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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第280話 一苦労の準備

「龍肉を食べる気満々だったが、何処の部位がいいんだ?」


 俺は龍の死体のあまりの大きさに、包丁を持つ手が止まってしまった。そもそも最初から分かっていたはずだ。こんな包丁では、太刀打ちできない相手だということに……。


「どうやって肉を斬り落とすか……」


 今となっては完全に使わなくなってしまったが、俺はいくつかの剣を所有している。これはレオン政権が所有していた物に加え、いくつものダンジョンに挑んだことで手に入れて来た剣たちもある。

 レオン政権の物は断定できないが、俺が手に入れた武器たちであれば、一度も使用していないと分かっている物がいくつかあった。それであれば、食材を斬るのにも適しているはずだ。


 空間拡張鞄(マジックバック)の中へと手を突っ込む。

 その中から取り出したのは、飾り付けられていたり、波紋が特殊だったり、剣の形が変だったりするわけではない、とてもシンプルな大剣だ。ただ普通の大剣と違う点は、その巨大さだろう。


「重ぉった」


 膂力が強くなっていても、重たいものは重い。

 片手で持ち上げるには、少々体力を消耗し過ぎている。もっと万全の状況であれば、簡単に持ち上げられたかもしれないが、龍との戦闘を終えて時間の経っていない今は無理だ。


「【シンクロ】」


 全身から赤いオーラが溢れる。

 悟空から借りた“赫猛”による、いわばドーピング状態で大剣を握る。そして全身の筋肉を使って持ち上げた。片手のせいで、バランスが難しいが、持ち上げ続けることはできた。あとは狙いを定めて、その場所へと振り下ろすことだ。


「おっとっと」


 大剣を頭上へと持っていった瞬間、重心が一気に後ろへと持っていかれ、あと少しのところで転ぶところだった。“赫猛”のお陰で何とか堪えることはできたが、この状態を維持するのは中々に厳しい。


「行くぞ」


 全力の跳躍。そして落下の勢いに任せて、大剣を振り下ろした。

 狙った場所は、龍の前脚の付け根だ。大剣の刃は龍の強固な鱗を捉えた。あまりの硬さに、手に返って来た衝撃で、思わず大剣を離してしまいそうになった。


 だが大剣が吹き飛んで、たぬ吉たちの方へと飛んで行っては困るため、根性で掴み続けた。そのお陰もあって、大剣は鱗を破り、龍の強靭な肉へと食い込んだ。最初から一撃で切断できるとは思っていなかったため、初撃としてはこれで十分だ。


「ふぅ、引き抜きに行くか」


 大剣を掴んだ状態で、足を龍の太腿に置く。体勢的には、背中が地面と平行になっている。もし急に大剣が抜ければ、俺は背中から地面へと落下することになる。


「まあ背中から落下したくらいで、骨折するようなヤワな身体じゃないから、別に構わないでしょっ――」


 足と腕に力を籠め、大剣を引き抜きに掛かる。

 想像していた以上に、深く食い込んでいるようで、中々抜けてくれなかった。“赫猛”を使用しているというのにだ。


「うーん、難しいな」


 一度全身から力を抜き、消耗した体力を回復させる。

 そして再び全力で引き抜きに掛かる。足に力を籠め、エネルギーを十全に伝えるために、背中を一気に反らした。


 耳が痛くなるような音を鳴らしながら、大剣が段々と抜けていく。一気に抜けているわけではない。時間を掛けてジワジワと少しずつ抜けていった。そして十分の格闘の末、完全に引き抜けた。


「やっとだ」


 引き抜けたことで、地面と平行でいる俺を支える物はなくなった。

 ダンジョンが誕生しても、変わらず物理現象として存在している重力に従い、地面へと落下する。


 体勢を立て直そうと思えば、簡単にできただろう。だが何となく面倒くさくて、体勢を立て直すことなく、背中から地面に激突した。


「はぁ、もう一回で終わると良いな」


 予想していた通り、背中の痛みは殆どなかった。

 直ぐに立ち上がれたし、再び赫猛を使用することで、大剣を持ち上げることもできた。


「じゃあ切断できるまで続けるか」


 そんな意気込みで跳躍した。

 大剣を振り下ろし、食い込んだ分を引き抜く。そんなことを何度か繰り返すことで、ようやく龍の足を切断することができた。


「はぁはぁ、ようやく終わった」


 あまりの疲労。精神的な面では、龍との戦闘を超えるかもしれない疲労に、俺は経っていられなかった。地面に大の字に倒れ、空を見上げる。龍との戦闘が始まったのは、星空がキレイに見える夜。そして戦闘が終わったのは、日が昇った頃。そして足を切断し終えたのは、大体十時くらいになるだろう。つまり足の切断に三時間から四時間は掛かっている。


「はぁ、ここから料理をするために、肉を斬らないといけない……頑張るか」


 大剣を地面に置き、立ち上がる。

 目の前にある巨大な脚。どのくらいの骨と肉があるのか、切断面を覗いてみた。勿論骨も巨大だが、目を惹かれたのはそこではない。というよりも、鼻が惹かれた。味付けも焼いてもいないのに、漂う肉の香りが、食欲を刺激してきた。



龍という種の頂点のような存在は、菌を寄せ付けない。

そのため生で食べようと、お腹を壊すことはない。

という研究結果が出ている。


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