に突っ切れるかもしれないな。まあ龍クラスの魔物が居ないのであれば、今の俺たちなら簡単に倒せるだろうし、そこまで気にする必要性はないか。
そんなことを考えながら、琵琶湖を突っ切ったが、琵琶湖を住処としている魔物たちは、こちらを見上げているだけで、攻撃をしてくる個体はいなかった。厳密には攻撃しようとしている魔物は数多くいたが、そのどれもが遥か上空を飛ぶ氷球には全く届いていなかった。
「無事に琵琶湖を抜けられたな」
「うん、何個か当たりそうな攻撃はあったけど、軽く氷を使って防げたし」
これで難所は抜けた。
あとは広忠の【サーチ】で凜々花の居場所を探ってもらって、そこからまいちゃんの居場所を探していくだけだ。
「広忠、あと少しで京都に入るだろうから、凜々花の居場所を麗華と共有を頼むな」
「ああ、分かった」
俺は存在しない左腕を撫でる。
そこまでの時間が経ったわけではないはずなのに、左腕がないことに随分と慣れてしまった。もしまいちゃんの力で左腕が戻ってきた場合、以前のような戦い方に戻れるのだろうか。
左腕を失ってから、俺は急激に成長したという自負がある。基本的にはゴン太由来の魔力が要因だが、身体が左腕がない状態に適応して、右腕だけに力が入るようになっている――そこまで極端じゃなくても、左腕の感覚が右腕に大きく劣っているのであれば、再生してもらう意義が見いだせない。
「まあ日常生活では便利になるか」
「何か言った?」
「いや、なんでもない」
声に出すつもりはなかったんだが、気付かぬうちに口から漏れていたようだ。幸い、一番近くに居た麗華ですら正確に受け取れていなかったようなので、誰の耳にも届いていなかったようで安心した。
左腕が元に戻ったら、【皇居ダンジョン】で身体を慣らすのがいいか。
いつかはやらなければならない豊臣たちとの決戦に向けて、万全な状況で挑まなければならないだろうからな……できれば【魔十二槍】を各個撃破してから、豊臣に挑みたいが、アイツはそんなバカな真似はしないだろうな。
「京都に入った」
「じゃあ【サーチ】を常時発動させておくぞ」
「頼んだぞ、広忠」
広忠の指示の元、凜々花の居場所を目指して荒廃した京都を進む。
地面に転がる朽ち果てた木材たちは、元々歴史ある建築物だったものの残骸なのだろう。中学の修学旅行を思い出して、なんだか寂しい気持ちになるな――
「どこかに掴まって!」
その麗華の声に遅れて、氷球が激しく揺れた。
現実というものはそう簡単に進んではくれないようだ。
遂に京都入京です
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