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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第275話 回収される

 あとは調味料で細かい味付けをすれば、完璧なステーキが完成する。

 だが最後まで気は抜けない。以前、キャンプの途中で襲撃を受けて、麗華を攫われたという経験をしているのだから、いくら壁を作り上げようと、安心はできない。これは口に出していないのだから、フラグは建っていない……はずだ。


「よし、これで完成だ!」


「美味しそう」


「美味そうな匂いだな。魔物を引き寄せそうだ」


「流石に大丈夫だろ――ッ!?」


 俺たちを照らしていた僅かな月光。

 それが何か巨大な存在によって、完全に遮られた。雲のせいかと思い、顔を上へと向けてみたが、そこに存在しているのは、雲なんて優しいものではなかった。


「龍……」


 龍、ドラゴン。種の名前は分からないが、龍やドラゴンと呼ばれる、四足に巨大な翼と尾が生えている魔物が、氷の壁内から覗く空を、完全に埋め尽くしていた。


「麗華、壁を解除して散開だ!」


「分かった」


 壁は一瞬で溶け、視界に入る平野全てが戦場と成った。

 龍は尾を振り上げ、先刻まで氷の壁があった場所へと振り下ろした。間一髪のところで、避けることができたが、尾によって発生した衝撃波が、逃げる俺たちの背中を襲い、吹き飛ばされてしまう。


「くっ――」


 壁はないため、地面を数回転がることで、そのエネルギーを殺す。

 完全にエネルギーが消える前に立つと、靴と地面がこすれて砂埃が舞う。視界の大半が塞がっている。


「――っ!」


 肌で感じた熱に、咄嗟に【シンクロ】で水の壁を生み出した。

 水蒸気爆発が俺の身体を吹き飛ばす。肌の一部が焼けてしまったが、龍の攻撃が直撃するよりかは幾分マシのはずだ。


「麗華たちは大丈夫なのか?」


 龍の狙いは俺だ――というよりも、この唯一の手を塞いでいるフライパンの上に乗っている和牛のはずだ。先刻舞った砂埃のせいで、食べる気が失せる程度には汚れているが、龍からすればその程度誤差でしかないのだろう。


 ここでこの和牛を差し出せば、龍は何処かへと行くかもしれないが、今の力を知っておきたいから、わざわざ肉を差し出すつもりはない。


「来いよ、龍」


 フライパンを和牛ごと空間拡張鞄(マジックバック)の中へと仕舞い、龍を挑発するように手招きをした。


「グラァァァァァァ!!!!!!」


 鼓膜が逝った。

 耳に意識を集中させると、一瞬で治る。一瞬、目線を龍から逸らし、麗華や広忠、たぬ吉たちが逃れた方へと向けた。

 麗華は軽く氷の壁を作りながら、こちらを見ていて、広忠はたぬ吉たちと合流している……存分に戦えそうだ。


「グラァァァァァァ!!!!」


 龍はその立派な翼を使うのではなく、四足をバタバタと動かしながら、その巨体を活かした突進をしてきた。

 一瞬、正面から止めてみようとも思ったが、流石に轢き殺されると思い横へと転がりながら逃れた。


「やっぱりあの質量と正面衝突したら、骨が折れちまうかもしれないな」


 まいちゃんとの合流はまだ先なんだから、必要のない無理はできない。極力怪我をせずに、圧勝するのが理想的な戦い方だ。


「取り敢えずは、どのくらいの硬さなのか、確かめておかないと、今後の戦い方を決められないよな」


 こちらに尾側を向けている龍に対し、一気に加速して肉薄する。尾とぶつかる瞬間に、跳躍。空中で“赫猛”で膂力を強化し、拳に炎を纏って、拳を振り下ろした。


 拳と背中によって圧縮された熱風が、俺へと襲い掛かって来た。全身から汗が噴き出す。だがそんなことはどうでも良かった。全力で殴ったにも拘らず、龍の鱗は傷一つ付いていなかったという方が重要事項だ。


「マジかよ、これで傷一つ付けられないのかよ」


「グラァァァ!!」


 傷一つなくても、痛みは受けていたのだろう。

 背中に乗っている俺のことを落とすために、翼をはためかせて飛行を始めた。かなりの速度が出ているのも勿論だが、一番厄介なのは、圧倒的な空中機動だろう。急停止、急上昇、急降下、回転などを全くの予備動作なしで行ってくる。


 何度落ちそうになったか。竜馬の力で、自分の身体を守ってみたが、あまりの圧に、そこまでの効果は感じられなかった。つまり己の膂力のみで耐え続けなければならない。


「鱗一枚一枚がデカいお陰で耐えられているが、もし剥がれたら一緒に落ちてしまうな」


 龍は先刻までとなんら変わらず、空中を変態的な軌道を描きながら、俺のことを振り下ろそうとしている。わざと弱点を口に出してみたが、言葉が通じていることはなさそうだ。


「まあこのまま掴み続けても、龍の体力切れなんて現実的ではないし、終わらせるか」


 全身を廻っている熱を、右手に集中させる。

 そして溜めに溜めた熱を、炎として一気に放出した。



龍、ドラゴン。

それは名前が違うだけで、種としては同種だと見られている。

しかし龍と竜は違う存在だと見られている。詳しい分類については、未だに研究途中だ。


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