第278話 【配下強化】
俺の【配下強化】で強化された麗華が生み出す超巨大な氷塊は、先端が鋭く尖っていた。
龍は逃げようとするが、ここまでに負ったダメージが素早い移動を防ぎ、氷塊が落下する方が早かった。
「グラァァァァ!!!」
「終わり」
氷塊が急激に熱を孕んだ。
【温度操作】の力だろう。急激な温度上昇は、爆発を発生させた。あれだけ巨大な燃料があるんだ。その爆発による衝撃波は、ある程度の距離が開いていた俺たちの元へも届く。
「大丈夫」
麗華の優しい声と共に、氷の分厚い壁が眼前に発生した。
遅れて突風が壁を襲う。だが壁によって遮られ、俺たちの元へと届くのは、爆発によって暖められた熱風だけで、衝撃波は殆ど届いていなかった。
「――これで倒し切れないとなると、そろそろマズイが、どうだ?」
氷塊が落ちてから数十秒が経過している。龍は絶命せず、未だに耳が痛くなるような咆哮をあげている。麗華は氷塊の爆発と壁の維持で手一杯なのか、それ以上の攻撃は加えていない。
「たぬ吉」
「ポン!」
「タマ」
「ニャン!」
「亀之助」
「カメ!」
「悟空」
「ゴリ!」
「竜馬」
「ヒヒン!」
俺は一人一人と顔を合わせ、その覚悟を受け取った。
「やってくれるか?」
「――」
従魔たちの返事はとても大きく、戦うための覚悟が感じ取れた。
「じゃあ頼むな」
従魔たちが氷の壁を出て、龍の元へと駆け出して行った。
【配下強化】は既に適応済みで、龍相手でも攻撃を当てられる程度には強くなっているはずだ。それがダメージを与えられるとイコールというわけではないが、麗華から意識を逸らせるだけでも、十分なはずだ。
「ポン!」
たぬ吉は“湧沸”を生み出し、鱗と鱗の隙間をチクチクと突き刺していく。それが筋肉を貫けているのかは、ここからでは分からない。だが龍が、切れかけの尾をうねらせていることから、嫌がっているということには違いないだろう。
「ゴリ!」
悟空は“爆音縄張”で縄張りを作っている。
だがこれは結界と言う意味で作り出したのではなく、タマの攻撃を援護するために使用したはずだ。
「ニャン!」
タマが何処からともなく取り出した三味線を、全力で掻き鳴らした。
その音は壁を貫通してここまで届き、その音色はとても心地の良い物だった。だが龍にとっては違う。“爆音縄張”を介して届く三味線の音色は、龍の肉体に斬撃を齎した。“線斬”は龍であろうと効く。それが分かっただけでも、いい収穫だ。
「カメ!」
亀之助は“水弾”をいくつか生み出し、爆心地に近い龍の瞳に狙いを定めて放った。龍は煩わしそうにしているが、氷塊の爆発が攻撃をキャンセルしているため、攻撃は当たり続けていた。
「ヒヒン!」
竜馬は地面から離れられない龍の巨体の周りを駆けながら、風による刃を放ち続けていた。これは【配下強化】によって得た力だ。今までは騎乗者に対する風圧を抑制するため、風の膜を作る能力でしかなかったが、【配下強化】によって強化された結果、風の刃として攻撃手段に転換することが可能になった。
「カハッ――」
【六道】の力で援護しようと思ったが、まだ身体は癒えていなかったようだ。大量の血が地面へと零れる。出たばかりは鮮血で、真っ赤に染まっていたが、みるみるうちにどす黒い色へと変わっていった。真っ当な自然現象にも拘らず、なんだか不気味に思えて仕方がなかった。
「おい大丈夫そうか?」
「広忠……ダメだな。少なくとも、この戦いに参戦するのは難しそうだ」
「……なら大丈夫だろう。既にあの龍は瀕死状態。先刻の爆発レベルの攻撃がモロに入れば、終わるはずだ」
「……そこが問題なんだよ」
俺は仰向けになる。
それがキレイだ。これが平時であれば、この絶景を楽しめていただろうが、今は楽しんではいられない。
「俺は【配下強化】と【シンクロ】を通じて、大まかな状態が分かるんだ。それで、今の麗華はあの攻撃で体力の大半を消費している。つまりあの龍にトドメを刺す術は、麗華にないんだよ」
「……なあ、【シンクロ】に適応されるのは、従魔だけじゃないのか?」
「ああ。まあ俺もさっき気付いたんだけどな」
「……じゃあ【シンクロ】でトドメを刺せば良いんじゃないのか?」
「見ての通り、満身創痍。スキルを使おうとすると、直ぐに吐血してしまう」
内臓は今も修復されて行っているが、やはり通常の傷と違って、かなりの時間を要してしまう。この状態でこれ以上スキルを使おうとすれば、戦いに影響する後遺症が残りかねない。
「違うだろ。悟が吐血しているのは、【六道】を使おうとしているからだ。だが別のスキルである【シンクロ】を使う分には、吐血しないはずだろ」
「……あっ」
次回、VS龍 決着!!
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